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【閑話休題#47】宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』

こんにちは、三太です。

今回はこちらの作品を読みます。

2024年の本屋大賞受賞作です。
以前から購入して積んでいて、本屋大賞を受賞されたのをいい機会だと考え、読もうと思いました。
また、それ以上に成瀬あかりというキャラがとても気になったというのもあります。

吉田修一さんの作品にも「横道世之介」というとても良いキャラがいます。
作品としても『横道世之介』『おかえり横道世之介』『永遠と横道世之介』とシリーズ化しています。
また、吉田修一さんの好きな映画「男はつらいよ」にも寅さんというとても良いキャラがいます。
これら天から降りてきたような素晴らしいキャラクターのつながりを感じ、読んでみることにしました。

『成瀬は天下を取りにいく』は2023年の3月に刊行された本です。
続編も発売されています。


あらすじ

滋賀県出身、中学校2年生、14歳の成瀬あかりの成長を通して描かれる6つの短編
成瀬の視点もありますが、どちらかというと親友の島崎みゆきや、同級生の大貫かえでなど成瀬の周りにいる人物から成瀬の人物像が浮かび上がってくるようなつくりになっています。
短編を通して、成瀬の年齢も上がっていき、中学校を卒業して、滋賀県の膳所(ぜぜ)高校に進学します。
成瀬は言うことのスケールが大きく(「200歳まで生きる!」)、地道な努力を惜しまず、でも学年で知られる変わり者。
成瀬のキャラも最高ですが、西部大津店の閉店エピソードをはじめ滋賀愛にも溢れた作品です。
マスクの着用やソーシャルディスタンスの話題など、コロナ禍も作品にじわりと影響を与えます。

感想

あらすじでも書きましたが、成瀬あかりの特徴を列挙していこうと思います。
・大津への愛がすごい
・言うことのスケールが大きい(「200歳まで生きる!」というような)
・達筆
・手品ができる
・学年でも知られる変わり者
・地道な努力を惜しまない
・小学生の頃からよく表彰されていた(=優秀)
・けん玉が得意
・膳所高ではかるた班に所属(膳所高は部活動のことを班活動というらしい)
・誰にも似ていない
・スマホを持っていない
・緊張を知らない

とりあえず本文に書かれているわかりやすい特徴を列挙してみました。
けっこう強烈というか、そもそも色んなことができるんですね。
また、いわゆる普通の人とはちょっと違うところを攻めている感もあります。
だからこそ小説の登場人物になるんだとは思いますが・・・。

また、何よりも成瀬の特徴を言い表す言葉として「人間くささ」というものがあります。
それは「ときめき江州音頭」に出てくる、自分で言ったことを途中でやめてしまうことを島崎にたしなめられるシーンから伺えます。
お笑いの頂点を目指すと言ってM-1に挑戦したけれど、4年でやめてしまう。
高校生の間にどれだけ髪が伸びるかを測るために、入学式で坊主にしたけれど、途中で散髪してしまう。
成瀬なりにはどちらにも理由はあるのですが、そういったところに「人間くささ」を感じました。(もちろんどちらかというと良い意味でです)
そういったところは世之介や寅さんにも通じるところかなと思いました。
ただすごいだけではなく、人間的なところも垣間見えるのがより多くの人を惹きつける魅力となっているんだと思います。

さきほども書いたのですが、この作品では、成瀬とその親友島崎がコンビを組んで、M-1を目指します。
そのため作中には、何度か漫才のかけ合いのようなセリフが出てきます。
それは漫才のネタを作っているのとほぼ同じという意味で、このような漫才のかけ合いの部分を具体的に書いていくのは作家としてとても挑戦的だなと感じました。

今回は宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』の紹介でした。
はじめから終わりまで成瀬のキャラを堪能しながらとても楽しく読むことができました。
続編も早く手に取って読んでみたいです。
 
それでは、読んでいただき、ありがとうございました。

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