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子供が自立するとき(2)

シドニーに移住したのは、娘が中一になる年の1月です。英語は「Hello」か「How are you?」くらいしか話せない娘が、留学生を受け入れない現地の学校に入ることになったのです。

正直、学校に行きたくないと言われることを覚悟していました。

最初の2週間はとても緊張していたため、毎日のように気分が悪くなり、保健室に行って早退することもありました。
それでも、一度も学校に行きたくないとは言わず、朝、きちんと準備をして学校に通う娘の隣にいるだけでした。

【娘が学校で孤独を感じたとき】

1ヶ月ほど過ぎた頃、娘が「すごく孤独を感じる」と言いました!
学校では一人でいることはなく、誰かしらお友達が声をかけてくれたり、教室(科目ごとに教室が変わります)に案内してくれたりして、常に側にいてくれました。でも、彼女たちが言っていることが分からず、自分から話しかけることもできません。それが娘にとって「孤独」を感じる要因だったのです。

私が言えたのは、「たくさんのテレビを見ようね」でした。学校のアカデミック主任の先生(勉強専門の指導)との面談で、「家では日本語で話して、できるだけ多くの子供向け番組をテレビで見せてください」と言われていました。家で英語を話すと、娘がリラックスできる場所がなくなってしまうので、家では日本語にすること!子供向け番組で使われる言葉がお友達が使う言葉、それを通じてお友達との会話が理解しやすくなるとのことでした。

また、その先生から言われたことは「自信を持たせること」でした。
言葉の壁があることで自信を失ってしまうからです。言葉だけの問題なのに、それが引き金となって全てのことに自信を失ってしまうのは良くないということです。

なるほどと納得しました!

人は、ある一つのことに自信がないと、全てのことに自信をなくしてしまいがちです。ただ、異なる人種で育った環境が違い、話す言語が違うだけです。自分の自信とは関係ないはずなのに、それが引き金になってしまうのです。

これは、現在私がライフコーチとしてクライアントと関わる中で強く感じていることです。人生の中で、ちょっとした経験が引き金となって、自分には価値がないと思い込み、自信を失っている人が多いのです。

【自信が自立を促すのでは無いでしょうか】

2ヶ月目には、仲の良い友達のグループができ、娘はその中に溶け込んでいきました。ついに自分の居場所ができたようです。それは、日本人である自分や英語が話せない自分を受け入れてもらえたことで、娘が自分の存在を認めることができた時期だったと思います。

先生方も素晴らしいサポートをしてくれました。ここで一つエピソードをシェアさせてください;オーストラリアの子どもたちは、自分の考えを文章にまとめることにとても優れています。(数学のレベルは日本の子どもの方が高いですが)そのため、宿題で自分の意見を文章で書いてくるように指示されると、A4のノートにびっしりと書いてきます。娘は最初、やっと2行か3行しか書けませんでした。

その娘に対して、先生は「〇〇は最近まで東京で生活していたのに、こんなに英語で文章が書けるなんてすごいね」と褒めてくれました。内容ではなく、その努力自体を評価してくれたのです。そのため、お友達や知らない子も「Good job」「Well done」と賞賛してくれました。

そして、数ヶ月後には「Best Achievement」という賞を受け取り、先生のオフィスの前に娘の写真が貼られていました。

その頃には、彼女の中に「自信」という二文字が芽生えたように感じました。

シドニーでは、中学からすべてのことを子供に自主的にやらせるようになります。学校の連絡事項も子供が親に伝えます。Webサイトで少しはチェックできますが、日本の学校のようにプリントは配られません。そのため、娘から聞かないと情報がわからないこともあります。

娘の中に、自分が責任を持つという自覚も芽生えてきました。

自信と責任感が育まれたことで、精神的な自立が進んだと思います。

まだまだ、娘の自立は継続中です。
私が娘を育てる上での基礎をなっている「親」の漢字の意味(参照*)を忘れずに、これからも娘を見守りながら、共に過ごす喜びを楽しみたいと思います。


皆さまも、お子さんの成長を見守りながら、自立の過程を楽しんでくださいね。


*「親」という字は、「小鳥が巣立つ時に、親鳥が少し離れた枝から「大丈夫、がんばれ」「こっちの枝に飛んでおいで」と声をかけて見守る様子を描いたものです。」


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