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うちの本棚【歌舞伎・文楽・能】

観劇のために集めた本の紹介です。

『歌舞伎ことば帖』 【うちの本棚】#歌舞伎

読書感想でなく、本棚にある歌舞伎関連書籍について、どんな本なのか記録しつつ紹介するものです。 基本情報 表紙 特徴 先に【うちの本棚】として書籍紹介した『歌舞伎のキーワード』の姉妹書。 『歌舞伎ことば帖』も、歌舞伎に関する言葉についてその使われ始め、語源を探って解説していく。 目次をご覧いただくと分かるとおり、取り上げてあるワードの数は多くない。その分、ひとつずつが深く掘り下げられていて、実際の舞台の華やかさとはまた違う部分で歌舞伎に興味を惹かれる本。 「名題・名

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写真集『ザ・歌舞伎座』 【うちの本棚】#歌舞伎

読書感想でなく、本棚にある歌舞伎関連書籍について、どんな本なのか記録しつつ紹介するものです。 基本情報 表紙 特徴 2001年1月発行で、わたしが持っているのは2001年2月の第2版。 坂東玉三郎を案内役に、篠山紀信が歌舞伎座を撮ったもの。 建て替え前の歌舞伎座なので、歌舞伎座の上に青い空が広がっている写真もあったりして、とても懐かしい。 《阿古屋》、《鰯売恋曳網》、《天守物語》、《加賀見山再岩藤》といった演目のワンシーンのほか、奈落、スッポンといった舞台機構、大

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『坂東玉三郎の宇宙』 【うちの本棚】#歌舞伎

読書感想でなく、本棚にある歌舞伎関連書籍について、どんな本なのか記録しつつ紹介するものです。 基本情報 表紙 特徴 わたしが持っているのは1998年の第2版。 舞踊十六景では写真のほかに歌詞が載っており、最後に石橋健一郎による作品解説がついている。ここの写真は、写真集ではなく、舞踊に関する身体の形の見本といった雰囲気。 本の後半には、国内外の芸術家から玉三郎の芸術に関する文章が寄せられていて、本と同じタイトルで「坂東玉三郎の宇宙」として三浦雅士(文芸評論家、舞踊研

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『天才と名人 中村勘三郎と坂東三津五郎」 【うちの本棚】#歌舞伎

読書感想でなく、本棚にある歌舞伎関連書籍について、どんな本なのか記録しつつ紹介するものです。 基本情報 特徴 2012年12月、18代目中村勘三郎が亡くなった。 2015年2月、10代目坂東三津五郎が亡くなった。 建て替えのための歌舞伎座閉場は2010年4月、”新生”歌舞伎座のこけら落とし公演は2013年4月開始だった。 この本には、勘三郎は3歳、三津五郎は6歳から、亡くなるまでたくさんのエピソードが詰め込まれている。溌剌とした勘三郎の声が聞こえてきそうだし、穏やかで

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#歌舞伎

歌舞伎の観劇感想、歌舞伎DVDの感想をまとめました

【観劇感想おまけ】地口(ダジャレ)行灯_猿若祭2月大歌舞伎

2025年2月、猿若祭の夜の部の観劇で、歌舞伎座の3階の行灯を撮ってきたので残しておきます。 以上です!

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猿若祭2月大歌舞伎 歌舞伎座 夜の部「文七元結」【観劇感想】

2025年2月、歌舞伎座 夜の部を観てきました。 長くなったため、《阿古屋》、《江島生島》とは分けて記載しています。 《人情噺文七元結》中村勘九郎の長兵衛、中村七之助のお兼、中村勘太郎のお久、中村萬壽のお駒、中村鶴松の文七、尾上松緑の鳶頭、中村芝翫の和泉屋清兵衛。 まず、全体として素晴らしいと感じたのは、黙阿弥的な世話物にならず、ハッキリと、落語の三遊亭圓朝が得意とした「人情噺」の歌舞伎であったこと。見ながらも落語を聴いているような軽妙さ、テンポの良さ。役者みんなが、ひと

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猿若祭2月大歌舞伎 歌舞伎座 夜の部「阿古屋」、「江島生島」【観劇感想】

2025年2月、歌舞伎座 夜の部を観てきました。 《阿古屋》、《江島生島》、《人情噺文七元結》。 こういう取り合わせを待っていた。猿若祭バンザイ。 長文になってしまい、《文七元結》は記事を分けております。 《阿古屋》《壇浦兜軍記》の三段目にあたる。源氏による平家の残党狩りは厳しく、悪七兵衛景清の行方を知っているだろうと遊君阿古屋は取り調べを受ける。 秩父庄司重忠が、拷問の道具として用意したのは、琴・三味線・胡弓だった。景清の行方は知らないという阿古屋に、嘘があれば音が乱れ

