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【閑話休題#6】恩田陸『三月は深き紅の淵を』

こんにちは、三太です。

今日は以前、noteのコメント欄でオススメしてもらった本を読んだので、それを紹介したいと思います。
その本のタイトルは『三月は深き紅の淵を』です。
初出は1997年です。

あらすじ

この作品は以下の四章構成になっています。
第一章 待っている人々 
第二章 出雲夜想曲 
第三章 虹と雲と鳥と 
第四章 回転木馬   
この四つの章を『三月は深き紅の淵を』という本がつないでいます。
少しややこしいですが、『三月は深き紅の淵を』の中に、『三月は深き紅の淵を』が出てくるのです。
四つの章はゆるやかにつながっていますが、それぞれ独立したミステリーとしても楽しめます。
また、それぞれの章のあらすじを説明するのはなかなか難しいです。
特に第四章はメタ的な視点も出てきて、複数の話がパラレルに進んでいくので難解です。
けれども、楽しめる作品には違いないです。

感想

この本はnoteのコメント欄でオススメしてもらった本であり、オススメしてもらっただけあって、とても楽しく読むことができました。
そもそも恩田陸さんは、本が好きなんだなということが伝わってきました。
四つの章とも面白かったのですが、私としては第三章が一番面白かったです。
代わる代わる登場人物が出てきて、テンポ良く進みますし、何よりミステリーとしても終わり方が強烈でした。
この文庫の最後の皆川博子さんの解説でも述べられていたのですが、恩田陸さんが考えているテーマは自分自身も考えたいテーマにつながると感じました。
関連部分を引用します。

彼女にとって、重要な、極めて個人的なテーマはずばり『ノスタルジア』である。あらゆる意味での懐かしさ。それは心地好く切ないものであるのと同時に、同じくらいの忌まわしさにも満ちている。彼女は幼い頃から世界というものに対して漠然とした郷愁を抱いていた。郷愁という言葉が誤解を招くのならば、世界というものがぐるぐると大きな円を描いて、時間的にも空間的にも循環しているという感触である。デジャ・ヴとはまた少し違うのだが、そういう感覚が幼年期の彼女をかなりの部分で支配していた。今ではそんな感覚が日常生活に占める割合は少なくなったものの、たまにそういう感覚がざぶんと押し寄せるとパニックに陥る。その感覚をなんとか目に見えるものにしようと、彼女はワープロを前に悪戦苦闘するのである。

pp.343-344

「時間的にも空間的にも循環しているという感触」や「パニックに陥る」とかまさにそうだよなと思いました。
このように自分と通じる部分があるという点でも、恩田陸さんの他の作品も読んでみたいと感じました。

noteを通じて、読書の幅が広がる経験ができたことを嬉しく思っています。

それでは、読んでいただき、ありがとうございました。

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