保育者としての成長を実感したタイミング #171

私は小規模の保育園で事務員として勤務している。
保育士の資格はあるが、現場にはほとんど入ることはなく、あくまでも事務員として雇用されているいわばペーパー保育士だ。

稀に、現場を手伝うことがある。ちょっと人手が足りないときに保育に入ってほしい、保育というよりも、少しの間の子守を頼まれるのだ。

朝の活動が始まる前の自由遊びの時間。
私が入って間もなく、2歳児クラスの男児、女児1名ずつが、狭い空間で走り回りだした。
また別の1歳児2名はブロックが入っていたかごをひっくり返して、押したり、登ろうとしたりしている。危ない。

このシチュエーション、教科書的には

危ないものはよける。(これは当然)
「走らないで」なんて否定語は使わないで、「楽しいね」と気持ちを受け容れて、「歩いてね」と具体的に指示する。

こんなところだろうか。

ところが、おふたりさんにはそんな言葉は全く通じない。
これまでなら、根気よく「歩いてね」と言ったり、抱っこして捕まえてみたり、ハグをしたりしていたと思う。・・・が、制止しようとすれば、余計に興奮するだけだ。

ふと浮かんだ。

いや、そういう問題じゃない。

なぜ彼らは走ったり、かごをひっくり返して登ろうとするのか。

走りたい?登りたい?それもあるかもしれないが、そもそもを考えると、ブロックのおもちゃにはもう飽きてしまったから。ただ、それだけだ。

はっきりとわかった。

飽きたのね。そりゃ、飽きるよね。

飽きたなら、環境を変えちゃえばいいんだ。
「先生、絵本読みたいな。Eちゃんが好きな本教えて」
そういうと、彼女は、はらぺこあおむしの絵本をもってきた。

読みだしたら、その場にいたみんながやってきた。

ちょっとしたことなのだが、子どもの様子をよくみて、次に何をするか想像し、やってみる。

落ち着きのなかった子どもたちが、吸い寄せられるように私の周りにやってきて、一緒に絵本を楽しんでいる。

私は、自分にもできたことが嬉しくて仕方がなかった。

保育士をとったころ、子どもを惹きつけるにはどうすればいいのだろうか。子どもを観る力ってどうやったらつくのだろうか。想像は苦手。自分にはそんな才能はないのではないか。
免許はとったけれど、資格だけはあるけれど、自信がなさすぎた。

私の場合、その自信の無さも相まって、「こういうときには○○」といった、教科書的な方法論やノウハウにとらわれすぎて、結果的に視野が広がらず、想像したり、工夫することを難しく感じてしまっていたのだなと思う。

私でも子どもたちを惹きつけることができるんだ!
大きな気づきと成功体験。

人ってこうやって自信をつけながら成長するんだな。

なにかに困った行動があったとき、その行動の理由をまず想像する。

私の中にただ存在していただけの知識が、使える知識になった。
この差は大きい。


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