【教育 本#6】工藤勇一『校長の力』
こんにちは、三太です。
このnoteでは「吉田修一さんの作品をもとにした映画ガイド」を作っています。
もちろんこれからもそこが軸になるのですが、中学校教員ということもあり、仕事のベースは当然「教育」にあります。
そのため「教育」関係の本を読んだり、「教育」について考えたりすることは普段からたくさんあります。
せっかくならそれもアウトプットしてみたいなと考えました。
月に1本ペースぐらいで「教育」に関する記事(主に本のまとめになると思いますが)をあげていこうと思います。
今回はその6回目になります。
では、こちらの作品を読みます。
著者の工藤勇一さんは教育界ではかなり有名な方で、これまでも何冊かご著書を拝読してきました。
今回読んだ『校長の力』は書店で見かけて、面白そうだったので即購入して、すぐに読み切りました。
校長になろうと思っているわけではないですが、校長について知ることは今の自分にも損ではないかなと思ったのと、単純に知らなくて気になることも多かったので興味が湧きました。
要約
本書は校長の力は大きいからこそ、それを知り適切に運用していくことが求められるのではないかという問題意識で書かれています。
ただ、校長一般の仕事というよりも、(もちろんそういう内容もありますが)どちらかというと工藤先生自身の校長経験が軸になって書かれています。
本書は大きく次のような構成になっています。(目次とはまた違い、私の捉えです)
1 麹町中学校での改革
2 校長になるためのプロセス
3 校長になってどのような教育を行うのか
また各章の最後には「コラム 校長の先生」というページがあり、工藤先生の学びの履歴が見えて参考になります。
感想
本書を読んで一番感じたのは、工藤先生にやりたいことへの明確なビジョン(理想)があるということです。
定期考査や固定担任制度の廃止という麹町中学校での改革は生半可なものではなく、(想像するだけで色々と大変)相当の覚悟がいるものであり、きっとその覚悟を生み出す理想への思いがあるんだと思います。
それはおそらく「教育によって、市民一人ひとりが当事者意識を持ち、この地球で平和に、持続的に暮らしていく力を身につけさせること」なのかなと思います。
「当事者意識を持たせること」は本書でも折に触れて出てきますし、例えば「僕自身は、学校とは『人間が社会の中でより良く生きていくことができる力をつける場』だと考えています」(p.46)という記述も出てきます。
工藤先生に教育に対する理想があるので、本当はこうあったらいいのになという話も多いです。
例えば、何かをやるには校長の任期が短すぎるということや(普通同一校で校長の任期は2年か3年であり、6年間麹町中学校で働いた工藤先生のケースは珍しい、)(p.131)や学級活動にはもっと自治的な学びの色合いがあった方がいいということ(p.242)です。
こういう点は現状への問題提起となっていると思います。
普段あまり触れない領域という点で興味深かったのは教育委員会の話です。
学校を運営する土台はヒト、モノ、カネ(p141)で、その権限がどこにあるのかを教育委員会などもまじえながら(あくまで東京都の例ですが)書かれています。
都道府県教育委員会と市区町村教育委員会の役割の違いもあって、勉強になりました。
一番面白かったのは議会で予算を通すための議員との関係性を作る必要があるという話で、工藤先生は教育委員会時代、これが上手くいっていたようです。
かなり今の自分とは遠い話ですが、予算(お金)が大事だというのは自分でもわかるので、(例えば、クーラーをつけるであったり、トイレを綺麗にするであったりはけっこう身近な問題)この議員との信頼関係の作り方の点はもっと具体的に知りたいなとも感じました。
今回は工藤勇一『校長の力』の紹介でした。
校長という存在を通して、教育について考えることができる本でした。
それでは、読んでいただき、ありがとうございました。