歌舞伎座十二月大歌舞伎 第三部『猩々』(感想)
*この文章は2023.12にAmebloで投稿したものです
歌舞伎座、十二月大歌舞伎の第三部、一つ目の演目は『猩々』。
猩々
ジブリ映画『もののけ姫』に出てくる猩々とは、雰囲気が違う。
(倒れたアシタカを介抱するサンに、暗がりから石つぶてを投げて「置いてけ。オレたち人間喰う」と言ってくるアレ、なかなかのインパクト。)
歌舞伎舞踊の『猩々』は、水に棲む赤毛の獣。
ストーリーはごくさっぱりしている。
12月ですものね。
良い子に、サンタクロースならぬ猩々からのプレゼント。
さてさて。
『猩々』は、鮮やかな赤色の毛のかつら、金とオレンジ色の賑々しい衣装。
揃いの盃を持って、尾上松緑と中村勘九郎の二人の猩々が、緑色の酒壺の周りを舞う。
赤とオレンジと、金と、酒壺のグリーン。
そこに、
す、と持ち上がる真っ白な足袋。
勘九郎の猩々は柔らかく、伸びやか。
足も腕も、伸びたと思ったあとにもう数センチ先へ伸びるようなストレッチの効いた心地よさ。
松緑の猩々は、いい飲みっぷり。
踊りに詳しい方は、もっと詳しい感想をたくさん持たれるのだろうけど、ワタシにはとにかく、光り輝いて、まばゆいもの。
平和で美しく、尊い。
厳か、というほど遠くなくて、どちらかというとホァ〜と心がほどける温かさがある。(酒だけに?)
99年に、当時は辰之助だった松緑と、菊之助の『猩々』を観たことがある。
あのときの、はち切れんばかりの若さ溢れる松緑(当時は辰之助)もよかったが、歳を重ねて、霊獣の舞う異空間を若い人たちと創る静かな佇まいもいい。
見終わってからも、目にしたものの神々しさが、じわじわと胸にやってきて、長く残る。そんな『猩々』だった。
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