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家族が増えた日

私のnoteでは、普段は過去の芸人時代の体験をもとに感じたことなどを物語として綴っています。


今回はいつもと違った視点のお話をさせていただきます。

本日のテーマは「想像していなかった未来」です。昨年家族に迎え入れた愛犬との生活についてのお話です。これから犬を迎えようと思う方、愛犬との暮らしに癒されている方に是非見て欲しいです。どうぞ最後までお付き合いください。

運命的な出会い

初めての出会いは、ある譲渡会の会場だった。僕たち家族は犬を飼うことを決めて、毎週のように犬や猫の譲渡会を巡っていた。けれど、猫に比べて犬の数は少なく、なかなか良い出会いがなかった。

そんなある日、会場に到着すると、2匹の犬が待っていた。しかもどちらもトイプードルだった。譲渡会に血統書がいるんだ?と思った。

2匹のうち、大きい方が姉、小さい方が弟だとスタッフが教えてくれた。

僕たちは自然と弟犬の方に惹かれ、この子を家族に迎え入れるべきか、真剣に考え始めた。心の中ではほぼ決まりかけていたが、無責任なことはできない。自分と向き合い、慎重に判断しようとしていた。

その時、年配の女性が1人やってきた。彼女はスタッフに「この子抱っこしてもいいですか?」と尋ね、弟犬を抱き上げて驚きの一言を放った。

「この子、もらいます」

あまりの即決ぶりに、僕らはただ呆然とするばかり。「え?え?」と心の中で問いかけるしかなかった。まるで八百屋で野菜でも買うかのように、「この子もらいます」と言われたのだ。いや、野菜買うにしてももっと悩むのではないか。

唖然としながらも、その瞬間僕らの選択肢はひとつに絞られた。弟犬を迎え入れる夢は消え、目の前には姉犬だけが残っていた。彼女を抱き上げると、小さな体がブルブルと震えていた。正直なところ、最初は「妥協」だと思った。

だが、その思いは後に全く違うものへと変わっていく。この姉犬が、僕らの家族にとってかけがえのない存在になるなんて、その時は想像もしていなかった。

家族会議

お姉ちゃん犬を我が家に迎え入れる事になった。

初めて我が家に来た日

彼女は小さく震えていて、全く吠えることもなかった。「この子、本当に吠えないのかな?」と話しながら、リビングでお昼ご飯を食べていた。そのとき、突然「ワンワン」と彼女の声が響き渡り、全員で大喜びしたのを覚えている。

吠えることも出来ないほど怯えているのかと思っていたのでとても安心した。

そして、いよいよ名前を決めることに。みんなで候補を出し合い、可愛らしい名前、人間っぽい名前、ちょっと変わった名前など様々な案が飛び交った。

そして決まったのは、「おいも」

どう?可愛いでしょ?

家族は親しみを込めて「おいもっち」と呼ぶ。

この名前は他の犬とかぶらないし、どこかふざけた響きも可愛らしくて、僕はこの名前がすごく気に入った。

ドッグランなどで「おいも」と呼ぶと、他の飼い主さんは笑ってくれるし、名前をすぐ覚えてもらえる。我ながら、素敵な名前をつけてあげられたと思う。

その夜、僕は初めて彼女をお風呂に入れた。体はうんちまみれで、しっかりと洗ってきれいにしてあげた。それから初めてのご飯をあげると、よっぽどお腹が空いていたのだろう。彼女は鼻を鳴らしながら勢いよく食べ始めた。その後は安心したのか僕らの膝の上でぐっすりと眠った。

一年の記念日

先日11月12日は愛犬「おいも」が我が家に来て1年の記念日だった。

記念日という事で普段は食べることのない野菜やお肉を振る舞った。大興奮しながらガツガツ食べてくれた。それにしても、おいもが我が家に来て一年というのはあまりに早くて驚いてしまう。

