ききょう

歌舞伎など好きなものについて書かせていただきます。 小学生の子育て、更年期、母の罰(マ…

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歌舞伎など好きなものについて書かせていただきます。 小学生の子育て、更年期、母の罰(マザーフッド・ペナルティー)にもがく日々です。

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  • #歌舞伎

    歌舞伎の観劇感想、歌舞伎DVDの感想をまとめました

  • #映画感想#ドラマ感想

    映画、DVDの感想。ときどきドラマ感想も含みます

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    読書感想をまとめました

最近の記事

尾上右近の『華麗(カレー)なる花道』が届いた。ページをめくり始めて驚く。あれっ、写真集だっけ!? めくっても、めくっても、ばっちりキメたショットが続く。目次に辿り着くまで17ページ。…そっか、揚げ幕から花道すすんで、本舞台まで17ページか。さすがだわ。

    • 目が喜ぶ『神田祭』と『於久松色読販』 2024年 四月大歌舞伎 夜の部

      四月、歌舞伎座の夜の部を観てきました。 いやあ、眼福、眼福。 『於染久松色読販』 玉三郎の土手のお六、生で再び見られて嬉しい。 伝法な口調と仇っぽさに加え、凄味の増した強請り場が刺激的だった。 仁左衛門の鬼門の喜兵衛も、莨屋の場での登場の凄みといい、久作の災難を聞いてこれは使えるぞと油断なく光る目といい、恐ろしい。 莨屋の場面は、久作の話を聞いてお六と喜兵衛がわずかに視線を交わし、互いに企みがあると通じ合うところにゾクゾクする。 玉三郎のお六はDVD『お染の七役』も

      • 【ちょっと予習】歌舞伎『伽羅先代萩』

        『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』、通称《先代萩》。 1660年の奥州仙台藩伊達家で起きたお家騒動を題材にしたもの。 歌舞伎と浄瑠璃の演目では《伊達騒動もの》という分類で呼ばれるほど、これを題材にした多くの作品がある。 タイトルにキャラ(伽羅)の字が入っているのは、伊達の殿様が香木の伽羅の下駄を履いていたからだそう。 先代萩という部分については、仙台の萩大尽にちなんだ、という説、忠臣片倉小十郎が先君の愛した花を先代萩と名付けて庭に植えたから、といった説がある。(*1)

        • 2024年 四月大歌舞伎 歌舞伎座昼の部

          2024年4月、昼の部は組み合わせが興味深い。 継子、異母兄弟、嫁姑という距離を超えて、互いを思い遣り寄り添おうとする『引窓』。 舅と婿という距離が近すぎてぶつかり合い、凄惨な別れになる『夏祭』。 『双蝶々曲輪日記』 引窓  『引窓』は、与兵衛の機転により濡髪長五郎を逃がすまで、お幸を中心に主要な人物が互いに気遣い、血と義理の間で二転三転、結論を模索する話である、と思う。 この演目、お幸を中村東蔵で観られるのは嬉しい。 わたしにとって澤村田之助(6代目)と、中村東蔵は

        尾上右近の『華麗(カレー)なる花道』が届いた。ページをめくり始めて驚く。あれっ、写真集だっけ!? めくっても、めくっても、ばっちりキメたショットが続く。目次に辿り着くまで17ページ。…そっか、揚げ幕から花道すすんで、本舞台まで17ページか。さすがだわ。

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          【映画感想】『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』

          『ゴーストバスターズ/アフターライフ』の続編。 『アフターライフ』から3年後。フィービーは15歳、兄トレバーは18歳になっている。 前作『アフターライフ』が、あまりに完璧に、かつ上品に、初期作品をリスペクトしてエピソード満載で作られていたので、今作『フローズン・サマー』では、できることがなくなってしまった感は否めない。 それでも『フローズン・サマー』は、ゴースト退治、という娯楽性の中で、容赦のない人間の儚さを俳優の肉体をもって表したり、フィービーの葛藤を邪神復活へ織り込ん

          【映画感想】『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』

          【読書感想】歌舞伎と日本人(中村義裕)

