幼なじみの飛鳥#3【うまくやってよ】
『飛鳥ちゃん!!明日お花見行かない?』
帰り道、幼なじみのコイツに突然言われる。
「え!なんだよ急に」
『行こうよ、お花見!』
「な、なんで一緒に行かないといけないんだよ///」
今までこんなふうに誘ってきた事なんかなかったじゃん。
どういうつもりだよ。
『えぇー、でも飛鳥ちゃん桜好きだよね?』
「まあ、好きだけど・・・」
別にすごい好きってわけじゃないけど、ずっとただ見ていられるくらいには好き。
そういえば去年は見れなかった、みたいな話をこの前したような・・・
『今満開だってさ』
「ふーん・・・」
その辺はあんまり気にした事なかったなー。
満開じゃなくたって綺麗だし、咲き始めの感じも好きだし。
『行こうよ!!』
「別にいいけど///」
『ほんと!?』
そこまで嬉しそうな顔しないでって・・・
こっちだって色々あんだから。
「うん///」
『やったー!!明日は飛鳥ちゃんとお花見デートだー!!!』
「いや、デートじゃないだろ」
『愛し合う2人が一緒に出掛けたらそれはデートじゃん!!』
「誰と誰の話してんだよ///!!」
今日はなぜかいつもより早く起きてしまった。
お出かけをすごく楽しみにしてるみたいで癪だ。
どうせアイツはベッドでダラダラしてて私が行ってからモタモタ準備するんだろうな。
そう思って約束の時間より早く家に着いたんだけど。
『あっ!!飛鳥ちゃーん、おはよー!!』
玄関前で両手をぶんぶん振る。
え!!
「もしかして外で待ってたの?」
『飛鳥ちゃんに早く会いたくてね!!』
心底嬉しそうに言う。
「だ、だったら呼びに来ればよかったじゃんか」
『いや、オレが早く会いたかっただけだしさ。
飛鳥ちゃんを待ってる時間って好きなんだよねー』
なんだかよくわからないけど、待っててくれたのは間違いないだろう。
「えっと・・・お待たせしました///」
『飛鳥ちゃん!!可愛すぎる!!もう結婚して!!』
「するかっ!!ていうか自分の家の前で恥ずかしくないのかよ?」
『うん、全然!愛が何よりも優先されるんだよ』
「きも」
『えぇー』
なんやかんやで、お目当ての大きめな公園に到着する。
おー、ほんとに満開だ。めっちゃ綺麗じゃん。
何日か違うだけでまた景色が全然違うんだろうなー。
桜を見上げて歩いていると、人にぶつかりそうになってバランスを崩す。
『おっと、大丈夫?』
私の動きを読んでいたようにスッと支えられる。
「あ、ごめん…」
『飛鳥ちゃんは桜を見てて大丈夫だよ。オレが飛鳥ちゃんを見てるからさ』
「な、なんだよそれ」
恥ずかしくなって距離をとろうとすると、また人にぶつかりそうになって支えられる。
『人いっぱいいるからね。ゆっくり行こ』
「うん・・・」
なんだよ、こんな時だけスマートにエスコートしやがって。
いつもこんな感じだったら私だってもうちょっと素直になれるのに・・・
今は甘えとくけど・・・・
「うわぁ、すごっ」
桜の木エリアに到着して声が漏れる。
ここまで来る途中もすごかったけど、木がいっぱい集まっていれば、花も集まるわけで。ここまでくると圧巻だ。
もう視界の上半分がキレイな桜色で、下半分には幸せそうな人たちがいっぱい集まってて。
なんだか現実じゃないみたいで、あまりに美しい景色に一瞬で意識を持っていかれる。
・・・・・・
・・・・・・
あれ?今どれくらいボーっとしてたんだ?
