「アート・シンキング」と「ティール組織」の出版から勝手に読み解く「会社のあり方」が変化していく方向性とは?
はじめに
最近、こうなんじゃないか?と感じたことを実際に調べてみるという行動にハマっています。
最初に気になったのはいつか忘れましたが、書店に通っている中でビジネスパーソン向けの「アート」系の本がやたら増えた気がする、と感じた時期がありました。
とはいえ、アート思考の本を手に取って読んだのは今年の4月ですし、デザイン思考の本を読んだ流れで「いっちょ読んでみるか」という気軽なものでした。
デザイン思考の本、アート思考の本を読んだことで、何となくデザイン思考の流れから、アート思考の流れに移りつつあるのかな?という印象を持ちました。
で、「実際どうなんだろう?」という好奇心が首をもたげたので調べてみることにしたんです。
データの紹介
調べるといっても、私のやり方は単純です。
というものです。
手作業かつ、主観で選んでいるためこれから紹介するデータも「そんなもんか」くらいに思ってもらえると嬉しいです。
まず最初にデータを紹介します。縦軸が出版数です。
2018年は「脱・他人起点」の転換期か?
こうやってデータが出たわけですが私の「一気に増えた気がする」は、気がするのではなく、2016年に0冊だったのが2017年には3冊、そして2018年に9冊と、3倍増えたということがわかりました。
「では、なんで増えたの?」という疑問も湧くと思いますが注目されるようになった背景は色んなアート・シンキングの書籍に説が紹介されているのでそちらを参照すれば納得度が高いものが書いてあります。
ですので、私は違う観点でこのデータを捉えたいと思います。
書籍を読む前から「デザイン・シンキングとアート・シンキングって何が違うんだろう?」という疑問が漠然と浮かんでいましたが、
すでに色々な書籍を読んでいる方からその違いは「他人起点なのか、自分起点なのか」にあるということを教えてもらい、なるほど!と思いました。
デザイン思考は、あくまで他人(顧客)起点であり、そこに限界がある。その突破口として、自分起点のアート思考が話題になってきている。
そんなようなことを教えてもらったのです。
この観点からすると、2018年に登場したアート思考という小さなカテゴリーの登場は、ビジネスシーンにおける脱・顧客起点の流れが顕在化した証と言えるのかもしれません。
とはいえここで疑問が浮かびます。「脱・顧客起点」と言うものの、何年も前からビジネス書で取り上げられているスティーブ・ジョブス率いるアップルは存在がまさにその象徴であり、この流れは今更感があると思っちゃいます。
ここで私はアート思考の出版数が現時点ではピークといえる2018年に注目してみました。
この年は、マネジメント(経営)というカテゴリーで象徴的な出来事が起こった年でした。
私の記事でも頻出している書籍「ティール組織」の出版です。
こちらの書籍は、
といった賞を受賞しており、累計7万部(発行部数であり、実売数ではない)を突破しています。
ちなみに同カテゴリーで最も売れているのは、ピーター・F・ドラッカーの書いた「マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則」です。
この書籍は、2011年に経営書初のミリオンセラー(累計発行部数100万部突破)したモンスター本です。
この実績に大きく貢献したのは、知っている方も多い、書籍「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだ」の出版です。(こちらはなんと、300万部を突破しています。)
もしドラの人気から大きく発行部数を伸ばしたそうです。(2001年に出版してから8年間で10万部を突破しており、その後もしドラが出版してからたった2年でさらに90万部伸びたそうです。。。驚 こちらの記事参照。)
ドラッカーのマネジメントが出版してから2年でどのくらいの発行部数だったのかは調べても出てこなかったので、単純比較はできませんがこれ以前にも多数の書籍を出版しているドラッカーとは違い、ティール組織は著者のファンがすでにいたとは言えません。
その点を鑑みると、「最も短期間で発行部数を伸ばし、注目された経営書だ」と言ってもいいのではないでしょうか。(どうでしょう 汗)
まぁ、「ティール組織」がシンボリックな本かどうかについてはこのへんにしておいて、出版シーンにおける「デザイン思考→アート思考の流れ」と「ティール組織の登場」は、一見すると全く関係がないようですよね。
ですが、ある観点から観ると共通点があると思えました。
その共通点は「権力・権威(とされてきたもの)を超越する」ということです。
2つの流れを結ぶ、越権行為とは?