          歌舞伎がすごい、歌舞伎が好き、歌舞伎って面白い!的な書籍ではない。 演劇評論家、日本文化研究家の著者が、歌舞伎の歴史と、歌舞伎を人々がどう受け止め、繋いできたのか書いている。 「歌舞伎入門」とか、歌舞伎役者による歌舞伎の解説本より、もう少し広い枠と俯瞰で、江戸以前から現在まで、歌舞伎の歴史を整理したもの。 歌舞伎に多少は興味もあり観たこともある人が、あらためて歌舞伎や周辺状況を知るのに合っていると思う。 一つずつの話題が長くないので細切れの時間でも読みやすい。読み終え

          【読書感想】歌舞伎と日本人(中村義裕)

          オンデマンド放送がないのが残念! WOWOW コクーン歌舞伎『夏祭浪花鑑』

          *この記事は2023年11月にAmebloに投稿したものを加筆修正しています。 これ、すごいので機会あったら是非ご覧いただきたい、と思ったのだけれど、WOWOWオンデマンドでは配信がないことに翌日になって気づいたという迂闊。 21年の渋谷コクーン歌舞伎、『夏祭浪花鑑』。 まず、団七九郎兵衛の義父で殺され役の、嫌なやつ「義平次」を演じる笹野高史に、脱帽。 勘三郎のときもこの役をしているからかもしれないが、あまりに馴染んでいて驚く。 これまで見た中で最強、強烈壮絶な義平

          オンデマンド放送がないのが残念! WOWOW コクーン歌舞伎『夏祭浪花鑑』

          【ちょっと予習】歌舞伎『夏祭浪花鑑』

          2024年4月、歌舞伎座の昼の部。『夏祭浪花鑑』が上演されますね。 劇場へ行かれる方も、配信を待つ方も、(一緒に?)楽しみましょう! 手持ちの書籍などで予習してみました。お役に立てば幸いです。 作者 並木千柳、三好松洛、竹田小出雲 の合作。 初演情報・・・このあたりは名作ばかり 1745年(延享2年)、竹本座の人形浄瑠璃で初演。同年中に歌舞伎で上演された。 なんと、翌年からも人形浄瑠璃の名作誕生が凄まじい。 1746年『菅原伝授手習鑑』、 1747年『義経千本桜』

          【ちょっと予習】歌舞伎『夏祭浪花鑑』

          すまじきものは宮仕え? 読書感想『義経じゃないほうの源平合戦』白倉盈太

          *タイトル画像は東北の某旅館に飾られていた絵。書籍内容とは関係ありません。 読み始めたら続きが気になって、あっという間に読んでしまった。 源頼朝と義経の間に挟まれた兄弟、源範頼。 2人の間で、脂汗と冷汗の連続。 苦しみながら、源平合戦を生き抜く範頼の目線で物語が進んでいく。 文章が現代語なので分かりやすいし、義経をはじめ登場人物の描写が軽やかでイメージしやすい。続きが気になってどんどん読んでしまった。 描かれるのはタイトル通り「源平合戦」までで、義経が死んだところで

          すまじきものは宮仕え? 読書感想『義経じゃないほうの源平合戦』白倉盈太

          Superflyのライブで涙涙、という話

          本日3/21、ツアーファイナルがWOWOWで生中継される、Superfly。 先日、初めてライブに行くことができた。 よる年波か、涙もろくなって、盛り上がる曲だろうと何だろうと、しみじみと喜びで涙がこぼれた。 十数年前、「愛をこめて花束を」をCS放送で聴いてすぐにCDを買った。 今どうしてるかな?という緩い頻度で恐縮ながら、結婚しても子供ができても、ずっと聴いてきた。 そういう人が、遠目ではあるが同じ空間にいて、動いて、歌っているのだと思うと、奇跡のようだなと思えたのだ

          Superflyのライブで涙涙、という話

          消費者庁のリコール情報サイトを見ている話

          平日は、忘れなければ毎日、消費者庁のリコール情報サイトを見ている。 昨年、このサイトで見てなんとなく覚えていた商品と同じものを、夫が実家からお土産(のおすそ分け)だともらってきたことがあった。 商品のサイトでロット番号を調べて、回収商品でないことを確認してから食べた。 リコール情報サイトを毎日見ていると、その書き方に、書き手というか企業側の姿勢、温度感があらわれる気がして興味深い。 備考欄に注目している。 回収の理由として、原因、発覚の経緯、手元にある場合の注意点を

