幼なじみの飛鳥#2【冗談じゃない】
『飛鳥ちゃーん』
「な、何だよ」
『だからー、チョコのお返しなんだけどさー』
今日も幼なじみのコイツと一緒に登校する。
先月、私はずっと好きだった幼なじみのコイツにチョコを初めて渡せた。
渡せたって言っても、部屋に置き忘れてきたんだけど・・・
それでも一応コイツの手に届いたのは進展と言ってもいいだろう。何年も渡せなかったんだから。
たぶん調子に乗るんだろうなとは思ってたけど、案の定調子に乗って私の顔を見るたびにチョコの話をしてくる。
喜んでくれたのは素直に嬉しいんだけど・・・
「別にお返しなんていらないって言ってんじゃん、義理なんだし」
いつもこんな感じのやりとりで本当の気持ちなんてコイツに言えるわけない。
『いや、オレにはちゃんと飛鳥ちゃんの気持ち伝わってるから!!』
「は?」
『だって飛鳥ちゃんの手作りだよ!!義理な訳ないじゃん!!』
「いや、私が義理だって言ってんだから義理だろ」
『美味しかったなー。飛鳥ちゃんの小っちゃくて可愛いお手てで作られたチョコは・・・』
「キモっ!!」
『ずっと好きだった幼なじみのオレに何年越しでようやく渡せたんだよね?』
「妄想力すげーな・・・」
まったくコイツの頭の中どうなってんだよ。ポジティブ脳すぎないか?
まあ、大体当たってんだけどさ・・・
『えー、でも本当にお返し何がいいかな?』
『せっかくだから飛鳥ちゃんが喜んでくれるものがいいんだけど、なかなか決まんなくて』
『もうずうっと飛鳥ちゃんの事考えて寝れないのよ』
!!///
コイツ、またこういう事をしれっと・・・
まあ、でも表情見てればわかるけど、たぶん嘘はついてないんだよね。
「そんなの・・・いいよ」
『え?』
「だ、だからそんなの何でもいいよ!!・・・アンタが選んでくれたんなら///」
自分で言っておいてなんだけど、恥ずかしすぎる。
顔を伏せていると、ぎゅうぅっと両手を握られる。
「へぁぇっ!!」
急に触れられて、変な声が出る私。
『飛鳥ちゃん逮捕しますっ!』
「はぁぁ、な、何?」
『可愛すぎるから、有罪!!』
手を握ったまま真っすぐに目を見つめてくる。
うぅぅぅ・・・・こいつ///
『あぁぁー、照れてる飛鳥ちゃんも可愛いすぎるぅぅ!!!』
「う、うるさい!!」
握られた手を振り払って、みぞおちに正拳を叩き込んでやる。
シュッ!
パシッ!!!
あれ?
私の繰り出した右手は見事に受け止められる。
驚いて顔をあげると、顔をじっくり観察されている事に気づく。
『もう飛鳥ちゃんの攻撃は全部知ってるよ』
「な、何言ってんだよ・・・」
なんとか言葉を返すが強い目力を浴びて、言外に抵抗は無駄だと言われているようで力が抜けていく。
『じゃあ飛鳥ちゃん、チョコのお返しはプロポーズでいいかな?』
「はぁ!?」
何のこと?ちょっと急展開すぎてついて行けないんですけど・・・
『小さい頃からずうっと好き、っていうか愛してる!!』
「なぁっっ///!!」
『だから結婚して、子作りして、この辺で庭付き一戸建てを買って、幸せに暮らそうっ!!』
!!!///
こいつ、また・・・
ズォゥゥン!!!
右の拳が脇腹に突き刺さる。
『うぅぅぅぅっ!!!』
私の渾身のボディブローに倒れこむ。
飛鳥ちゃんだってやられっ放しじゃないんだ、ざまー見ろ。
こっちの気も知らないで、冗談ばっか言うからいけないんだ。
そんな言われたら色々期待しちゃうじゃんか///
『うぅぅぅー。飛鳥ちゃん痛いってぇぇー』
「うるさい!!そんなふざけたプロポーズあるかっ!!」
一瞬でもドキドキした自分がバカみたいだ。
『えぇぇーー』
「いっつも冗談ばっか言って、付き合ってらんないわ!!」
そう言いながらも、毎回コイツの言葉や仕草に一喜一憂してしまう自分が情けない。
私ばっかり余裕が無いのが悔しいんだけど。
先に好きになった時点で負け確なんだよな、たぶん・・・
『いたた・・。あのさ、これだけは言っておきたいんだけど・・・』
脇腹を擦りながらこっちを見る目が急に切り替わる。
『オレ、飛鳥に冗談言ったことなんて一度もないから』
は!?
急な呼び捨てと真剣な表情に時間を止められたみたいに動けなくなる。
『全部本気だから』
えぇぇぇえぇえええ!!!///
動揺しつつもなんとか身体を動かし、顔を隠すように黙って先に歩きだす。
『飛鳥ちゃーん、待ってよー』
後ろからの声を無視してずんずんと進む私。
今追い付かれると色々都合が悪いんだよ///
それにしても、
いきなり結婚、子作りって・・・
普通、恋人からだろっ///
順番どうなってんだよ!コイツ!!///
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