金の切れ目

常田さんと付き合って半年がたった頃、常田さんが「ごめん。金欠で…少しお金を貸してほしい」と言うようになった。付き合ってから少し気になったことがある。

「バック買ってほしい」
「〇〇にご飯食べに行きたい」
お金はすべて私持ちだった。買うとありがとうと甘えてくれる。
それが嬉しかったが、違和感があった。

要求もエスカレートしているように感じた。

本当に私が好きなのか?という疑念が拭えなかった。
確かめたかった。私=お金なのではないかと。

そして、最初に戻る。
「お金を5万貸してほしい」と言う
もう言わなくちゃ…。意を決して伝えた。

私はごめん。持ち合わせない」という。
常田さんは「すぐ返すから」という。

そういう問題じゃない。私はお金なのか?価値がと直球でぶつけてみた。だけど、それをすることで関係が壊れるかもしれない。迷った。でも意を決して伝えてみた。

「俺ってさ、金だけの存在なの?

常田さんは「酷い…そう思ってたんだ。最低。もう帰ろ」
あの純粋な常田さんは、もう居なかった。淡い記憶もすべて…消えた。いや上塗りされた。

すぐに別れようと言われた。もう、考え直してほしいという気力も尽きていた。

思い出をお金で買ったような感じだった。その後、風の噂だが、常田さんは会社を辞めた。合同研修会も代役の人が来てた。土屋は残念がっていたが、私は何とも言えない気持ちになった。

お金は天下の周り物。あるインフルエンサーが言っていた。お金は交換券である。あれば色々なものに引き換えることが出来る。常田さんを手に入れるには圧倒的な交換券が必要だったのだ。

ただ、同時に私に魅力が無いから。私のお金に目を付けたのかもしれない。
気づいたら、銀行の残高は半分を切っていた。だから言わなきゃいけなかった。これでよかったんだ…これで…。


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