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「習え、習え。」(武部源蔵) 【書道の話】

子どもの夏休みの宿題をきっかけに、ほぼ毎日30分、字を書いている。

タイトルの「習え、習え。」は、歌舞伎『菅原伝授手習鑑』の「寺子屋」の場から。
寺子屋のあるじで、元は菅丞相(菅原道真)に仕えていた武部源蔵のセリフである。

菅丞相はライバルの讒言によって左遷されてしまい、武部源蔵は、菅丞相の子・菅秀才かんしゅうさいを匿っている。敵方の詮議は厳しく、菅秀才を差し出せと迫られている。

菅秀才を助けるには、代わりに他の子どもの首を討って差し出すしかない、と源蔵は悩みながら家へ戻ってくる。
寺子屋に集う子どもたちの顔をあらためて見る。
「…いずれを見ても山家やまが育ち。」
菅秀才の身代わりに出来そうな、高貴らしく見える子はいない。

このあと源蔵が、苦悩と落胆の中で教え子たちに促す。「習え、習え。」と。

作品中の名セリフでもなんでもないのだが、5代目中村富十郎の、落胆しながらも教え子への親しみと情のあるセリフがずっと記憶から消えない。

寺子屋でちょうど習字をしているのと、武部源蔵も菅丞相から筆法(奥義みたいなもの?)を伝授される書の名手というのも、記憶に残っている理由かもしれない。

良い書を「見る」のも勉強の一つとは思うが、何か書きたいのなら「書く」練習からは逃れられない。

書き順が楷書と異なる字、というお題。
私、香、珠、迷、求、述。

続けていると、難しいことに違いはないのだが、テキストを買った時には、見るなり「無理ムリむり…」と白目になったお題でも、やってみるかという気持ちになる。

初めに見たときは、「無理無理。これどうやって書いてるの?」状態。


相変わらず、目一杯。
余白を意識。しかし月が水に映ったみたいにヘロヘロしている。

書けない。
歌舞伎の題名を書いてnoteのタイトル画像にするなんて、程遠い。
しかし、耳に富十郎の「習え、習え。」が甦ると、やっぱり書きたいのである。

山家育ちだけど頑張ります。