泥の海を渡る㉙

涙が止まらない日がある。

「私が全部、悪いの。本当にごめんなさい」
誰に何を謝って良いのかも分からない。
泣き疲れて寝てしまう時もある。

芝に寝転んでしまい救急車には運ばれた時。
過呼吸になってしまった時。
かかりつけ医に運ばれた時。

話を聞いてくれた。
今は
もう
誰も
私の話は聞かなくなった。

周りには
楽しそうな電話の声。
画面に溢れる
楽しそうな返信の文字。

きっと
私の声は届かないのだろう。
期待しない。

いや。
発する事すら。
無駄。
もう。
止めよう。

せめて
笑って
穏やかな
良い人だった
と。
無理かな…と思いながらも

残された彼らに何ができるのか
考えるだけ。

唯一の楽しみは美容、植物鑑賞。
美容は
丁寧に一つひとつ動作を確かめながら
鏡の中の自分の顔を本当に変わった。
去年の1月から本格的に始めた。
最後の願いを込めて丁寧に自分を慰めようと。
毎日、
丁寧に
導入液を塗り
パックをし
皮膚科から処方された塗薬を続けて
もうすぐ1年。
4時間おきのビタミンCの接種。
半信半疑だったけど
皮膚科通院でこんなにも変わるのかと
自分でも驚いた。
目の下のたるみも皺も無くなり
憧れていた白い肌になれた。

食べ物、飲み物にも気を遣っている。
水。
白湯。
炭酸水。
ノンカフェィンの紅茶。
それ以外は接種しない。

自分の手で触れても
分かるようになってきた。

嬉しかった。
最後くらい
本当に綺麗な人だったね
って言われてみたい
叶わないだろうけど…。

育てている観葉植物も可愛い。
サボテンの花に癒される。
ジャスミンの花の薫にも癒される。
苦しそうにしていた植物達も鉢植えをして
大分、成長してきた。
これからどんどん大きく成長できる。
良かった。
最後まで丁寧に関わってあげよう。

これで大丈夫。
あと少し。
あと少し。

涙の分
悲しさを笑顔に変えて。
今日も笑顔で接するようにする。
誰にも。
明るく。
平等に。
優しく。
穏やかに。

大丈夫。
あと少し。
迷いもない。
期待はない。
焦りもない。

もう海の入り口は近いのだから。

最後の風景には
願いがある。
目が見える距離で振り返れるなら

笑っていて欲しい。

最後の願い。

お幸せに。



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