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【藤田一照仏教塾】道元からライフデザインへ(19/04)学習ノート⑤

この「学習ノート⑤」では、講義後半のソマティックワークについて振り返っていきます。

(ここまでの4月一照塾)
・導入、オリエンテーションの模様は「学習ノート①」にて。
・「弁道話を読むヴィジョン」についての一照さんプレゼンは「学習ノート②」にて。
・塾生たちによる事前homeworkのシェアリングワークの模様は学習ノート③」にて。
・一照さんによる"弁道話講話"は「学習ノート④」にて。

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1. 「聞・思・修」~修行のデザイン

仏教の学び方は、「聞思修の三慧」としてデザインされています。

「聞慧」:聞くことによって生まれる智慧。経典を読んだり、提唱や講話を聞く。input。

「思慧」:聞慧だけだと、それは他の人の考えでしかないので、それを自分のものにするために「いま聞いたり読んだりしたことはどんな意味なのか」を自分の頭を使って思考・思惟(宗教的思惟)する。

(仏教では"思考"というと「悪者」にされているイメージがあるが、思考とも呼べない、とりとめもなく現実から遊離した「雑念・妄想」のようなものは修行の邪魔になるので、瞑想によって鎮めなければならない)

講義前半で皆で講読した「正法眼蔵」は、道元さんの宗教的思惟が透徹した文章で表現されたもので、私たちにとってお手本になるものです。

「修慧」:身心を挙げて"行う"ことで生まれてくる智慧。
そのためには様々な行法があるが、禅の場合には坐禅を中心に、坐禅のクオリティを生活行為全般(トイレを使ったり、顔を洗ったり、料理をしたり、庭を掃除したり、睡眠をとったり…etc.)に応用していく。「すべての生活行為が修行になる」というのが禅の特徴。

この仏教塾では、「聞」と「思」を講義前半(テキスト講読、グループワーク)で行なって、「修」を講義後半の時間(ソマティックワーク、瞑想・坐禅)で行なう…というようにデザインされています。

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2. 感じる力でからだが変わる

坐禅は、身体をあまり動かさないので「静中の工夫」といいますが、講義後半のソマティックワークの時間では、まずは「動中の工夫」ということで、一照さんが興味をもって取り組まれてきた、ヨーガや、西洋生まれのボディワーク、「野口整体」や「野口体操」といった日本生まれのボディワークの中からピックアップして、身体をほぐしたり、自分と身体の関係を見直してみたり、身体がもっている未知のはたらきに驚いてみたり、という体験をした上で、最後に締めくくりとして瞑想や坐禅を行なう…というこれまでの仏教塾の流れを、今回も踏襲して行ないます。

一照さんが今季2019年度の仏教塾のプログラムを練っていた時に、一冊の本が出版されました。

『感じる力でからだが変わる - 新しい姿勢のルール』
(メアリー・ボンド(著)、椎名亜希子(訳)、春秋社)

(この本の概要)
著者のメアリー・ボンドさんは、ロルフィング(筋膜に働きかけて、重力との調和を取り戻し、身体のバランス調整能力を回復する手技)を学んだ方で、この本は、ロルフィングを中心にして最先端の生理学や解剖学などの知見を織り込んで、分かりやすく書かれた本。
椎名さんによる日本語訳についても、誤訳もほとんどなく、とても誠実に訳されている。

メアリー・ボンドさんの公式Web。


訳者・椎名亜希子さんのロルフィング・スタジオ「Rolfing® spiro」のWeb。


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3. Gravity takes care of everything.

