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【映画#28】「恋恋風塵」『パレード』より

こんにちは、三太です。
休日に、家の前を野球少年たちが走っています。
顔を真っ赤にして走っている坊主の男の子もいます。
中には歩いてある子もいます。
どの子も頑張れ~と思いながら見ていた今日この頃です。

では、今日は『パレード』に出てきた映画、「恋恋風塵」を見ていきます。
『パレード』内に出てくる映画26作中の22作目です。

基本情報

監督:ホウ・シャオシェン
出演者:阿遠(王晶文(ワン・ジンウェン))
    阿雲(辛樹芬(シン・シューフェン))
    阿遠の祖父(李天祿(リー・ティエンルー))
上映時間:1時間50分
公開:1987年

あらすじ

おそらく1990年前後頃であろう、台湾の山奥の村が舞台。
阿遠(アワン)という男の子と、阿雲(アフン)という女の子が主人公。
二人はともに中学生です。
幼なじみで仲が良い様子。
阿遠は中学校卒業後、高校に通わず、台北に働きに出て、夜学にも通います。
なかなか台北で働くというのは、田舎から出てきた阿遠にとっては大変そうです。
そんな阿遠のもとに、阿雲も2年ほど後、後を追ってきます。
二人はけんかなどをしつつも、台北の暮らしになじんでいき、仲良く暮らしていました。
そんな折、阿遠のもとに、兵役の手紙がやってきます。
二人には三年間の空白ができるのでした。
手紙でのやり取りを頻繁に行う二人ですが・・・。

                                  中学生時代の二人


設定

純な恋愛
上京
戦争の影響(この映画では兵役)

感想

悲恋の物語でした。
最後は「そうなるのか・・・そして、そんな終わりかたなのね・・・」という感じです。
ただ、決して見終わったあとの感じが悪いわけではなく、おそらくこれからも彼らの生活は続いていくのでしょう。(ただ、自分がそんな青春時代から幾分年をとったからそう言えるだけで、当事者達はそうは思えないでしょうが・・・)
全体を通して寂し目なトーンで貫かれています。
それは音楽の影響もあるでしょう。
そして、上京という設定も深く関わっていると思います。
そもそも田舎の暮らしがとても大変そうです。
兄弟が多く、貧しい感じの暮らしで、阿遠はまだ良いですが、村には手紙(文字)を書けない女性もいます。
また、田舎から都会に出たことにより、そこに上手くなじむことができる人もいますが、そうでない人もいますし、暴力を受ける人もいます。
なんだか外国人技能実習生の問題と通じるとも思いました。
序盤を見終わったときに、「映画」がけっこうキーポイントになるのかなと思ったのですが、(村では野外映画館が行われている)そういうわけではなかったです。
阿遠の家族(祖父、父、母)をはじめ、色んな登場人物がいるのですが、私は阿遠が最後に働いていた配送屋の社長が一番好きです。
兵役の経験談を話したり、餞別をくれたり、人間としてのやさしさが感じられました。

三年の月日は重く秋の暮れ

                              最後の祖父と阿遠のシーン


その他

ウィキペディアより
→『風櫃の少年』『冬冬の夏休み』『童年往事 時の流れ』と共に、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の自伝的4部作に位置づけられる。

『パレード』内の「恋恋風塵」登場シーン

会社に美咲から電話があったのは、夕方の六時前で、すでに仕事は終わっており、珍しく他に誰も出社していなかったので、ちょうど美咲が薦めてくれていた台湾映画「恋恋風塵」を近所のビデオ屋で借りてきて、会社の大画面テレビで観て帰ろうかと思っていた時だった。

『パレード』(p.243)

これは伊原直輝の章のワンシーンです。
直輝が映画配給会社で働いているところに、元カノの美咲から連絡がありました。
このあと二人は一緒に食事を取ります。
別れてからも月に二、三度は顔を合わせる関係です。
二人は映画が共通の趣味だったのかもしれません。
そうでないと、なかなか彼女からこのような渋い映画は薦められないでしょう。

吉田修一作品とのつながり

上京という設定。
スケザネさんの本にあるとおり、都市と田舎の行き来があることによって、そこに物語が生まれます。

以上で、「恋恋風塵」については終わります。

少しずつここらへんからアジアの映画が増えていきそうです。
吉田修一さんの関心もそちらに移っていったのでしょうか。

それでは、読んでいただき、ありがとうございました。

画像の出典:映画ドットコム「恋恋風塵」

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