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慢性骨髄性白血病は完全寛解したけれど  #6 入院②<タシグナ対応>

 住宅メーカーとの打合せが概ね終了する頃には冬になっていた。寒さからだろうか体の随所から痛みや強ばりが感じられ浮腫も酷かった。頭や全身の不快感にも悩まされ続けていた。不眠症やめまいも時々出現していた。以前からある数々のニキビは化膿を伴って肥大化し、皮膚科の医師からニキビへの刺激を避けるため髭剃りを止められるほどだった。

 常に頭の中が霧に覆われているようで何かに押しつぶされているような感じが抜けず、試しに精神科の医師に話を聞いてもらった。過大に暗く落ち込んでいるわけではないし、状況の把握や受け答えもしっかりしていることから副作用による気分障害などは感じられないとのことだった。

 医学的には不定愁訴になるのかもしれないが、それでも私が継続的に副作用による不調を訴えていることから、主治医は「スプリセル以外の薬を試してみますか?」と提案してくれた。そして3ヶ月ほどスプリセルの服用を中止して薬を抜き、入院して別の薬を試してみることになった。

 スプリセルの服用を中止している期間は、頭の回転がフリーズする感覚は時々あったものの、概ね治療開始前に近い状況まで回復することができた。途中で職場の異動があったので新たな職場にも病気療養中であることを伝えた。しかし、私の見た目や話し方などが健常な時と変わらなかったため「元気そうで良かった。」などと大きな誤解を生じてしまう原因となった。

 そして、およそ2年ぶりに2回目の入院をした。2回目は様子が分かっているので気持ち的には楽だった。ただ、同室の方が医師に余命数ヶ月であると告げられていたり、入院中に親しく話をしていた方が亡くなったりする状況を鑑みて、あらためて血液内科に係る病気の恐ろしさを実感した。

 主治医から新しい分子標的薬を「タシグナ(ニロチニブ)」にすることを告げられた。タシグナは副作用で血糖値の上昇があるため糖尿病や耐糖能異常(糖尿病予備軍)の患者は避けた方がよい薬である。私は糖尿病の既往歴が無かったためタシグナになったのだろう。

 ただ実際にはタシグナを服用すると急激に血糖値が上昇した。空腹時でも継続して200mg/dLを超え300mg/dLに近付くようなこともあった。高血糖が継続することは初めての経験だったが常に満腹感や膨満感を抱えているようで体の動きにくさも感じられた。

 高血糖が継続したためインスリン注射をすることになった。既に亡くなっていた父が糖尿病で晩年にインスリン注射を打っていた。糖尿病は遺伝の要素もあるとのことなので気を付けていたのだが、まさか慢性骨髄性白血病の治療で糖尿病の領域に足を踏み入れることになるとは思わなかった。

 18日間の入院中は高血糖が辛かったが、次第に空腹時は200mg/dLを下回るようになってきた。顔のニキビもスプリセル服用時と比べると少なかった。頭の中が霧に覆われている感じも少なく、体や胃の痛みも痛み止めを飲めば消失した。高血糖は心配だがタシグナを継続することになり退院した。

 ~#7 タシグナ服用中止に続く~

 

 

 

 


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