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きょう心にしみた言葉・2022年11月7日

 誰の心の中にも確かに、豊かなものがたくさんある。でも表に現れているものは、その人が感じていることのうちごくわずかでしかありません。そういったことを理解したうえで他人と向き合い、世界と交わってみると、ふとした瞬間にそれまで違った風景を感じることができるのではないでしょうか。
 悲しむ人は泣いているとは限りません。苦しんでいる人は苦しいと言葉に出して言えるとは限りません。人は言葉にならないおもいで胸が締め付けられることもある。表現することの難しい心境が存在する。そう感じるだけで世界は変わって見えるはずです。
 深い悲しみを生きる人は、自分を励ますために、日々、微かな笑みをたたえていることもある。詩は、そのような語りえない心の交わり、コトバの交わりの世界があるということを、私たちに教えてくれるのです。

「別冊100分de名著 茨木のり子 自分の感受性くらい」(若松英輔・著、NHK出版)

批評家で、随筆家の若松英輔さんが、茨城のり子さんの詩集「自分の感受性くらい」を教材に行った特別授業。その講義録をまとめた著書から引用しました。「自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ」で知られる近代を代表する詩人、茨木のり子さん作品群から、言葉の伝道師のような若松さんが、言葉の重さ、深さ、大切さを語る授業は、まさに胸にしみます。詩との出会いは言葉との出会い、言葉との出会いは心との出会い。「深い悲しみを生きる人は、自分を励ますために、日々、微かな笑みをたたえていることもある」。思わず頷いてしまいます。

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