【KX物語 第5話】kさん、「旅の仲間」「つながり」という言葉に、心が騒ぐ。
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この会社には、いろいろな才能、性格、ものの考え方の人がいると感じる
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目の前のスクリーン上に新たに浮かび上がった文章に続いて、4枚のカードが、スクリーンから抜け出てくるようにしてkさんの前に現れます。これまでと同じ展開です。
・・・でも、問いかけの内容が、さっきまでと少し違うかも。「わがまま」シリーズが終わって、次のシリーズが始まった、ということかな、、、
そんな風に思いながら、kさんは、左から二枚目の「まあそうかな」のカードに手を伸ばします。
・・・うん、うちの会社、なかなかのタレントがたくさんいると思うんだよな。特に、コロナ以降に中途採用で入ってきた人たちは、これまでうちにいなかったタイプが多いし。
次に映し出された問いかけにも、kさんは、「まあそうかな」のカードに手を伸ばします。
・・・うん。仕事柄かもしれないけれど、他の会社の人とかフリーランスの人なんかとも、よく会うよね。まあ、今はオフィスで、じゃなくて、ZoomやTeamsで、だけどね、、、
しかし、その次に映し出された問いかけを見て、ちょっと考え込んでしまいます。それは、こんな文章でした。
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チームメンバーのことは、全員の性格や持ち味、趣味や好きなことなどもよく知っている
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・・・チームメンバーって、職場の、というか、同じ部署の人たち、ってことだよなあ。趣味や好きなことって、、、コロナ前には、お昼ご飯よく食べに行ってたけど、あんまり聞いたことないなあ。家族の話は時々聞いたけど、、、最近は、そんな話何もしていないなあ。SNSでもつながってないし、、、持ち味を知っているっていっても、この仕事を長くしてる人、こういうのが得意な人、というぐらいだよね。それでいいと思うけど、、、
ずいぶんと時間をかけた上で、kさんは「そうとはいえない」というカードに触れます。
それ以降の質問にも、「そうとはいえない」という回答が続きます。「全く違う!」というカードに手を伸ばさざるを得ない質問も出てきます。
・・・兼務なんてしたことないし。うちの会社で兼務しているのなんて、同期のあいつぐらいしか知らないな。前任の課長が体調不良、、、っていうかメンタルだよね、あれは絶対、、、になっちゃったときに、隣の課も面倒見てよ、ってなって。大変そうだったよなあ。まあ、よく知ってるわけじゃないけど。
・・・会社以外に、自分らしくいられる場所って、、、サードプレイスっていうやつですか? スタバにはよく行くけど、これそういう意味じゃないよなw 行きつけの店もないし、学び直しもしてないし、最近は学生時代の友達とも会ってないねえ、、、
そんなことを思いながら、「そうとはいえない」と「全く違う!」ばかりを選んでいると、またスクリーンが消え、再び例の声が聞こえてきます。
ここまでの10の質問に答えて、
あなたは今、何を感じているでしょうか?
・・・はいはい。あなたのおかげで、どんよりした気分になっていますよーー。最初のうちは、いい感じで答えていたのにな。すぐにまた「そうとはいえない」と「全く違う!」のオンパレードですよ。でも、最初の「わがまま」シリーズと、何となく聞かれる内容が違ったよな。今度は何シリーズだろう、、、
そんなことを思いながら、kさんは、声の続きを待ちます。その気持ちに応えるように、声が聞こえてきます。
あなたには、旅の仲間、、、が、いるでしょうか?
「旅の仲間」という言葉に、ちょっと意外な感じを抱き、kさんは思わず顔を上げます。どこを見るわけでもなく、その言葉が持つ意味を探すように目を泳がせます。
あなたは、そして、会社のメンバー一人ひとりは、
一緒に歩いてくれたり頼りになったり
知恵を授けたりしてくれるような
旅の仲間と出会えているでしょうか?
・・・そういえば、最初の方で、「○○の旅に出るために」って言ってたような気がする。何だっけ。思い出せないな。でも、何かを始めなさい、って言ってるんだよな、たぶん。その仲間がいるか、ということだよね。仲間、ねえ。そんなワンピースみたいな世界には生きてないなあ。同僚はそれなりにいるけど、、、
なんとなく、もやもやとした気持ちのままでいるkさんでしたが、その気持ちを今度は無視するかのように、スクリーンが映し出されます。また次のシリーズが始まるようです。そして、今度はこんな文章が浮かび上がってきました。
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会社の中では、職務や役職にふさわしくあるために、自らの個性を隠して演技をしている
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ドキッとしました。
会社で仕事をする中で、演技をしているつもりは、これまで一度もありませんでした。ですが、こうして問われてみてkさんは気づいたのです。
・・・演技、、、そうかもしれない。確かに、会社が期待している役割を演じているのかも。素のままの自分ではないよなあ、、、ああそうか。だから、「わがまま」じゃないんだな。でも、これって、ダメなことなのかなあ。会社って、そういうもんじゃないのかなあ、、、
もやもやする気持ちがさらに大きくなりながら、kさんは「まあそうかな」のカードに手を伸ばします。
次の質問がスクリーンに映ると、kさんはがっくりうなだれてしまいます。そして、「その通り!」のカードに叩くように手を伸ばします。
・・・そうですよ、会社の人とは、仕事以外の話はほとんどすることがないですよ。だって会社だよ? 仕事それなりに忙しいんだよ? オンラインじゃ雑談しないでしょ?
そんな風に自分に言い訳しながらも、kさんは先ほどのことを思い出していました。今日もみんなと対面で会ったのに、そのままそそくさと帰ってしまったことを思い出していました。
・・・でも、みんなそんな感じだったよなあ。ミーティングが終わった後も、その場で仕事の打ち合わせを始めたりする人はいたけど、みんなノートPC抱えてさっさとフロアに戻ったり、同じように帰り支度している人もいたよねえ、、、
そんなことを思い出しているさ中にも、次の質問が浮かび上がってきます。Kさんは、一転して「全く違う!」に手を伸ばします。その次の質問にも、です。
・・・仕事と関係ないときに、社内の人に誰かを紹介されたりすることなんてないし。誰かと誰かをつなげる、なんて、なにそれ、って感じ。ああ、でも、追いかけているテーマが近い人とかいるよなあ、、、
もやもやはさらに増しながらも、続く質問に答えていくと、 またスクリーンが消え、再び例の声が聞こえてきます。
ここまでの10の質問に答えて、
あなたは今、何を感じているでしょうか?
・・・はいはい。あなたのせいで、もっともっとどんよりした気分になっていますよーー。
「わがまま」「旅の仲間」ときて、次は何だろうなあ。「旅の仲間」のシリーズと少し似ていて、人とのつながりについての質問が多かったように思うけど、、、早く正解を聞かせてほしいなあ。この間が、なんともたまんないよ。じらされているようで、、、
そう呟きながら、kさんは薄暗がりの中で、次の言葉を待ちます。その気持ちにようやく応えるように、声が聞こえてきます。
あなたには、つながり、、、が、あるでしょうか?
・・・やっぱりな。つながりだ。
思わず笑みが浮かびました。そして、このログハウスのような空間に来て、初めて顔がほころびました。
例の声は、こう続きました。
あなたには、そして、会社のメンバー一人ひとりには、
ワクワクしたり視野が広がったり
化学反応が生まれたりするような
つながりが生まれているでしょうか?
kさんの表情から、笑みが消えました。心の中のもやもやがどんどん大きくなるのを感じていました。
(つづく)
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