毎日、運動会で大騒ぎしてイタズラばかりしているおいもだけどやっぱり可愛くて可愛くてたまらない。


一年経ったけど未だにトイレはミスする。


やっちゃダメな事ばかりする。


ダイニングテーブルにのってはいけないと何度も怒ってるのに毎日のってしまう。

キャンプでは設営の邪魔をする。

そして、上司への不満を言ってるサラリーマンの如く。


特技は粉々、ビリビリ、ビッチョビョ。


だけど、愛おしくてたまらない。

やっぱり犬っていいよね。おいもちゃん、我が家に来てくれてありがと。

犬を飼う事へのトラウマ

実家では昔から犬を飼っていた。最初の犬は自分がまだ小さかった事もあり吠えられるのがとても怖かった。可愛いとかそんな感情は1ミリもなかった。ただただ怖かった。



それからしばらく、家には犬がいなかった。

僕が小学生の頃、友達と遊んでいる途中で、神社の隅に置かれた段ボールに気づいた。中からかすかに子犬の鳴き声が聞こえてくる。恐る恐る蓋を開けてみると、中には小さな子犬が縮こまっていた。

あまりの可愛さに心を奪われた僕は、思わず子犬を抱き上げた。子犬は安心したように僕の顔をぺろぺろ舐めてきて、僕の心は一瞬でその子に奪われた。「この子を家に連れて帰ろう」。迷いもなくそう決意した僕は、子犬を抱えて家に向かった。

家に着くと、以前飼っていた犬のために使っていた古いケージを見つけ、そこに子犬を入れた。親には内緒で飼おうと決めたのだ。しかし、その計画はすぐに破綻することになる。

子犬がケージの中でキャンキャン鳴き始めたのだ。すぐに親に見つかり、こっぴどく怒られた僕は、「明日、元の場所に戻しなさい」と言い渡された。

信じられなかった。こんなに可愛いのに、またあの段ボールの中に戻さなくてはいけないなんて……。

翌朝、泣きながら子犬を元の場所に戻そうと準備をしていた僕に、親が突然こう言った。
「この犬を飼おう」

僕は驚きと喜びが一気に押し寄せ、胸がいっぱいになった。この子犬と一緒にいられる。そう思っただけで、涙が止まらなかった。そして、5月にやってきたこの子犬を「メイ」と名付けた。

メイはテラスで飼うことにした。シェットランド・シープドッグの雑種だろうと思われるその子犬は、すくすくと成長し、凛々しい姿になった。

僕にとって、メイはかけがえのない友達になった。学校から帰り、テラスに向かうとメイは尻尾を振りながらぺろぺろして大歓迎してくれた。僕はメイが大好きだった。

しかし、メイには雌犬特有の生理があることを、当時の僕はよく理解していなかった。ある時期から、テラスに毎日のように雄犬が訪れるようになった。次々とやってくる野良犬の姿に、僕はどこか不安を覚えた。

そして、ついに事件が起きた。ある日、いつものようにテラスを見ると、そこにいるはずのメイがいなかった。

「メイがいない」

僕の心にぽっかりと大きな穴が開いたようだった。泣きながら田んぼ道や近所を暗くなるまで探し回ったけれど、結局、何の手がかりも見つからなかった。

何日も暗くなるまで探したが諦めるしかなかったあの日のことは、今でも胸に深い傷を残している。思い出すたびに胸が苦しくなる。

その経験があったからこそ、今でも新たに犬を飼うことには少し不安がつきまとう。もしまた、あの時のように失うことになったら。そう思うと、たまらなく怖くなるのだ。

命を預かる覚悟

おいもの事を僕は本当に溺愛している。それはおいもが可愛いからでもあるけれど、あの時大切に出来なかったメイの分も愛情注ぎたいという思いがあるからだ。

留守番の多いおいも。仕事から帰ると、僕らはまるで運動会のように走り回る。そして、そのあとはギュッと抱きしめ合う。日々がこんなに幸せなものになるなんて、想像もしなかった。

僕がぷんぷん怒っているとき、おいもはそっと近づいてきて、優しくぺろぺろと舌先で気持ちを溶かしてくれる。仕事から帰ると、嬉しさを全身で表現する激しすぎるほどの大歓迎が待っている。散歩の途中では、いつも振り返りながら僕のことを気にしてくれる。そして、夜になると、足元で静かに眠りながら、僕らを守るように寄り添ってくれる。

こんなふうに、僕たちの暮らしは彼女の無償の愛で満たされている。


僕は、おいもの命を最後まで預かる責任を背負っている。
その代わりに、おいもは、僕に人生で最も輝く日々をくれた。
そして、きっとこの物語の終わりは、おいもと共に紡ぐ、最高の一瞬になるだろう。


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芸人時代の話を綴っています。僕の人生のドラマです。是非擬似体験してみてください。1から順に読んでみてください。感想や意見もお待ちしております。

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