30歳前後の方必見!年金の2024年財政検証でわかったこと
厚生労働省より、2024年の財政検証結果が公表されました。
財政検証は公的年金の健全性を確認するもので、原則として5年に1回実施されます。
財政検証が公表されると、様々なことが論じられるようになりますが、今回の結果は特に30歳以下の方に大きな影響を及ぼす可能性があるようです。
2024年の財政検証については、「年金で財政検証を行う目的や結果についてわかりやすく!」と「2024年財政検証で示された5つのオプションと今後の年金制度」と2つの記事でお伝えしてきました。
「年金で財政検証を行う目的や結果についてわかりやすく!」では、現時点の年金財政は概ね安定していて、早急に大幅な見直しを図る必要はないと思われること。
「2024年財政検証で示された5つのオプションと今後の年金制度」では、今後予想される年金制度の変更について書いています。
よろしければ、ぜひ、お読みになってください。
もっとも、2つの記事は年金財政や年金制度の大きな枠組みについて書いたもので、2024年の財政検証の結果が個人にどのような影響を及ぼすのかについては触れていません。
2024年の財政検証は、私たちの今後の生活のあり方を示唆するもので、特に30歳前後の方に大きな影響を及ぼす可能性があるようです。
この記事では、2024年の財政検証の結果が30歳前後の方に及ぼす影響。
合わせて、30歳前後の方が老後のお金を準備するときに使いたい制度について私見をお伝えします。
2024年の財政検証が示す所得代替率の現状
財政検証は公的年金の健全性を確認するものですが、合わせて将来の所得代替率(しょとくだいたいりつ)の見込みが示されています。
所得代替率は公的年金の給付水準を示す指標で、現役男子の平均手取り収入額に対する年金額の比率を表したものです。
平成16年に年金法の大きな改正がありました。
平成16年時点の所得代替率は60%を超えていましたが、この比率を維持したままでは年金財政を維持できないということで、将来的には50%まで引き下げることとされました。
それまでの年金額は物価や賃金の動向で毎年度変化していましたが、平成16年以降、少子高齢化を数値化した指標「マクロ経済スライド」を導入。
仮に物価や賃金が上がっても、マクロ経済スライドで年金額の上昇を抑えることになっています。
もっとも、マクロ経済スライドの仕組みが法律で作られたとはいっても、経済の情況が思わしくなかったため特例を作り、しばらくの間、マクロ経済スライドを発動することはありませんでした。
現在はマクロ経済スライドが導入されています。
ただし、ずっと特例でマクロ経済スライドを使ってこなかったため、現在の所得代替率は61.2%と高止まりしています。
2024年の財政検証が示す今後の所得代替率の見込み
所得代替率の見通しを作成する前に、今後の人口・労働力・経済など諸前提を設定します。
また、示される結果も幅広く複数のケースが示されています。
もっとも、それではあまりにも煩雑になってしまいます。
この記事では、成長型経済移行・継続ケース、高度成長実現ケース、過去30年投影ケースの3つのケースについて簡単にお伝えします。
まず、将来の見通しについてかなり明るい見通しを前提にしているのは成長型経済移行・継続ケースで、2037年の所得代替率を57.6%としています。
次の高度成長実現ケースも、ある程度明るい見通しを前提にしていて、2039年の所得代替率を56.9%としています。
最後の過去30年投影ケースは、過去30年の実績に基づいたもので、2057年の所得代替率を50.4%としています。
成長型経済移行・継続ケースと高度成長実現ケースは、どちらかと言えば楽観的な予想で批判の対象になることも多いようです。
一方、過去30年投影ケースはむしろ悲観的要素を取り入れた予想ともいえそうです。
どの予想が、現実に近いものになるかはわかりません。
しかし、ここでは3つの内で最も悲観的な過去30年投影ケースについて考えたいと思います。
2024年財政検証の所得代替率の結果が30歳前後の方に及ぼす影響
過去30年投影ケースの場合、2057年に所得代替率が50.4%になると予想しています。
ところで、現状老齢基礎年金・老齢厚生年金の支給開始年齢は65歳です。
