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三十歳専業主婦、スペイン語を習う。

語学学習スクールに見学に行った。
メキシコの公用語はスペイン語というが英語が通じるならば、さほど問題はないだろう。

こちとら二十一世紀最大の文明の利器、Google翻訳アプリをダウンロードしている。もちろん大人のやり直し英語は必須だけれど、夫と違ってスペイン語まで受講する必要はないはず。
スタッフの方が、メキシコ人の知り合いがいるので聞いてみますと早速電話をかけてくれた。
「都市部だと英語を話す人もいるそうですが、やはり基本はスペイン語かと」
オーマイゴッシュ。初めての駐在には、ちとハードルが高いぜ非英語圏。
仕方なく英語とスペイン語のコースを申し込み翌週から授業開始となった。
英語の担当講師は背の高いオーストラリア人男性、スペイン語の担当講師はコロンビア(だったと思う)に留学経験のある日本人女性に決まった。

授業時間は週一回、英語が四十分で、スペイン語が八十分。
実のところ、日本語で受ける八十分よりも、英語で受ける四十分の方がバキバキに骨が折れた。フリートークだと話も弾むけれど、単語の発音練習になると途端にうまくいかない。単語と単語を連結させて発音するリンキングがこんなにも難しいとは思わず、「正しい発音が出来ている」と思っていただけに帰り道はいつも落ち込んだ。

逆に日本人講師によるスペイン語の授業は楽しかった。
スペイン語は基本的にローマ字読みなので読むのは容易い。
動詞は主語と時制により単語の末尾が変化し、一つの動詞につき五十個の変化がある。最初に学ぶユニットでは六個の変化さえ覚えれば良く、基本さえ理解すれば、初心者でも簡単な会話をすることが出来た。

授業を受ける度に出来ないことが目につく英語とは違って、スポンジのようにどんどんと吸収していった。新しい事をやり始めるのは楽しかったけれど、勉強だけしていれば良かった学生時代と違い、家事と子育てとの同時進行である。宿題は子供が寝静まった午後十一時から明け方四時まで行った。
妊婦とは思えないハードな生活は、正産期を過ぎた三十八週まで続いた。

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