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「発言しないなら居る意味がない」と気付いたハロウィンパーティー

街中でハロウィンの飾り付けが始まると、苦い思い出が蘇る。
あれは十月初旬のことだった。
むすめの通う幼稚園では、園で行われる季節イベントとは別に、母親主催のパーティがあった。
クラス毎にハロウィン、クリスマス、イースター、学年末のパーティーが開催され、自分の好きなイベントを担当することが出来る。
なにせ初めてのことだし、嫌なことは早々に終わらせようと、日本人の友達と一緒にハロウィンを選んだ。

グループチャットに招待され、日程や開催場所の話し合いが始まった。
日本人がいるから英語で話してくれるかと思いきや、お構いなしのスペイン語!!短い文章を短時間でどんどん送ってくる。
話に入れず諦めて携帯を放置しようものなら、未読件数はゆうに百件を超え、チャットを開く前にげんなりとした。
翻訳アプリを使って状況を理解しようとしたけれど、口語文は綺麗に訳せないらしい。jajajajaってなにさ、ジャジャジャって読んじゃったじゃん。
とりあえず何がそんな可笑しいのか誰でもいいから説明してほしいし、私もjajajaって使いたい。

「英語で送ればいいし、困ったときは手伝ってあげる」
スペイン語の先生から力強いアドバイスを貰ったけれど、重い腰はいつまでもあがらず、次第にメキシコ人に任せておけばいいかと考えていた。

「あなた達は一度も発言しないけれど、どう考えているの」
メキシコ人のママから個別にメールが来た。
「やってしまった…」という思いと
「英語で進めてくれれば、私だって発言した」と恨みがましい気持ちになったけれど
「一度も発言しなくてすみません、スペイン語がわからなくて。〇〇の案に賛成します」とだけ返信した。
迎えた当日、件のママはまだ怒っているかもしれない。ビクビクしながら参加した。

杞憂だった。彼女は明るく迎え入れてくれたし、テーブルの飾りつけやお土産の配置など一つ一つに私の意見を求めてくれた。
準備に参加しなかった分、張り切って働いた。
覚えたてのスペイン語で会話もした。緊張で震える足を押さえつけ、お開きになるまで会場に居続けた。
その日の帰り道はきっと、小さい子供のような誇らしげな顔をしていたと思う。

時が経ち、これまで色々なパーティーを企画した。失敗もしたけれど、
「あなたはどう思っているの」とはっきり言ってくれた彼女・モニーにはとても感謝しているし、
「発言しないと居る意味がない」は大袈裟に言うと人生訓になった。

新しく現地校に加わった日本人でも、私のように言語の壁に悩み何の発言もせず上手くやり過ごせたことをラッキーと語る人もいる。
今だから思うのは、
「スペイン語が分からないから参加出来ない」のはメキシコ人のせいではなかったし、「外国人がいるのだから、英語で話してくれればいいのに」と思うのであれば、そう言うべきだった。
相手の気持ちを想像し、空気を読んで行動するのは、日本人の美徳であるけれど、ここは日本ではなかった。
正直言ってモンテレイは外国人に優しくない。
おかあさん友達の間だと、メキシコ人と同じことが出来て初めて認められる空気すら感じる。
楽そうな環境に身を置く友人を羨ましいと思ったこともあるが、今はこれで良かったと思っている。
落ち込むこともあるけれど、私、この町が好きです。

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