そこで、2057年-65年=1992年。
1992年生まれ、つまり2024年時点で32歳の人が、65歳になった時に受け取る年金額の所得代替率は約50%になる可能性があることを意味しています。
60%が50%になるということは、約17%の目減り(50÷60≒0.83、1―0.83=0.17、0.17×100=17%)
たとえば、現在65歳の人が受け取っている年金が月額20万円だとした場合、現在32歳の人が65歳になって受け取れる年金は月額16.6万円(20万円×83%)。
月額3.4万円の減少になります。
所得代替率60%が50%になることは、現実問題としてかなり大きなインパクトがあります。
30歳前後の方の老後のお金の準備
上記は不確実な将来の予測ですし、お伝えしたのもかなり粗い計算です。
ただ、悪い予想を立てておき、それに対する準備をしておくのは、大切なことなのかもしれません。
先ほどの事例でいえば、目減りをしてしまう月額3.4万円は、自助努力で作る必要があります。
では、どのようにして作るのが良いのでしょうか。
もちろん正解はありません。
ただ、公的年金の不足を行うのであれば、まずは公的年金に近い公的制度を利用して年金を作るのが良いかもしれません。
国民年金第1号被保険者の場合
国民年金第1号被保険者の方が受け取れるのは老齢基礎年金で、金額は多くありません。
そのため第1号被保険者は、公的年金の上乗せとなる公的制度がもっとも充実しています。
たとえば、付加年金・国民年金基金・確定拠出型年金個人型(iDeCo)が例としてあげられます。
また、年金制度ではありませんが、退職金制度として小規模企業共済などもあります。
国民年金第2号被保険者の場合
国民年金第2号被保険者の方は、老齢基礎年金に加え老齢厚生年金も受け取れるので、1号被保険者の方より公的制度の選択肢は多くありません。
それでも、確定給付企業年金や確定拠出年金企業型など企業年金に加入していることもあれば、さらにはiDeCoもあります。
国民年金第3号被保険者の場合
国民年金第3号被保険者の方が受け取れるのは老齢基礎年金で、第1号被保険者と同じです。
ただし、国民年金保険料を自身で支払っているわけではないので、上乗せの公的制度はほとんどありませんが、それでもiDeCoの利用は考えられます。
まとめ
ここでお伝えしたものは、公的年金の上乗せとなる公的制度の年金です。
公的制度の年金は預貯金などと異なりあくまでも年金なので、一定年齢にならなければ受け取れないなど各種の制約があります。
しかし、公的年金を補うものなので、さまざまな局面で税制の優遇措置があります。
まずは、公的制度で年金を作ることを検討し、その上で他の方法を考えるのが良いかもしれません。
ただし、30歳前後の方の老後のお金の準備を考える時、もう一つ大切なことがあります。
それは決して無理をしないということです。
30歳前後の方で、高収入を得ている方はそれほど多くないと思われます。
また、人によって違いがあるとはいえ、住宅資金や教育資金に重点を置く方もいると思います。
さらに言えば、30歳前後の方が老後を迎えるのは何十年も先のことです。
老後のお金の準備をするのは早い方が良いのは間違いないにしても、老後資金を無理して作ろうとして、普段の生活を厳しくするのは考えものです。
30歳前後の方で、老後のお金の準備を始めるのは難しいかもしれません。
そうした場合は少し先送りして、無理のない時期から、無理のない範囲で準備を考えるのも良いのではないでしょうか。
さいごに
この記事では、2024年の財政検証の結果が30歳前後の方に及ぼす影響についてお伝えしました。
ところで、厚生労働省の2023年「国民生活基礎調査の概況」によれば、高齢者世帯の所得のうち公的年金・恩給に占める割合は約63%と高位を占めています。(2位は稼働所得約26%です)
現在30歳前後の方が65歳になる頃、既に恩給は姿を消していると思われますが、できれば年金とこの記事でお伝えした公的制度の年金を合わせて、60%~70%を目指せればより良い老後を過ごせそうです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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