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幼なじみの飛鳥#4【なんでこんなに】

うわぁ・・・嘘でしょ・・・

なんでこんなに降ってんの・・・

ふざけてるのかってくらいの土砂降りに嫌気がさすが、しばらく止みそうにない。

意を決して帰路に就こうと足を踏み出す。

数秒後には服も靴も濡れてきて・・・

これ乾かすの大変だなぁ、なんて鬱々していると後ろから大雨に似つかわしくない明るい声が響く。

『飛鳥ちゃーん、一緒に帰ろぉ―!!』

幼なじみのコイツには、この最悪の天気が見えていないんだろうか・・・

いつもの調子になんだか可笑しくなってしまうが、そういう私の心中を悟られるのは癪だ。

そう思ってちゃんと低めのテンションでお出迎えしてやる。

「はいはい・・・」

『すごい雨だねー』

「うん」

『そうだっ飛鳥ちゃん、せっかくの雨だし、相合傘しよーよ』

「やるかっ、傘持ってんだろ;;」

『だって飛鳥ちゃんの傘小っちゃめだし、肩濡れちゃってんじゃん』

「この傘、気に入ってんだからいいんだよ。こんだけ雨強かったらどうしたって濡れちゃうし」

『オレの傘は大きいから、小っちゃくて可愛い飛鳥ちゃんなら全然入れるよ』

「きもっ」

『この傘はね、飛鳥ちゃんを食べ・・・飛鳥ちゃんと相合傘する為にこんなに大きいんだよ』

「オオカミかよ;;;絶対しないから」

『えぇー、じゃあ相合傘は諦めるから、結婚しよーよ』

うっ;;;;またからかいやがって

「するかっ/////ばかっ;;;」

『またダメかー』

コイツ、どんな勝算があって言ってんだ・・・

「なんでこんな天気なのにテンション高いんだよ」

『そりゃ今日も大好きな飛鳥ちゃんと一緒に帰れるんだから、どんな天気だって気分は上がっちゃうよね』

うっ;;;;またしれっと変な事言いやがって・・・

『それにさ・・・』

耳打ちするポーズでゆっくりと近づいてくるコイツに緊張しながらも、平然を装って返事をする。

「ん?」

『濡れてる飛鳥ちゃん、めっちゃエロい;;;』

!!!
コイツっ!!/////

「死ねっ!!」

ズゥゥンッ

いつものように腹パンをキメてやった。

『うぅぅ・・・痛いよー』

「うるさいっ、アンタが悪いっ」



そんな風にいつもの調子で歩いていたんだけど、次第に雨が強くなってきた。

風も出てきて、傘を持ってるのも大変な状況だ。

ちょっと待ってた方が良かったかな・・・

『飛鳥ちゃん大丈夫?』

「う、うん・・・あっ;;」

橋の上でビュンっと突風に見舞われる。

傘が手から離れて、そのまま一気に土手の下まで持っていかれる。

『飛鳥っ!!』

よろけて倒れそうになる私を黒い傘と大きな身体が支える。

あっ//////

さっと私の身体を匿うように後ろから支えられる。

急な呼び捨てと距離の近さにドキドキしながらも、そのまま一つの傘で橋を渡りきって集合住宅の影に一時避難する。

ここなら一旦雨風は凌げそうだ。


『びっくりしたね、大丈夫?』

「うん・・・」

『よかった・・・すぐ戻るからちょっとだけ待ってて』

そう言って黒くて大きい傘を渡される。

え?

『飛鳥ちゃんの傘見てくる』

「え、いいよっ;;;危ないし」

『あのままどっか飛んでっても危ないし、下の方で引っかかってたから、たぶん大丈夫』

・・・・・・

『飛鳥ちゃん?』

・・・・・・

やだよ・・・

こんなんでコイツに何かあったら・・・

いや、何もないだろうけど・・・

今1人にされるのが不安というか・・・なんか嫌だ・・・

上手く言葉にできない私の気持ちを察したように、少しかがんで優しく私の頭に手を置く。

『絶対無理しないし、すぐ戻るから・・・』

『ちょっとだけ待ってて』

・・・・・・

・・・・・・

そんな風に言われたら頷くしかないじゃん・・・

「絶対・・・すぐ戻ってきてよ・・・」

『うん、飛鳥ちゃんとの約束は絶対守る』

そう言って離れて行くコイツに慌てて声を掛ける。

「ちょっと;;;この傘は?」

『ここも雨入ってくるから、飛鳥ちゃんが持ってて!!オレは大丈夫だからっ』

「いやっ;;大丈夫って;;;」

既に雨の中に走っていて、私の声は届かなかった。



・・・・・・

・・・・・・

大丈夫かな?

