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【映画#94】「ライフ・オブ・パイ」『怒り』より

こんにちは、三太です。

録りためていた「どうする家康」を全て見ることができました。
くたばる秀吉、なかなかすごかったです。
茶々の裏側も徐々に明らかになってきましたね。
年末に向けてどのようなラストになっていくのかが楽しみです。

では、今日は『怒り』に出てきた映画、「ライフ・オブ・パイ」を見ていきます。
『怒り』に出てくる唯一の映画です。


基本情報

監督:アン・リー
出演者:パイ・パテル (スラージ・シャルマ)
    カナダ人小説家(レイフ・スポール)
    ママジ(エリ・アルーフ)
上映時間:2時間6分
公開:2012年

あらすじ

大人となったパイから小説家の男が話を聞くという形で始まる額縁構造の物語。
そこではパイの人生が語られます。
パイはインドに生まれ、父親が経営者で、その父が経営する動物園で育ちました。
パイは本名をピシンといい、その名のため幼少時にいじめられます。(ピシンはおしっこみたいな意味がありました)
そこで通称をパイとし、それはπでもあり、彼は円周率を覚えることで伝説となります。
また、パイはヒンドゥー教、キリスト教、イスラム教を信仰していました。
そんなパイが家族でカナダに移住することとなり、その途中、船が転覆します。
なんとかボートに乗って一命をとりとめたパイでしたが、売るはずだった動物であるトラ、通称リチャード・パーカーと一緒に漂流することになります。
パイとトラはどのような漂流生活を送るのでしょうか。


                    トラとパイ

設定

・宗教
・神秘
・漂流

感想

額縁構造なのでパイが途中、死ぬことはないんだろうなという安心感はありました。
それにしてもパイはたくましいです。
自分だったら、家族とも離れ、トラと一緒で、全然救助を見込める状況ではなかったら、すぐにあきらめてしまいそうです。
しかしパイの場合はトラへの緊張感がむしろ生命力の源となっていました。
また信仰心の篤さと知恵も彼を支えます。
神様、円周率の不思議、トラをはじめとした動物と人間のつながり、そしてパイ自身の信じられないような話・・・
これらからも分かるように、まさに神秘を描いた映画なんだと思いました。
オープニングに出てくる動物園の映像がとても瑞々しくて、美しいです。

水澄んで神秘に出会うトラと僕

その他

・ママジという逆三角形の見事な体をした人物(パイのおじさん?)がユーモラス。

・ちょいちょい日本人や日本のものが出てくる

・ウィキペディアより
→ヤン・マーテルの2001年の小説『パイの物語』を原作とした、2012年のアメリカ合衆国の3D冒険映画

→アン・リー監督はこの作品で第85回アカデミー賞監督賞を受賞。

『怒り』内の「ライフ・オブ・パイ」登場シーン

北見の提案に笑顔で頷いた美佳が駅の方へ歩き出す。
メールで相談した結果、『ライフ・オブ・パイ』という難破した船に乗っていた少年とトラが漂流する映画を観ることになっていた。
(中略)
その後、新宿で観た『ライフ・オブ・パイ』はなぜか北見の気持ちをざわつかせた。少年とトラが一隻のボートで漂流するファンタジーだと思えばいいのだが、まるで自分が実際に漂流しているような絶対的な孤独を味わってしまい、「面白かったね」と美佳に声をかけられても笑顔さえ浮かべられなかったのだ。
まだ五時前で夕食には早かった。新宿の雑踏と映画の中で少年が漂った大海が重なり、北見は居心地の悪さを感じていた。

『怒り』(下巻 pp.55-56)

北見というのは八王子の夫婦殺人事件を追う警察官です。
彼は美佳という素性のほとんどわからない女性との間に関係がありました。
その美佳と一緒に見た映画が「ライフ・オブ・パイ」です。
『怒り』の中では結局、北見は孤独の中を漂流し続けるんだと思います。
けれども、パイと同じように、北見の人生にはきっとその孤独も含めて聞いてくれる人が現れるんじゃないかと映画とつなげれば考えられます。
そういう意味で、ここで映画が使われることにより、作品に深みが増していると言えると思います。 

吉田修一作品とのつながり

・一人の男の人生を描くという点では、『国宝』と通じます。

以上で、「ライフ・オブ・パイ」については終わります。
動物をはじめ、神秘に満ちた作品でした。

それでは、読んでいただき、ありがとうございました。

画像の出典:映画ドットコム「ライフ・オブ・パイ」

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