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食にまつわるアート&文芸誌|Tasty zine! 「PUT A EGG ON IT」 #9

「PUT A EGG ON IT」は、2008年にニューヨークで創刊されて、現在は16号まで年2回発行されているフードZINE。

今年の目標のひとつがZINEを2冊つくることなので、まずはいろいろ見てみよう、と、リサーチしてたどり着いたのが、この「PUT A EGG ON IT」。直接取り寄せようかと考えたけれど、国内で取扱いがないか調べたら、数年前に大阪のSTANDARD BOOK STOREで扱っていたのを見つけて、先日ようやくお店に行って購入してきた。ただし、残っていたのは、2014年F/Wの9号。ずいぶん古い。

使われている紙は薄緑。料理の写真を載せれば、確実にまずく見える紙をあえて選ぶことで、このZINEがどんなスタンスで食と向き合っているかをさりげなく示していて、なるほどこんなやり方もあるんだな、と感心する。

この号に特集はなく、様々なテキストや、組写真やイラストが集められている。ある人が「umaibo(そう、あの「うまい棒」!)」の思い出についてのエッセイを書いているかと思えば、ある人は「cannolli(南イタリアの伝統菓子)」についての奇妙な味の短編を書いている。ニューディール時代のアメリカの食の風景がモノクロ写真でセレクトされていると思えば、台湾の夜市が極彩色で集められている。そして、巻末には、いろいろなレシピが、極めて個人的なエピソードつきで掲載されている。

中でも圧巻だったのは「Midnight Madness(深夜の狂気)」と題された、友人の35歳の誕生日のために、12時ぴったりから35皿のディナーを振る舞った顛末を書いたエッセイ。いや、ほんとすごかった。英語を読んでる気がしないくらい、一気に読めた。

今では、日本でも、いろいろな食のメディアがあるし、文化や表現として食を捉えるスタンスも、少しずつ市民権が得られてきている。ただ私が、食は文化だし表現なんじゃないか、と考えた始めた頃に、遠いニューヨークでこんなZINEが発行されていたことを知って、なんだかちょっと嬉しくなった。

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