・・・・・・

・・・・・・

流石に川に流されたりするような事は無いだろうし、無理はしないって言ってたけど・・・

心配なものは心配だ。

祈るような気持ちでギュッとアイツの傘を握っていると、程なくしてこの悪い状況に似つかわしくない明るい声が響く。

『お待たせー、飛鳥ちゃーん』

ぶんぶんと手を振っている反対側には私の傘が握られていた。

雨の中飛び出していったんだから当然のように全身ずぶ寝れになってしまっていて・・・・

『いやー、無事回収できてよかったー。はい』

それなのに心底嬉しそうに笑って傘を私に差し出す。

「ありがとう・・・」

『飛鳥ちゃんが素直にお礼をっ!!!』

「おいっ!!」

『ふふっ、冗談冗談。ちょっと待たせちゃった、ごめんね』

たっぷり濡れた笑い顔がなんだか艶っぽく見えて・・・

ちゃんと私のとこに戻って来てくれた事が嬉しくて・・・

身体は冷えてきているのに、心は温かいままだった。



『さっきよりちょっとだけ風は弱くなってきてるかな・・・』

「うん・・・」

『まだ雨強いけど、今のうちに帰ろっか・・・』

「うん・・・」

・・・・・・

・・・・・・

『飛鳥ちゃん?』

なかなか傘を開かない私を不思議そうに見つめる。

「あの・・・あのさ;;;」

『ん?』

「また傘飛ばされたら嫌だから・・・」

・・・・・・

「一緒に入ってもいい//////?」

そう言いながら手を伸ばして、大きな傘を持った袖をキュッと掴んでみる。

『えっ?』

・・・・・・

・・・・・・

心底驚いたように目を見開いている様子を見て、途端に恥ずかしくなる。

うぅぅ//////

私がデレるのがそんなに珍しいのか?

って珍しいか;;;;

「やっ、やっぱ今の無し;;;」

慌てて自分の傘を開こうとすると、既に大きな傘の下に入っている事に気づく。

『行こっか・・・』

「・・・うん//////」

いつもふざける癖に・・・

こういう時だけ妙にスマートにやるんだよな・・・

なんかムカつく///

こっちはこんなにドキドキしてんのに//////

雨音よりずっと自分の心臓がうるさかった。





『あーあ、飛鳥ちゃんち着いちゃった。もうちょっと相合傘したかったねー』

「ばか//////」

『じゃあね、飛鳥ちゃん』

「うん・・・」

・・・・・・

「・・・ありがと」

・・・・・・

『風邪ひかないようにね』

「うん・・・」

こんなにビショビショの状態なのに、

今なら少しだけ素直にコイツと向き合える気がして・・・

このまま自宅に入るのが勿体なかった。

・・・・・・

・・・・・・

『飛鳥ちゃん・・・』

そんな私の心中を知ってか知らずか、優しく名前を呼ばれる。

・・・・・・

『本当はバイバイしたくないけど』

・・・・・・

『飛鳥ちゃんが風邪ひいちゃったら大変だから・・・』

「うん・・・」

『早くお風呂入ってね』

「うん・・・」

『あと、お風呂上りの写真送ってね』

「うん・・・って、はあぁっ!!!」

『よっしゃー、飛鳥ちゃんのお宝写真ゲットォー!!』

「送るかっ!!ばーかっ!!」

『じゃあね、待ってるよー』

楽しそうに手を振る姿に向かって、フルパワーでイィーって威嚇してから自宅に入った。




湯舟の中でぷくぷくと泡を立てながら、今日の事を思い出す。

雨は大変だったけど、なんか楽しかったかも//////

それにしても・・・

なんなんだよアイツ・・・・

私の好きが溢れそうになると、ちゃんと変な事言って台無しにしてくる。

結婚しようとか、いつも言ってくるくせに本当にそういう気があるのかよ。

本気なら本気って分かるようにしてもらわないとこっちだって困るんだけど//////

・・・・・・

・・・・・・

まあちょっとは感謝を伝えたいとも思うし・・・

アイツが喜んでくれるなら・・・

後で写真の一枚くらい送ってやってもいいかな//////

まったくもう・・・

なんでこんなに好きなんだよ//////





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