ロルフィングの創始者、アイダ・ロルフさんの語録が本になっていて、そのいちばん初めには、

「あなたが重力と良好な関係になっていれば、重力がすべてをケアしてくれる」

という言葉が記されているのだそうです。

一照さんによれば、坐禅もまた「重力との関係の築きかた」が最も大切。
いわゆる「只管打坐の坐禅」では、"ただ坐る"以外のことは、瞑想的なことも何もしなくていい…といわれますが、では「なぜ"何もしなくていい"のか?」を考えた時に、このロルフさんの言葉が浮かび上がってきたのだそうです。
重力との関係がズレてきた身体がもう一度良好な関係を取り戻せるように、手技でもって適切なサポートをしていくのがロルフィングというボディワークです。

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4. Awareness / Stability / Orientation / Movement

この本は4部で構成されていて、4月から7月の前期全4回で、第1部から第4部までの各ワークを、この本を逐次解説する…というよりは、この本を「タネ本」にして、本の中で紹介されているワークを一照さんなりの観点からピックアップして、適宜アレンジを加えながら実修していきます。

1. 身体のアウェアネス:自分の身体で何が起きているのかをきちんと知覚・認識する。
2. 身体のスタビリティ:呼吸と骨盤から、身体の安定性を構築する。
3. 身体のオリエンテーション:身体がある空間の中でどの方向に、何に向かって動いていこうとしているのかを知る。
4. 身体のムーブメント:「動きの中で決まる姿勢」を理解し、重力に逆らわずに動けるようになる。


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5. 坐相第一主義

曹洞宗では、坐禅の姿勢(坐っている姿)のことを「坐相」と呼びます。
一般的に坐禅の姿勢というと、静止的な(Staticな)イメージがありますが、一照さんにとっての坐相の理解は、

「止まるという動き」

であって、そんな一照さんが、「姿勢は動きの中で定まってくる」という考え方が中心的な思想になっている、今回のソマティック・ワークのテキストを読んだ時には、「大いなる応援を得た」感じがしたのだそうです。

坐禅の伝統的な3つのクオリティとして、「調身・調息・調心」が説かれます。身と心を挙げて(身心を挙して)実践するという要素の間に「息(呼吸)」が入っていますが、この「息」は、調身か調心、どちらに属するものなのか。

坐禅の三調の中の息は、身と心を連結する役割を担っている、とても重要で興味深い現象。"坐相"と言った時には、身体の姿勢のことなので「調身」に含まれるかのように思われるけれど、実際には、呼吸が調っていないと良い坐相は実現できないし、心が乱れていても良い坐相にはならない。

ここでの「第一主義」ということの意義は、

調息も調心も「坐相の問題」に収斂され、坐相からアプローチする

ことにある。

このテキストは、「The new rules of Posture(新しい姿勢のルール)」という副題にもある通り、姿勢についての本ですが、呼吸についても多く言及されているし、心の持ち方、知覚のしかた、感じることについてもたくさん書かれていて、坐相についての一照さんの考え方に沿った内容になっています。


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6. 呼吸、横隔膜の微細な運動への気づき

身体の中で起きている運動や感覚に、どれだけ繊細にアウェアでいられるか。

〔ニュートラルな呼吸のエクササイズ〕(テキストp.43)
座布団や坐蒲を用いて、楽で心地良く、しかもしっかり安定した姿勢(comfortable and stable)をとって坐ります。
床からくる支えに注意を向けて、しっかりとコンタクトします。
テキストに書かれている文章を一照さんが静かに読み上げることで、自然な呼吸を観察するワークをインストラクションします。

(一照さんinstruction)
・自然な呼気と吸気を、初めて見る現象のように、未知のものに向かう時のような好奇心をもって観察します。
・呼吸に直接関わる体の部分(口、鼻、喉など)以外に、呼吸を感じられる場所があるでしょうか。肋骨や肩甲骨の動きはどうですか?
・身体はすべてつながっているので、肺から離れたところ、手首や足首などでも呼吸の動きが感じられます。

〔横隔膜の繊細な感覚に気づくワーク〕(テキストp48)
呼吸に関連する身体の部分から遠く離れたところの感覚にアウェアでいようとしたら、かなりの集中力と細やかな感受性が要求されると思います。
坐相を調える際にも、そのくらいのレベルの繊細な感受性が求められます。

