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公衆電話

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統合失調症を発症して入院した1ヶ月の体験を基にした小説です
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記事一覧

実験小説・スパイラル

2 伊吹山  ボクの乗った車輛は二人掛けのシートが並んでいるが出入り口の周囲だけが向き合…

遊歩
1年前
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14・締めくくり  翌朝、食堂でT君と一緒になった。 「T君、夕べ電話したよ。家人に」 僕…

遊歩
1年前
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12・面会    病院では集団療法もあり、絵を描くこともあった。ちょうどその時間に、妻と…

遊歩
1年前
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11・別れのカンパリソーダ  「別れのカンパリソーダ! ボクには迸るような青春の思い出が…

遊歩
1年前
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10・鉄格子  主治医から大部屋に移動許可が告げられた時、正直嬉しい反面さみしい気持ちに…

遊歩
1年前
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9・13日の金曜日  発症の当日は朝から自分が今までとまるで違っているのに気づいていた。 …

遊歩
1年前
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8・春の祭典 突如 完全無欠の至福の光景が脳裏に浮かび上がって来る。  子供の頃はしょっちゅう自然や世界との一体感に浸っていたものだった。だんだん年を経るにつれて減っていったが、それは中学生ころまで続いたかもしれない。  それは何気ないある晴れた日曜日かなんかの昼下がりだったような気がする。庭に母や妹、伯母や従姉たちがいたかもしれない。それでも僕は一人で岩の上に腰かけてラジオのFM放送を聴いていた。  ストラビンスキーの「春の祭典」が流れていた。かのニジンスキーが

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7・狂った歯車     時間は流れていないようでちゃんと流れていた。    腹は減ったし、…

遊歩
1年前
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6・隔離室 『 蛍の光 窓の雪 書《ふみ》読む月日重ねつつ    何時しか年も すぎの戸…

遊歩
1年前
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5・発狂  そこは地元で昔から霊能力が高いと評判で、失し物とか心配事の相談に町の人が駆け…

遊歩
1年前
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4・メッセージ  空間もどういう構造になっているのか、部屋の上の方からぐるぐる音というの…

遊歩
1年前
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3・噓とリアル  僕は子供の頃最初に着いた嘘を覚えている。  保育園の遠足から帰って本当…

遊歩
1年前
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2・統合失調症  実は以前一度その当時のクリニックの主治医に相談し一か月ほど入院したこと…

遊歩
1年前
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1・サラトモケのニケ  その看護士には檜の匂いがした。次に来たナースは狐の化身としか思えなかった。  病院の車寄せの前のロータリーには「サラトモケのニケ」のレプリカが等身大で翼を広げていた。噂によると、以前の病院の敷地が高速道路の用地として買収された資金で建て替えられということだった。  病院の紋章には十字架が組み込まれたデザインで、設立の基本理念の一部にはヨーロッパのキリスト教作家の小説から引用された崇高な愛が謳われていた。  日本でも有数の天然ウランの埋蔵する大地の