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経営者同士のやりとりを観て、ティール組織へのシフトの要諦は「やり方」ではなく「あり方」だと改めて感じた話

はじめに

本記事で触れられている手放す経営アカデミアは2023年1月時点で名称が手放す自分ラボラトリーに変わっています。)

手放す経営アカデミアというオンラインコミュニティがあります。

アカデミアは、3人以上の組織の経営者を対象としており、その経営者が、進化型の経営スタイルを自ら実践できるような機会と環境を提供しています。

先日、そこで外部の方も参加可能なオープンな勉強会が開催されました。

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今回の勉強会では特別ゲストとして、谷川クリーニングの代表である谷川さんがご夫婦で出演されました。

【企業情報】

有限会社谷川クリーニング
創業:昭和44年10月
従業員数:52名
事業内容:家庭用クリーニング、各種特殊加工、特殊洗浄、リネンサプライ
営業店:直営店17店舗
本社所在地:茨城県神栖市 

当日は、独自の考えに基づき経営を実践され続けた結果、結果として書籍「ティール組織」で見られるような特徴を持つ組織を築かれた谷川さんにその経験を惜しみなく分かち合っていただく時間となりました。

実践勉強会で印象に残ったシーン

特に印象に残ったシーンがあります。それは、質疑応答でのことでした。
 
参加されていた数人の経営者の方からリアルな質問が投げかけられ、それに対して谷川さんが答えた後のことです。
 
「・・・、」
 
その方々は絶句とは言わないまでも、聴いたあとに息を飲むような刹那の沈黙が生まれたように感じられました。

それだけ、密かな衝撃を質問者の方が感じていたのが伝わってきたのです。
 
実際に経営者の方々も「やり方」を含んだ「あり方」の領域の話であることを感じ取られたような発言をされていました。
 
この一連のやりとりを見た時に思い出したことがあります。
 
それは、「ティール組織」とは何か?という、そもそもの問いに関することでした。
 
「ティール組織」とは何か。著者であるフレデリック・ラルー氏は書籍の中でこのように述べています。

「ティールというパラダイムで運営されている組織」

「ティール組織」p87参照

ティール組織とは、F・ラルーが人間の意識の発達段階を参照に組織の進化の変遷を辿っていく中で、1970年以降に世界各地で現れ始めた、それまでとは全く異なる体制で運営されている組織群の総称としてつけたものです。
 
意識の発達段階とはどういうものかというと、人間の意識は段階的に発達していくという観点であり、例えば日本ではロバート・キーガン氏の提唱する発達理論が有名です。彼が提唱するものは大きく分けると5段階として紹介されています。

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さらに詳しく知りたい方はこちらのnoteをご覧ください。

この発達段階を考える時に興味深いのは、発達理論の世界では、「自分よりも上の意識段階を理解することができない」という話です。

建物のそれぞれの階から見える景色は多様ですよね?
つまり、階が違えば、見えてくる景色も異なってくるということです。
 
上の階の人は、下の階の人が見えている景色がわからないけれど、下の階の人が見えているものも含めて、より広く世界を見渡していますよね。
 
「組織も人も変わることができる! なぜ部下とうまくいかないのか 「自他変革」の発達心理学/加藤洋平著/日本能率協会マネジメントセンター」P45より引用

つまり、ティール組織の文脈に置き換えて捉えると、ティールパラダイムの人が捉えている世界をグリーンやオレンジパラダイムの人は理解することができないということです。(厳密には、上記の建物のような明確に階が違うというのではなく、主だった重心がどこにあるかという話なので、0か100かではなく、もっとグラデーショナルだと思った方が良さそうです。)
 
また、この話に関連してもう1つ大事なことは、

【発達理論は単純な上下を判断するために使われることを良しとしない】

発達理論のレベル分けと一般的なランクづけとの違い
(1)一般的なランクづけ
ランクの高いほうが良く、ランクが低いことは悪いという前提があるため、抑圧や差別が生じうる。
 
(2)発達理論のレベル分け
抑圧と差別を認めない。各意識段階が持つ固有な価値を尊重する。

「組織も人も変わることができる! なぜ部下とうまくいかないのか 「自他変革」の発達心理学/加藤洋平著/日本能率協会マネジメントセンター」参照。

ということです。つまり、ティールパラダイムの方が偉いとかそういうことではないのです。フェーズや目的によって効果的なパラダイム・組織運営の仕方は異なるということです。
 