しかし、例えば一照さんが長年にわたって坐禅を指導しておられたアメリカでは、「僕は考えるのは得意だけれど、感じるのは苦手でね…」と言う人が多かったとのことで、身体の細やかな動きや感覚を受け取る感受性がよく分からないという人はけっこう多い。

また、例えばセクシャルハラスメントなどを受けて、思い出したくない記憶が身体に刻まれてしまっている…など様々な事情から、自分の身体に対する親密な感覚を持ったり注意を向けたりすることに抵抗を感じる人もいます。
そういったトラウマの解放という点でも、身体へのアクセスというのが必要になってきます。

ここでは、横隔膜に着目して動きや感覚に繊細に注意を向けるワークを実修します。

(一照さんinstruction)
・姿勢を正すのは、骨格のバランスで重力と良好な関係を保ち、リラックスして坐るためです。リラックスした筋肉はセンサーとしてより繊細になっていきます。
・息を吸うときの横隔膜の動きの左右差を感じられるでしょうか。これは、身体の右側には密度の高い肝臓が、左側には(空腹時であれば空っぽな)胃があるためです。
・健康的な姿勢を目指して練習を続けると、身体にもともと備わった繊細な感覚に気づく能力が養われます。
・くれぐれも、思考でもって「左右差どうなってるかな?」と考えないようにしてください。横隔膜のところに"自分が直接出向いていって"、具体的な生の感覚を受け取るように試みてください。思考には、概念というタグ付けをしてしまう傾向がありますから注意が必要です。


§

7. 骨盤のアーティキュレーション

〔"アーティキュレーション"という語の様々な意味合い〕

言語表現の場面では:「明確にする」「相手にわかるようにはっきりと発音する」「自分の考えを適切な言葉や発音で表現すること」など
身体のアーティキュレーション:無駄がなく、優美で、意味のある一連の動き
音楽表現の場面では:音楽作品全体の文脈を理解し、それに即して楽譜を読み取り、適切な演奏技法で"弾き分ける"こと


〔テンセグリティ - 身体構造の新しい理解〕
積み木のようなブロックを積み上げて、ブロックどうしの圧縮力で身体がまとまっている…という身体観から、最近では、バックミンスター・フラー(20世紀の天才的エンジニア、発明家、思想家)が提唱した、

テンセグリティ
(張力(tension)で統合(integrate)されている構造)


をモデルにした身体観へとシフトしていっています。

身体のテンセグリティを垣間見る材料として、ここでは骨盤に着目していきます。

〔姿勢動揺のワーク〕(テキストp76)
直立して、その姿勢を"止める"というより、「揺らぎを最小にして立つ」というイメージを持つ。

(一照さんinstruction)
・目を閉じて立っていると、身体がわずかに揺れている(揺らしているつもりがなくても揺れている)のが感じられるかもしれません。
・皮膚という"柔らかい革袋"に水がたくさん入っていて、その"軟部組織"の中に内臓や骨格がプカプカ浮かんでいるのをイメージします。(参考:"野口体操"の創始者・野口三千三による"原初生命体"的な感覚)
・重力の中でからだがバランスを取ろうとする動きに抵抗したり、コントロールしたりせずに、この動きを観察します。


〔仙腸関節のことをよく知る〕(テキストp.88)
皮膚の上から、腸骨の輪郭を手でなぞっていったり、仙骨の位置や形状を確認します。

〔仙腸関節のロッキングのワーク〕(テキストp.91)
仙骨に対しての前後の動きが3~4ミリ、という仙腸関節の小さな動きに気づけるでしょうか。膝を立てた仰臥位(仰向け姿勢)で、仙骨だけを小さく揺らす(rocking)ワークを実修します。

(一照さんinstruction)
◎仙骨を上下に揺らす動き
・両足で均等に床を押し、同時にすねのてっぺんをつま先の方へ送ります。すねが股関節から遠ざかっていくように、とても小さくゆっくり動かします。
・これを可能な限り正確に行うと、尾骨が床からわずかに離陸していくような動きが感じられると思います。
・床を押していた足の力をゆっくりと抜いていくと、仙骨がもとの位置へ戻っていきます。
骨盤を持ち上げないようにしてください。仙腸関節の小さな動きだけに集中します。

