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トラウマケアの視点から。過ごしやすさと生きやすさのヒントが詰まった本。

帯に書かれていた「生きづらさを取り除く」は本当に生きづらさが取り除かれていくヒントが満載だった。

岡檀さんの「生き心地の良い町」を読んだ。10月28日に主催する、花澤寿さんとの講座の資料として一番に浮かんだからだ。(その理由は後述する)

読む中でもずっと、そして読み終わってからしばらくしてもドキドキしていた。それは二重の意味での興奮だった。一つには、本の中に人の“本来性”が描かれていて、その姿は自分の中で模索していたり、忘れていたりした大事なことが「やっぱりこれだよね!」はっきり姿として見えた点。

もう一つは“日本で一番自殺が少ない地域では、なにが予防因子になっていたのか”という、要因を挙げるのがむずかしい挑戦に対して、岡さんが実に緻密に丁寧に、粘り強く、そして何より楽しそうに調査されていた点。楽しそう、というのは完全に私の主観だけれど、読み進める中で町の人々の中にある、心地よく生きるヒントが少しづつ明らかになる過程に「わぁ!」とか「うぉーなるほどー!」など私がワクワクしたのだ。読むプロジェクトXのようで純粋におもしろかったし何より希望がみえた。

私はふだんは傷つきや生きづらさなど、トラウマにまつわるセラピーや講座などを仕事にしている。目の前でご一緒する方やときに自分の現在の痛みをケアし、傷つきの連鎖をおわらせ、予防していくか?ということに目を向けているので、岡さんの調査と取り組みの方向がトラウマケアの方向性としても励みになった。『個人の痛みの背景には家族や社会、集団の傷つきと引継ぎがある』という視点でいるので、対個人だけではなく、マスに働きかけるには何ができるかを探してもいた。(いる)


その意味でトラウマについての理解と啓蒙から始めている(トラウマインフォームドケア)けれど、ここで「トラウマを防ぐには」だとあまりに直球すぎて、それは確かにそうなのだけど、なにかもう少し違うテーマへの触れ方はないかと考えていた。そういう意味で先の命題の、何があったから自殺となったのか『ではない』“何があると自殺にならず過ごせるのか”は、そのままトラウマという言葉に置き換えることができた。

トラウマになりうる要素は数々の研究の中でもはっきりしている。けれど、同じ体験があったときにその人の中にトラウマとして影響が残るか、残らないかは100人100通りの背景があり、体験だけで見ることができない。(例えば自然災害などで多くの方が同じ体験をしても、その後の様子は人によって異なるなど。そして、鬱になるなどが個人の弱さでは、もちろんなく、そこには状況と周りからの支援などいろいろな要素が絡んでいるということも忘れずにいたい。当事者の方は自分のせいだ、と責めがちになる)

話を戻すと、同じ脅威の体験があったときでも、“その後(もしくは前)に何があったからトラウマにならなかったのか”という視点も、何がトラウマになりうるのか?を知るのと同じように大事なことではないかと思っていた。

このヒントを、本で描かれていた徳島県の海部町(現海陽町)の人々の在り方からもらえたし、たとえ何が起ころうと、それはどうにかなるだろう。何か起こっても、まぁやっていけるし、やっていくのだよね、ヒトは。という希望や再確認にもなった。

はっきり「これがあれば大丈夫!」というものではなく「まぁ、なんとかなるさね」という、気楽さやうっすらとした希望、余白というのがトラウマケアの中ではリアルな気がする。不安なときほど、絶対や必ずというものが欲しくなるけれど、「そうかもなぁ」という“うっすら”によって程よく心におさめることができるからだ。
言い換えると“程よく”が難しいのがトラウマ反応でもあるから、まあね、とかほどほどとか中庸があるって生きやすさでもある。(ように思う)

『生き心地の良い町』については本当に書きたいポイントがたくさんだが、まずはトラウマケアやトラウマインフォームドアプローチに通じるところを書いてみた。

最初に「後述する」と書いた、花澤寿さんの講座を主催するにあたり思い浮かべた、という理由については「ヒトが生きやすさや支援の環境にもなる」というところで、こちらについては『BCE:Benevoelnt childhood experience(小児期順境体験)』の話になるのでまた書きたい。

ここからはお知らせになりますが、10月28日開催の花澤寿さん講座のテーマは【【学校が大人と子どもにとって安心安全な場になるために】ーつながりとポリヴェーガル理論の視点から理解するー】です。
共同体をキーワードに、寿さんからお話を伺いたい!と企画しました。ご興味のある方はぜひ詳細をご覧ください。オンタイムが難しい方は録画もあります。

▶詳細はこちら

日頃思っていることをそのまま言葉にしてみる場としてnoteで書いてみました。最後までお読みくださりありがとうございました!



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