          消費者庁のリコール情報サイトを見ている話

          データや印象から「人」を復元できるか。 読書感想『本心』 平野啓一郎

          途中まで、読むのが辛かった。 近未来の話、と表紙の扉にあったが、2040年代の入口、と本文にはあって、思いのほか近々の未来だったからだ。 主人公の母親は、ロスジェネ世代。出産、子育ての中で正社員を退職し、シングルマザーで苦労して子供を育てた。その彼女が、70歳の少し前という設定である。 まさにその母親と同じ世代のわたしにしてみれば、わたしより遥かにきちんと生きてきただろう彼女と、彼女の30歳の息子である朔也が、現在よりさらに苛酷な格差社会で、今にも押し潰されそうに生きて

          データや印象から「人」を復元できるか。 読書感想『本心』 平野啓一郎

          わたしの半分は他人でできているらしい。 読書感想『私とは何か』平野啓一郎

          *タイトル画像は、大橋ちよさんのイラスト いきなり、読書感想でない話で恐縮ですが、「平野啓一郎」って響きも字面もすごく良いですよね。 わたしにとって同じ部類に「吉井和哉」があります。 『私とは何か』。タイトルの良さももちろん、内容も興味深かった。 生きづらいとか生きることに向いてないとか、他人の側面が気になるとか、そういうものが、とても楽になった。 想像すらできなかったほど斬新な考え方というわけではなく、これまでも多くの人がうっすら、ぼんやりと、感じたこともあったのでは

          わたしの半分は他人でできているらしい。 読書感想『私とは何か』平野啓一郎

          ヒーローはどこにいる? 映画『ピンポン』(2002年公開)/アニメ『ピンポン THE ANIMATION』(2014年)

          ヒーローはきっと、努力した人の前にしか現れない。 そんな気がする。 天才少年「ペコ」、ストイックな元いじめられっ子「スマイル」、卓球の権化「ドラゴン」。 ペコは自分のために、スマイルは自分以外のために、ドラゴンは周囲が期待する自分の姿のために卓球をしている。 他の登場人物も、それぞれ違う思いや背景を持っている。 生い立ちも環境も違う者たちが、卓球というひとつのルールの前で向かい合う。 映画『ピンポン』を初めて見たのはDVD。 知人から、「原作もいいが、映画もいい。AR

          ヒーローはどこにいる? 映画『ピンポン』(2002年公開)/アニメ『ピンポン THE ANIMATION』(2014年)

          市川雷蔵『眠狂四郎 無頼剣』(1966年公開)

          市川雷蔵の狂四郎シリーズはほとんど見ている。 その中で、他と違う色を感じるのが、『無頼剣』。 敵役の愛染(あいぜん)を演じるのは、天知茂だ。 天知茂の芝居は、完成している。 視線の投げ方、抑制の効いた声の調子、雄弁な沈黙。 明かりに浮かぶ三白眼の迫力。 狂四郎シリーズは、美しく妖しい女性が出ることが多いのだが、この作品は、天知茂の苦みばしった男ぶり、渋い歌声など、いつもと少し違う層が喜びそうな要素が勝つ。 主君の復讐のために非情になる道を選ぶ愛染は、リーダーシップが

          市川雷蔵『眠狂四郎 無頼剣』(1966年公開)

          市川雷蔵『破戒』(1962年公開)

          市川雷蔵が演じる瀬川という教師は、映画の中でカラリと爽やかに笑うシーンが一つもない。 嘆いて苦しんで恐れ怯え、悔いて泣いている。 しかしそのどれも、全く見苦しくない。 雷蔵の目から、あふれてぽろりぽろりと落ちる涙のなんという美しさか。 『炎上』と同じくモノクロ作品なのだが、市川崑監督らしい、遠景というか引きの画像に風情があり、雪の冷たさや、牛の匂いまで感じられそうな映像だ。 配役もドンピシャだ。 部落出身の活動家である猪子蓮太郎に三國連太郎、その妻が岸田今日子。 瀬川の同

          市川雷蔵『破戒』(1962年公開)