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きょう心にしみた言葉・2023年6月26日

まじめであることは、自分のほかに何一つ信を置けるものがなく、何を信じていいのかわからず、絶叫したくなるようなときにも、確実に、人間にとってよすがとなるものだという気がします。

「続・悩む力」(姜尚中・著 集英社新書)

悩みは、「まじめ」に自分と向き合うところから生まれます。人は「まじめ」ゆえに悩みます。姜尚中さんは、「まじめ」について考えをめぐらします。そして、「まじめ」こそが他人との共鳴をつくり出すと提起します。夏目漱石マックス・ウェーバーという二人の知の巨人の言葉から、それを導き出していきます。
姜尚中さんは、夏目漱石の「こころ」の中から、「先生」の言葉を紹介しました。
「私は死ぬ前にたった一人で好いから、他(ひと)を信用して死にたいと思っている。あなたは其たった人になれますか。なって呉れますか。あなたは腹の底から真面目ですか」
「まじめ」という言葉は、やがて来るであろう個人の究極の孤独の時代に、他者との「共鳴」を可能にする最後の砦として、漱石が思いを託したキーワードだったのかもしれない――。姜尚中さんは指摘します。
マックス・ウェーバーも、同じなのだといいます。ウェーバーは、知の合理化と専門化によって世界の意味がバラバラに解体していくなかで、学問にたずさわるものが最も心を砕かねばならないことは「知的廉直(誠実)」だと言いました。
どんな苦悩の中でも、「まじめ」を貫けば、必ず他者と共鳴できる。孤独の時代の暗闇の中で、ひとりひとりの「まじめ」が灯になっていくことに気づかされます。

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