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【映画#34】「夏至」『日曜日たち』より

こんにちは、三太です。
先日、勤務校で定期考査がありました。
今年度は毎回の定期考査で、初見問題を一つは作ることを目標にしています。
今回もなんとか作ることはできましたが、もっとノウハウを学びたいと思っている今日この頃です。

では、今日は『日曜日たち』に出てきた映画、「夏至」を見ていきます。『日曜日たち』内に出てくる映画は「夏至」1作です。

基本情報

監督:トラン・アン・ユン
出演者:リエン(トラン・ヌー・イエン・ケー)
    スオン(グエン・ニュー・クイン)
    カイン(レ・カイン)
    ハイ(ゴー・クアン・ハイ)
上映時間:1時間52分
公開:2000年

あらすじ

母の命日に始まり、父の命日に終わる物語です。
その両親の子どもである長女・スオン、次女・カイン、長男・ハイ、三女・リエンに起こる出来事、特に姉妹三人の恋愛模様(不倫も含む)を軸に話が展開します。

長女は夫クオックとの関係が上手くいっていません。
クオックは長期の出張に出るのですが、スオンもクオックもお互いに愛人を作っています。
次女は作家の夫キエンと一見とても上手くいっているように見えます。
しかし、夫がサイゴンへ出張に行って帰ってきてから少し雲行きが怪しくなります。
三女のリエンは彼氏らしきポアという男性がいるのですが、兄であるハイを思うあまり、少し彼氏と上手くいっていない感じがあります。

それぞれが抱える悩みが最後にクロスしていきます。

設定

家族
浮気
不倫

感想

どの登場人物にも艶があり(髪や肌が美しい)、植物や食べ物もどこか官能的で、一言で美しい作品でした。

夫、あるいは妻だけを愛せるのかというのがテーマになっているかと思うのですが、それは亡くなった母の頃からの宿命みたいなものだと感じさせられる描写もあります。
例えばスオンの不倫相手の男の名はトゥアンなのですが、母の好きだった男(父ではない)の名前と一緒であることなどです。

かなり深刻そうなテーマを扱っていますが、どこか救われるところがあるのは、ベトナムの日常生活自体の美しさがあるからでしょう。

同居しているハイとリエンの関係がかなり近くて気になりますが、結局最後まで何かがあるわけではなく、リエンが一歩を踏み出せない一つの要因を表しているのかと思いました。

最後に、これも不思議な感覚ですが、日常を丁寧に生きようと思える作品でもありました。
それは、村上春樹のエッセイを読んだ後の感覚に近いものがあります。

かまきりも色気あるらし雨上がり

その他

・フランス・ベトナム共同製作の映画
・ウィキペディアより
 →監督のトラン・アン・ユンとトラン・ヌー・イエン・ケーは夫婦である。
 →トラン・アン・ユンは村上春樹の『ノルウェイの森』を映画化している。(感想は先に書いていたのですが、やはり通じるものがあったのかもしれません)

『日曜日たち』内の「夏至」登場シーン

受話器の向こうでぽつりぽつりと言葉を選ぶように語りはじめた千景の話によれば、二週間前のその夜、彼女は仕事帰りに一人で映画を観に行ったらしい。『夏至』というベトナム系フランス人監督が撮った美しい映画で、ハノイに住む三姉妹が母親の命日に集まり、そこで出た生前の母の話に自らの冷えた夫婦生活や恋愛をだぶらせてゆくものらしかった。

『日曜日たち』(p.43)

このシーンは、日曜日の夜、千景が夏生に二週間前に泥棒に入られた話を電話で語るシーンです。
夏生ははじめ読みかけの小説を読んでいたので、心ここにあらずという感じで聞いていたのだが、泥棒に入られたという告白を聞き、一気に怖くなり、恋人の佐々木の家に行こうとします。
千景は引用のあとにも、映画について話すのですが、ほんとうにいい映画だったようで、夏生が止めなければ、そのままずっと映画の話をする勢いです。
そのため「夏至」はここで良い映画として取り上げられていることがわかります。

『夏至』というベトナムの映画をひとりで観たあと、ふらっと立ち寄った騒がしいバーで、千景は若い二人組の男に声をかけられたらしい。

『日曜日たち』(p.57)

千景はこの引用のあと、若い二人組の男に睡眠薬を飲まされ、財布を盗まれて、家に入られ部屋の中をめちゃくちゃにされます。
p.43とp.57の間には、夏生の別の回想が一つはさまるのですが、「夏至」があることによって、話のつながりがわかりやすくなります。
また、「夏至」の妖艶な感じが、千景の語りにそのような雰囲気を与える効果もあるかもしれません。

吉田修一作品とのつながり

・家族の物語だということ
吉田修一作品の中で描かれる家族については、さらに掘り下げていきたいと感じています。
特に作品同士に頻繁に現れる家族の関係などを見られたら良いなと考えています。

以上で、「夏至」については終わります。

それでは、読んでいただき、ありがとうございました。

画像の出典:Amazon「夏至」

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