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慢性骨髄性白血病は完全寛解したけれど  #10 新型コロナウイルス感染症の感染拡大

 線維筋痛症外来に通い始めた頃、空咳がずっと続いていた。「冬だからだろうか?軽く風邪をひいた?」と思って放置していた。しかし、線維筋痛症外来の医師は、私の胸に聴診器を当てて「少し音がおかしい。」と述べた。肺のレントゲン画像も見た上で呼吸器内科の受診を促した。

 血液内科で受診している病院には呼吸器内科もあったので早速受診した。胸のCTを撮ると軽度の気管支壁肥厚があり、ぜんそくとのことだった。錠剤の咳止めや吸入薬が処方された。痔の治療が終わり消化器外科の受診が無くなったばかりだったのに新たな受診科ができてショックだった。

 その年は、新型コロナウイルス感染症の話題が次第にヒートアップしていった年だった。病院も厳戒態勢を増していく中、私の空咳は春になっても続いていた。呼吸器内科の医師に、私が新型コロナウイルスに感染したらどうなるかを問い掛けたところ
「○○さんは、おそらく重症化すると思います。」
とのことだった。

 すでに慢性骨髄性白血病患者の新型コロナウイルス感染による重症化リスクは伝えられており、主治医からも人混みを避け感染予防を徹底するよう促されていた。そこに気管支壁肥厚による重傷化リスクも加わってしまった。これは、絶対に感染するわけにはいかないと強く思った。

 休職については、当初は9ヶ月くらいの期間を考えていた。線維筋痛症に類する症状が辛いということもあったが、9ヶ月あれば新たな分子標的薬を試す入院を十分に行えるだろうと思っていた。ところが、私の白血病細胞は分子標的薬を服用していないのに次第に減少していた。

 血液内科の主治医は、私のBCR-ABL融合遺伝子検査の結果を見るたびにいつも驚いていた。秋頃には、分子標的薬を服用していないのに一時的に白血病細胞が「検出せず」のレベル近くになった。ここまでになると私の体調を崩してまで新たに分子標的薬の服用をする必要はないとのことだった。

 慢性骨髄性白血病が良好な状態になっていくことは嬉しかった。だが、線維筋痛症に類する症状はなかなか良くならなかった。両手の強ばりが強くなり思うように手が動かせず頭も上手に働かなかった。針やガラスで手足をつつかれているような感覚の中、背中にいきなり激痛が走ることもあった。

 たまにコンビニエンスストアやスーパーで買い物をすることがあった。コロナウイルスに対応したレジやセルフレジなどになっていた。緊張しながら会計処理を行ったが、手や頭が上手に動かないので素早く対応できない。でも店員には体が不自由なことが伝わらないので怪訝な表情をされた。

 よく年配の方が買い物で嫌な思いをされることがあるというが、こういうことなのかと納得した。自分の体の症状やコロナウイルス感染症の流行もあって、もう人に会うことや会話をすることが本当に嫌になっていた。何か楽しいことをしたいとか美味しいものを食べたいとか何も思わなかった。

 それでも外出の練習をしなければと思って、コロナウイルス感染症に気を付けながら妻と自家用車で出掛けてみたことがあった。紅葉を見てその美しさに感動することもあった。しかし、半日程度の外出でも帰ってくると異常な疲労感に襲われて数日間は寝込んでしまった。

 コロナウイルス感染症関連の報道も過熱していき外出に対する恐怖感は増す一方だった。休職を長引かせることは経済面や職業人としてのキャリアに与えるダメージが大きかったが、自分の身を守りたいという気持ちが強くなっていた。9ヶ月程度と考えていた休職期間をさらに延長することにした。

~#11 早期退職の決断に続く~

 

 

 

 


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