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冬を待つための酸菜白肉鍋

北海道の冬の野菜売り場はさみしい。色が消えてしまうのだ。大げさに思うかもしれないけど、本当なのだ。雪に覆われる冬、地場の野菜は育たない。道外からの野菜は入ってくるけれど、寒さにやられるのか生気がない。もちろん、冬の北海道の魚介類は豊富だし、ジビエも新鮮なものが手に入る。根菜は山ほどある。でも、やっぱりさみしさはぬぐえない。

もう、色のついた野菜ともお別れだなと悲しくなっていた10月頃、雑誌で「酸菜白肉鍋」なるものを見つけた。
中国東北地方の料理で、丸ごと漬けた白菜と豚肉、春雨を煮込んだ鍋。昔、自分でつくったザワークラウトとソーセージを煮込んで、スープにして食べていたことを思い出した。なるほど、あれの中国版だ。

早速、漬物用で山積みになっていた大きな白菜を買ってきて、ひたすら刻み、塩漬けする。丸ごとだと2ヶ月くらいかかるらしいが、刻めば早く漬け上がる。20日くらいたつと、ちゃんと「酸菜」になっていた。

鍋のつくり方はシンプルだ。豚バラ肉の固まりをネギの青いところと生姜で茹でておく。茹で水は鍋のスープに使うのでとっておく。酸菜は軽く洗って、水を切る。春雨は水で軽く戻す。ここまでが下準備。
フライパンで、胡麻油でニンニク、ネギ、生姜の香りを出し、そこに豚ひき肉を加えて炒め、出汁のもとをつくる。豚の茹で水を入れた鍋に入れ、火にかけておく。再度、フライパンでニンニク、ネギ、生姜の香りを出し、薄切りにした豚バラ肉を炒めて、鍋に入れる。酸菜、春雨、八角、花山椒、黒胡椒も加えて、10分ほど煮込む。出来上がり。

酸菜、豚肉、春雨。材料はたったこれだけなのに、食べ飽きない。一気に鍋が空になり、3回つくり直す。それでも、まだ食べたいという気持ちになる。発酵という時間がつくった味の魔力を感じる。

いよいよ冬がくるなあと気持ちが沈むとき、この酸菜を仕込むのは、なかなかいいかもしれない。酸菜ができあがる頃には、野菜売り場からは色が消えているだろうけれど、そのかわりに「酸菜白肉鍋」が食べられる。そう思えば、少しは気分も晴れるかも。


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