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eプラスで配信中★初春文楽公演 第三部《本朝廿四孝》十種香・奥庭

国立文楽劇場 初春文楽公演がeプラス(Streaming+)で配信されている。 1月に行われた、国立文楽劇場開場40周年記念 吉田和生文化功労者顕彰記念公演の模様である。 配役表はこちら。 前回の配信(2/2まで)で、第三部《本朝廿四孝》十種香・奥庭 を視聴した。 奥庭があまりに面白く、夢中で何度も視聴しているうちに他の部を購入しないまま終わってしまった。 錣太夫による十種香も面白いが、芳穂太夫の奥庭は、八重垣姫のセリフの柔らかさと、地の語りのメリハリが心地よい。奥庭は

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#映画感想#ドラマ感想

映画、DVDの感想。ときどきドラマ感想も含みます

それを言っちゃア、おしまいよ_映画『首』 2023年公開【映画感想】

*ネタバレとなっております。ご注意くださいませ* 北野武監督作品。WOWOWで視聴。 始まって、まず表示されるのがタイトル文字「首」。 うわぁ、首。 斬り首にしか見えない。 北野作品は昔いくつか見ているのだけど、ストーリーよりも、憶えているのは絵、字、色調。今回も、冒頭の「首」の文字の凄さと、次の川のシーンで色調の美しさに圧倒される。滴るような森の緑、川や城内の翳を作る藍色、文字や血の赤。そして、ちかごろ大河ドラマでも見られない、ド迫力の合戦シーン。豪華な俳優が血まみ

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分断から、共栄の未来へ_『モアナ2』/『ライオン・キング -ムファサ-』2024年公開【映画感想】

2024年12月に公開され、そろそろ公開が終わりそうな2作品。どちらも吹替版で鑑賞。 扱っているテーマが類似しているので、まとめた感想で失礼します。 *ネタバレとなっています* 『ライオン・キング -ムファサ-』映画『ライオンキング -ムファサ-』(以下『ムファサ』)は、映画『ライオン・キング』で主人公だったシンバの父で、王だったライオンの物語。映画『ムファサ』の冒頭で、すでに成長したシンバの姿は一瞬出てくるものの、メインは、シンバの子に向かって周囲が昔話をして、ムファサ

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ホラーの手法がハマっている 『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』 2024年公開【映画感想】

まもなく公開が終わってしまいますが、感想を残させてください。 銭天堂は 幸運なお宝(小銭)を持った人の前にだけ現れる、ふしぎな駄菓子屋「銭天堂」。売られているのは、悩みに効く魅力的なお菓子ばかり。でも、ただ食べればいいというわけではないようで…。というお話。大人気の児童小説で、TVアニメもEテレで放送されている。 映画のはじまりは、小学生の中に静かに広がる奇妙な駄菓子について、教師(大橋和也)が不審を抱いて調べていく、という形。監督は『リング』シリーズや『事故物件 怖い

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アニメ第44話「ヒグマ男」を見て『ゴールデンカムイ』の印象が変わった 【ドラマ感想】

WOWOWドラマが好きで、去年はドラマ『ゴールデンカムイ』を見ていた。登場人物のキャラの濃さから、アニメも気になって、そちらも配信サービスで見ていた。原作漫画は読んでいない。 アニメは、第四期まで放送されている。最終章の制作が決定しているらしい。 アニメ第四期に「ヒグマ男」というエピソードがある。とても興味深い話だったので、感想を残させていただきたい。 *ネタバレとなっております。ご注意ください* ゴールデンカムイはアイヌから奪われたという埋蔵金を探す物語である。

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字を書きたい

いつか歌舞伎の題名を自筆してnoteタイトル画像にしたい、という野望を持って練習します。(勘亭流を習っているとかではありません。)

よい先生との出会いは宝 【書道の話】

お疲れ様です。 子どもの夏休みの宿題をきっかけに、ほぼ毎日30分、字を書いている。 …いや、実は12月はけっこう忙しくて、サボり気味だった。 お手本は、市販のもの。 こだわりがあったわけではなく、道具を揃えたお店で見かけて、好きな字だなと思ったので購入。 続けてみると、見事に「じゃあ先のお題を踏まえて」、次のお題に行くという形であることに気づく。 過去の記事で、多少がんばってみても苦手なお題は飛ばすことがあると書いた。その後、その自分の怠惰によって首が締まってきている、