隣にいる存在を思い出して、恥ずかしくなる。
どうせニヤニヤ見てんだろうなと思ってたんだけど、
私をまるごと全部包み込むような優しい顔をしていて、更に恥ずかしくなる。
『その辺座ろっか』
「うん・・・」
ベンチに腰掛けて上を見上げる。
けっこう近い距離まで枝が伸びてて、遠くにもいっぱいピンクが広がってて・・・
これはずっと見てられるなーなんて思う。
『すごいねー』
「うん」
『きれーだねー』
「うん」
『飛鳥ちゃんが珍しく素直だねー』
「うん・・・って!なんだよ、悪いか」
『嘘嘘、来てよかったね』
「うん」
『来年もまた一緒に見たいね』
「え!・・・う、うん//」
『結婚しよっか』
「うん・・・って言うかっ!!!」
『えー、ダメだったか。勢いでいけるかなって思ったのに』
コイツ・・・
「勢いで言うなよ・・・」
『ごめんごめん、飛鳥ちゃん、ゆっくり見たいでしょ。
さっきコーヒー売ってたから買ってくるね』
「うん・・・」
『ゆっくり見ててね』
こういう気遣いはできんのになんで・・・
いつもコイツは好意をストレートにぶつけてきて、ストレート過ぎて対応に困る。
その辺もうちょっと上手くやってほしいんだけど。
普通に告白とかしてくれたら私だって///
って私が素直になればいいだけなのかもしれないけど。
しっかし、ほんとに綺麗だなー。
ベンチに腰かけて一人でぼおーっと桜を見上げる。
今日は来てよかったなー。
・・・・・・
来年も一緒にって///
・・・・・
来年は関係が変わってるかな///
・・・・・・
コーヒーどこまで買いに行ってんのかなー。
・・・・・・
早く戻ってこいよぉー。
なんてアイツの事ばっかり考えながら足をぶらぶらさせる。
待ってる時間が好きか・・・
家の前で言われた事を思い出す。
私もけっこう好きかも、こういう時間。
「ねーねー、一人で来てんの?」
「めっちゃかわいいねー、あっちで一緒におしゃべりしない?」
幸せな時間は続かないもんだ。明らかに酔っ払ってる若い男達に絡まれる。
「いえ、一人じゃないんで・・・」
「友達、女の子?」
「じゃあ一緒に遊ぼうよ」
・・・・・・
「無視すんなって」
・・・・・・
「ねーちょっとくらいいいじゃん」
ちょっと・・・怖いかも・・・
「ねー」
乱暴に手を掴まれて無理やり立たされる。
えっ、やだ・・・
「やめっ・・・」
「あ、熱っ!!」
私の手を掴んでいた男に何かがかかって解放される。
『あー、すいません。
手が滑ってコーヒーこぼしちゃいました』
「おまえ!何すんだよ」
『そっちこそオレの彼女に何してんの?
どっか行ってもらえますか?また手が滑りそうなんで』
もう一つのコーヒーをブラブラさせてニコニコ笑いながら言う。
「なんかコイツやばいな」
笑ってるところが不気味だったようで男達は素直に立ち去っていった。
『飛鳥ちゃん大丈夫だった?』
・・・・・・
『飛鳥ちゃん?』
上手く声が出せずに、袖を掴んで無言で頷く。
手が震えてて、あー、けっこう怖かったんだなーって実感する。
『1人にしてごめんね』
「・・・遅い」
『うん』
「・・・一人にすんな」
『うん』
「ちょっと怖かった・・・」
『もう大丈夫だよ』
「誰が彼女だよ・・・」
『嫌だった?』
うぅぅ///
助けてもらった手前、そんなに文句も言えないけど。
それにしても・・・
「けっこう無茶したね」
コーヒーかけられて、よくあんなにあっさり引き下がってくれたもんだ。
『まー、あれはあっちが悪いってことで。とにかく飛鳥ちゃんが無事でよかったよ』
笑いながらそんな事を言う。
『はい飛鳥ちゃん。座って、これ飲んで落ち着こう』
無事だった方のコーヒーを手渡される。
あ、美味しい・・・
綺麗な景色と隣にいる存在のお陰で、気持ちが少しずつ落ち着いていくのがわかる。
でも自分の飲むやつ無くなっちゃったじゃん。
「私買ってくるよ」
『いや、オレは大丈夫だよ。可愛い飛鳥ちゃんがまた絡まれたら大変だしねー』
心配させないようにわざとらしく笑う。
自分だってコーヒー好きじゃんか。これけっこう美味しいし。
っていうか私がコーヒー好きになったのはあんたの影響なんだけど。
「んっ」
口をつけていたコーヒーを差し出す。
『え?』
「一緒に飲めばいいじゃん///」
『いいの!?』
うぅ///なんだよいつも遠慮なんて全然しないくせに。
こういう時だけ、確認しないでよ。こっちだって恥ずかしいんですけど。
「どうぞ///」
『やったぁー、飛鳥ちゃんと間接キスだぁーー!!』
「はぁ!?」
コイツ・・・・
「やっぱ返せっ!!」
『やだよー、飛鳥ちゃんとのキスチャンス!!』
!!///
だからその嬉しそうな顔やめてよ・・・
真っ赤になる私。
『飛鳥ちゃん!!照れてる?可愛い!!』
「うるさい!!」
『もう結婚するしか・・・』
「するかぁ、ゴラァ!!」
緩みきった顔面に拳を叩き込む。
ゴスッ!!
『痛いよー、飛鳥ちゃーん』
なんで結局こうなるんだよ。
途中までかっこよかったのに・・・バカ///
私達の関係が変わるのはもう少し先になりそうだ。
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