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Mandarin Oriental, Bangkok

目覚めのまどろむ時間に、このホテルの素晴らしさを思い出したら記したくなり、目覚めてしまった午前4時。この美しいホテルに滞在したのは何年前だったか。

映画「サヨナライツカ」の舞台だったという事は帰国後に知った。
思わずホテルをweb検索する。出てくる。私にとって世界で一番美しいホテルの1つだ。

ひょんなことからタイへ旅行に行くことになり、なりゆきでこのホテルへの滞在が決まった。

伝統があり、歴史的にも色々曰くつきのホテルらしいが、前評判はそれとして様々なホテル滞在を経験すると期待はずれだったりすることもあるので、控え目な期待値のままバンコクの空港で迎えの車に乗った。

白い手袋の運転手。小説でしか見たことのない超一流ホテルのお迎えドライバーが目の前に現れた。

ホテルに到着し、車のドアを開けてもらいロビーに入る、屈託のない笑顔のドアマンが扉を開ける。映画でしか見たことのないこの一連の光景が現実のものとなったあの瞬間。

何度も来ると名前を憶えていてくれるらしい。美しい釣り鐘のオブジェが下がるロビーから廊下を抜けるとチャオプラヤ川を望む朝食会場。途中にはサマセットモームに関する部屋がある。

当時でもカードキーが主流なのに、重たいずっしりとした部屋の鍵、ああ。まだ覚えている。顔を見るとエレベータの階を押してくれる。記憶してるのだ。どのゲストがどの階に滞在しているかを。

部屋に入ったとたん、私の学んできた中で最上級のポライトイングリッシュ、、これで、もてなされた。ああ、would you..ってこんなシチュエーションで使うんだって身に染みた。

夕方部屋に帰るとさらに驚いた。

部屋に戻ると乱雑に散らかしたはずの化粧品が洗面所のシンク周りにそれはそれは美しく整えて並べられており、しばらく見とれてしまった。

当時、歳の割には背伸びをして持っていった
ブランドの化粧品や香水の数々、その一つ一つにデザイナーチームがおり、パッケージがあり、ボトルデザインがあり、香りがあり、みなそれを選定するに至る物語がある。

巧みな配列のその間から、小瓶一つ一つの、ブランドに携わる人々が紡ぎだす物語が垣間見えるようだった。

ベッドに目をやる。ターンダウン後、格調高い詩や書物の一篇が書かれたカードと共に置かれた一輪の鮮やかな紫の蘭の花。
外にはチャオプラヤー川。周りは瞬く穏やかな夜景。月が綺麗だった。

バスルームにはたっぷりのバスソルト。
レモングラスの香り。
この旅でレモングラスの香りを覚えた。

レモングラスの香りを感じると、このホテルの思い出がいつでもよみがえる。世界中どこにいても、何をしていても。

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