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変な書き初め 【書道の話】

あっという間に、1月も下旬。 お正月に出かけた先で、「書き初めをしよう!」というイベントを見つけた。 道具はみんな貸してくれるというので、家族で参加。 セットされているのは半紙なのに、どう見ても条幅用と見える筆が置かれているとか、文鎮かるッ!とかは一切、気にせず書いてみる。 他の家族もいるので、「みんな何を書いてるんだろ?」とキョロキョロ、ワイワイ。寺子屋ってこんな感じかしら。 わたし(だけ)は、普段せっせと筆で遊んでいるが、家族で並んで書く機会は滅多にない。そこで、

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変わっていく、の面白さ 【書道の話】

子どもの夏休みの宿題をきっかけに、ほぼ毎日30分、字を書いている。 いつか、歌舞伎の題名を書いてnoteの記事のタイトル画像にしたい、という野望があるのだが、まだまだ先。 市販の墨液を使って書いている。 このごろ、練習の終わり時間が近くなったら、墨液を足さず、一滴ずつ水を加えて薄めていく。 書いたあと、乾いていく過程での表情の変化が面白い。 墨の付き具合で、不均一なグラデーションみたいに乾いていく。 原液でそのまま書いたのが、こちら。 空の色でも海の色でも、そして墨の

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「習え、習え。」(武部源蔵) 【書道の話】

子どもの夏休みの宿題をきっかけに、ほぼ毎日30分、字を書いている。 タイトルの「習え、習え。」は、歌舞伎『菅原伝授手習鑑』の「寺子屋」の場から。 寺子屋の主で、元は菅丞相(菅原道真)に仕えていた武部源蔵のセリフである。 菅丞相はライバルの讒言によって左遷されてしまい、武部源蔵は、菅丞相の子・菅秀才を匿っている。敵方の詮議は厳しく、菅秀才を差し出せと迫られている。 菅秀才を助けるには、代わりに他の子どもの首を討って差し出すしかない、と源蔵は悩みながら家へ戻ってくる。 寺子

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#読書感想

読書感想をまとめました

【読書感想】落語にみる 江戸の「悪」文化

2025年2月は歌舞伎座で《人情噺文七元結》が上演される。 《文七元結》は三遊亭圓朝の落語ということで、予習の中で、読んだもの。 落語では、悪人は間抜けで憎めない。泥棒は、失敗する。 それは、盗みは罪が重かったので、成功してしまうのは笑えないから。 そして泥棒や賭博の話が多いのは、庶民の貧しさを表すものでもある。 江戸時代は十両以上を盗むと死罪、心中も「相対死」と呼ばれて重罪だったことなども交え、上のようなことが示されている。 興味深いのは、江戸城(日本橋)を挟んで多摩

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【読書感想】大江戸の色彩(城一夫)

江戸時代の浮世絵、焼物、織物についてそれらの色彩の特徴、評価の変遷などが書かれている。 わたしは配色やデザインにも疎いので、本の中で驚いたのは、作品や絵師ごとの配色例。 絵や着物を見るとき、「何が描いてあるか」に注目してしまうわたしにとって、「どう描いてあるか」を見るこの配色例は驚きだった。色彩感覚に優れている人には、こんなふうに見えているのか!という気持ち。 陰陽五行、年中行事に始まって、江戸の建物、絵、焼物、織物と幅広く色彩について載っているので、個別の絵師や作品が

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黙阿弥の作品が面白くない人へ。『黙阿弥の明治維新』渡辺保 【読書感想】

1997年の発行。手元にあるのは1998年の4刷。 歌舞伎の狂言作者、河竹黙阿弥に関する本。 この本は黙阿弥の伝記ではない。 河原崎座の立作者となっていた2代目河竹新七が、4代目市川小団次と出会って、その作風が変化し、さらに明治維新を越えてどう変化したか。黙阿弥が作品に込めたものが何だったか。そこに重点を置いて書かれている。 もしも、現在、歌舞伎で黙阿弥の作品を見てもそれほど面白くない、と感じるのならば、読んでみると良いかもしれない。 ここには、黙阿弥狂言の本来の味わ

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【読書感想】『渡辺崋山』ドナルド・キーン(訳:角地幸男)

2007年発行、新潮社。 田原藩の家老で、写実性の高い肖像画で評価の高い画家でもあった、渡辺崋山。崋山の生涯を追いながら、そのとき描かれた絵について解説した本。 渡辺崋山は、江戸時代後期の人である。 三河国(現在の愛知県東部)渥美郡田原藩に属していた父のもとに、渡辺崋山(登)は江戸で生まれた。 読み始めると、この人の人生は世界名作劇場レベルの起伏。 武家の良い家柄に生まれたけど極貧のため、絵を描いて生計の足しに。 絵が人に知られるようになってきたが、今度は藩の仕事が忙

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