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文庫本

「そんなに歩いてどこに行くんだい?」

「ええと、駅」

「自転車には乗らないのかい?」

「楽だよね?」

「そうだよ。だから勧めてる」

「でも、それで山を登れるかい?」

「ちょっと、きついかもね」

「僕は荷物も持ってる」

「そうだね。重そうだね」

「そりゃ、重いよ。自分みたいなものだから」

「えっ、君は君を背負ってるってこと?」

「君は違うのかい?」

「いや、僕は文庫本さ」

「えっ、僕も文庫本だよ」

「違うだろう。荷物だよ」

「違うのは君さ。文庫本が荷物を背負ってるのさ」

「わけがわからない」

「僕もわけがわからないんだよ」

「君はどうするつもりなの?」

「文庫本に聞いてくれ」

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