説明します。
まず権力と権威とは何か、ですがgoogleで検索したままを載せます。
従来であれば当然のこととされている強制力や一般常識・伝統をものともせず、自身の理想を体現しようと試みていること。
これらが共通点だと思ったのです。
まず、アート思考についてですが、ここでいう強制力とは、大きく2つあります。
(1)株主や競合からの圧力(利益最大化の圧力)
株主は基本的には利益の最大化を求めますので、会社は必然、経済至上主義に引っ張られていきます。(経営者自身がこのマインドの方もいますね。)
競合の動きも大きく影響するため無視できないのが常識です。
そのため、説明責任を果たせない、数値化できないものは優先順位が下がるという力が働きます。
(2)組織文化の圧力
2つ目は、組織文化についてです。
利益の最大化を考えると、提供する商品(サービスや製品)を効率よくたくさん作り、たくさん売ることに向かいます。
つまり、この時点で、売上が予測できないことは優先順位が下がる力が働くのです。
この説で言えば、デザイン思考はその前提にこれらの権力への従属が含まれている点に限界があるということです。
ジョブスの名言にこんな言葉があります。(本当に言ったのか当方では未確認です)
こちらはあらかじめ売れることが見込めそうな(それがうまく説明できそうな)顕在ニーズ起点のデザイン思考の限界を語っているように思えます。
また、顧客が潜在的に求めているものを提供するという意味でのアート思考の可能性を暗に語っていると言えるかもしれません。(もしデザイン思考を通じて顧客の潜在ニーズにアプローチできるプロダクト・サービスを生み出せるとしたら、それは、すでにここでいうアート思考のまなざしで取り組めている人なのだと言えるのではないでしょうか。)
この強制・圧力は、本当は全部で4つのカテゴリーがあると分析したのですが長くなるので省きます。
一方でティール組織についてですが、ここでいう強制力・圧力もアート思考におけるそれと同じく2つあります。
(1)株主や競合からの圧力(利益最大化の圧力)
他にも、業界の実力者、お世話になった方などからの圧力もあるかもしれません。ティール組織は、利益の最大化を目的としていないのでこの圧力から自身を解放していると言えるのではないでしょうか。
(2)常識からの圧力(ヒエラルキー・工場モデル型経営の圧力)
こちらは圧力というよりも、その方法しかないと思い込んでいる、無意識レベルで染み込んでいる常識といった方が適切かもしれません。
また、この2つ以外にも「これまで遵守されてきた法律の解釈という圧力を超える」という姿勢もあると思われます。
私が見知った日本で先端的に体現されている会社の経営者の方々の範囲になりましたが、様々な専門家の力を借りながら、法律に反しないけれども、できる限り従来の常識とは異なる形でチャレンジしている方々が多い印象があります。
このように見ていくとアート・シンキングとティール組織には「権力・権威(とされてきたもの)を超越する」という共通項があるように思えませんか。
この観点から捉え直してみると、会社組織において2018年は「他人起点を脱し、自分起点へ」だけではなく、「権力・権威を超越する」転換期でもあると捉えた方が適切なのかもしれません。
まぁ、カッコつけて言ってますが、同じことを違う側面から言っているだけですね 汗
さいごに
気になった書籍のリサーチに始まり、会社組織のあり方が「権力・権威を超越する」(同時に「他人起点を脱し、自分起点へ」でもある)方向にシフトしていってるのではないか?その転機は2018年なのではないか?といった説を展開するところに至りました。
まぁ、勝手な仮説なので読み物として楽しんでいただければ幸いです。
実は、この記事はもともと書き始めたのが4月くらいだったのですが思うところあり中断していました。
その間に、学んだこと気づいたことなどが反映されてこの結びとなったのでそのプロセスも面白いなぁと感じています。
他にもティール組織とアート・シンキングの共通点、成人発達理論との類似性は?といったテーマのネタもあるので書きたいと思います。
※おまけ
こちらは余談ですが「〜シンキング」というと真っ先に浮かぶのはロジカル・シンキングですよね。せっかくなのでこちらも調べてみました。
これを見てどう感じるかは、お任せしたいと思います。
※オススメ記事
アート・シンキングについて探究した記事です
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