話を基に戻しますと、谷川さんと参加者の方々のやりとりを通じて、
パラダイムの違いを垣間見たのと、谷川さんのあり方に触れて経営者の方が感化されていたように感じたのです。
 
私はこの「感化」というのはすごく大事なことだと思っています。
 
私たちは何かを学ぶときに分かった・理解できたということを
重視してしまいがちですが、ことパラダイムに関することは分かるという階段を登っていっても到達することはできず、必ず「感じる」ことが必要になると思っています。
 
これは、「英語を話せるようになる」ことに置き換えると分かりやすいのではないでしょうか。
 
英語を話せるようになる一番の方法は、英語がたくさん聴ける、かつたくさん話さなければならない環境に身を置くことです。つまり、日本人以外と極力過ごすという条件つきの留学ですね。
 
一方で、いくら単語を覚えたり、文法を理解したとしてもその延長線上には英会話ができる私は待っていません。
 
英語で会話している状態を感じ続けることが重要なのです。
  
これと同じようにティール組織のやり方だけを真似ても、持続可能なティール組織は実現していきません。なぜならば、やり方ではなくあり方そのものに関するテーマだからです。

手放す経営ラボ所長、坂東さんのCase

自らも進化型の組織マネジメントを実践している、
手放す経営ラボ所長の坂東孝弘さんが、
今でいう進化型組織の経営に初めて触れたのは2016年はじめの頃でした。
 
当時、会社の現状に行き詰まり感を感じていたことも相まって、
そこから興味を持ちリサーチを続けていきました。

ある時、進化型組織として世界的に有名なセムコ社の代表である
リカルド・セムラー氏の来日講演に参加しました。

セムラー氏の経営スタイルは、日本では「奇跡の経営」
という名称で書籍化され、多くの経営者が実践を試みてきたそうです。

しかし、そのいずれもが失敗し、元の経営スタイルに戻った
という歴史があったそうです。

来日講演で、過去にチャレンジされた経営者の方々と直接話した際に、
坂東さんは進化型組織の経営スタイル(当時で言えば、武井浩三さんの言われるホラクラシー:アメリカのホラクラシーとは定義が異なる)に対して、
「やり方だと思ってはダメだ。あり方なんだ。言い方を変えれば、宗旨替えをするような気持ちで臨まなければダメなんだ。」
ということを確信し、自身も実践することに踏み切られました。
 
そこから当時の社員がほぼ離職するなど紆余曲折をへながらも3年以上に渡って実践を続け、最近では従業員・業務委託者・(従来の枠組みで言えば)お客様がシームレスにプロジェクトで協働していくような、独自の組織体制が出現してきています。
 
直接、取り組みのプロセスについて聴かせていただきましたが、
「やり方だけ追いかけてはダメだ」という確信が進化を大きく後押ししたと強く感じました。

ティール組織へのシフトの近道となるものは?

上記の坂東さんのCaseも踏まえて、ティール組織へのシフトの近道となりうるのは「あり方」と「やり方」をセットで学んでいくことではないかと思っています。
 
言い換えれば、文字だけで学ぶのではなく、
実践者の発する言葉・非言語を直接感じ、感化・触発される
ということ。
 
そして、同時に言葉化されているものもインプットしてり、できることから方法を試してみることによって、ある時、ハッと気づきが訪れるのではないでしょうか。
 
この観点で言えば、
アカデミアは様々な業種やフェーズのティール組織的特徴を持つ会社の経営者の方々がゲストとして来てくださったり、共に学んだりする環境になっています。
 
また、やり方・進め方の参考事例としてDXO(ディクソー)という組織デザインプログラムがテキスト、使い方の動画等、無料で公開されています。
 
これはいわば、無料でいつでもアクセスできる
オンライン留学と呼んでいいのではないでしょうか。
 
オープンな勉強会は毎月開催されていますので
すでにいらしていただいている方はぜひ継続的に
まだの方はぜひ進化型経営を感じに来ていただければと思います。
 
次回は、進化型経営とは切っても切り離せない「管理会計」をテーマにスペシャルゲストをお呼びして開催されます。

夢物語、理想論ではなく地に足ついたティール(進化型)組織にご興味がある方はぜひご参加くださいませ。



アカデミアは2023年1月時点で、手放すじぶんラボラトリーと進化しました。得られる体験・学びは変わりませんのでぜひご覧ください。


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