◎仙骨を左右に揺らす動き
・右足だけ床に踏み込んで、右のすねをつま先方向へ送っていきます。そうすると、仙骨が左側の仙腸関節に向かって転がります。
・床を押している足の力を抜くと、仙骨がゆっくりともとの位置に戻っていきます。
・同様に、左足を軽く踏み込んで、仙骨を右側へ小さく転がしていきます。
・動きが小さすぎて隣にいる人には分からないくらいの繊細さで動いていきます。
・仙骨が倒れやすい方、倒れにくい方…左右差も観てください。

(一照さんinstruction)
◎骨盤と上半身のカウンターローテーション(テキストp.96)
・右足を踏み込んで仙骨が左側へ転がったら、おへそから上の上半身がやや右側へ倒れていく動きに気づきます。おへそを挟んだ上下が逆の動きになります。
・反対側も同様に行います。


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8. 背骨のアーティキュレーション

背骨の健康的なアーティキュレーションを目覚めさせるためのワークを行ないます。そのための準備として、2人一組になって、背骨の椎骨17個を一つひとつマッサージしていきます。(テキストp.98)

(一照さんinstruction)
・ひとりはうつ伏せに寝て、もうひとりはその人の左側の、仙骨と肩甲骨の間くらいの位置に坐ります。寝ている人の呼吸に合わせて、右手を仙骨の上、左手を肩甲骨の間にそっと置きます。
椎骨は一つひとつ独立して動きます。一つひとつの"宝石"のありかを教えてあげるように、やさしく動かしてあげます。
・椎骨は一つひとつ異なる表情があります。


次に、床に両手・両ひざをついて四つ這いの姿勢になります。
首をリラックスさせて、頭をぶら下げます。
首のすぐ下にある椎骨から、一つひとつ順番に持ち上げていって、背骨をカールさせていきます。


背骨全体が上向きのカールを描いたら、今度は骨盤を逆方向に傾けると、尾骨が天井の方を向き、仙骨がお腹側へ倒れます。
仙骨のすぐ上の椎骨から一つひとつ、床の方向へ下げていきます。
目線が天井の方向へ上がって、尾骨から頭のてっぺんまで、背骨全体が下向きのアーチを描きます。


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9. 瞑想

坐禅ではなぜ坐蒲を坐骨の下に敷くのかというと、骨盤と背骨のアーティキュレーションができるから、と言えるでしょう。骨盤が前後左右に可動な状態をつくって、いくつかの"姿勢の選択肢"の中からベストなところを選ぶことができます。
仙骨や骨盤を前後に倒しながら背骨の良好なアーティキュレーションを確立して、最適な姿勢を探究していって、瞑想に入っていきます。

(一照さんinstruction)
・まず音を聞きます。耳から入ってくる音を邪魔者扱いせず、また、意味づけもしません。聞こえてくるままに聞きます。
・同様に、匂いや味、身体感覚についても、その感覚をそのまま受け取ります。そのすべてが自受用三昧のはたらき、妙法のはたらきです。
・思考が浮かんできても、それも妙法のはたらきとして、自分の都合のいいように解釈して捉えることをラディカルに放棄します。
・眠ってしまってもいけません。眠気の起こりとその行方をきちんと見届けます。
・思考の中身に踏み込んで考えごとに耽ってしまったり、眠りに落ちたりすると、自受用三昧の味わいかたが粗雑になってしまいます。
・考え事や眠りに引きずり込まれようとしている自分に気がついたら、止めて帰ってきてください。


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〔ソマティックワークのhomework〕

「背骨のアーティキュレーション」を朝晩、上下3往復ずつ丁寧に行なう。
行なった結果を、次回5月開講時にレポートできるようにしておく。


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