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待っていても現状は変わらない。ならば自分が作る【社会を変える次世代/セルフケアアプリ「Focus on」】

「自分の行動で、 国や社会を変えられると思う」

日本財団が18歳1,000人に実施した調査によると、「はい」と回答した18歳は、たった26.9%。アメリカ、イギリス、中国、韓国、インド、日本の6カ国のなかで日本は最下位でした。

ライフイズテックでは「Why don’t you change the world?」を掲げ、「世界を自ら変えられる人」の育成を目指し、「世界を変えている次世代」を応援しています。

今回は、発達障害当事者として、”普通”を頑張る人たちの日常を支えるアプリ「Focus on」を開発し、2024年2月末にリリースした森本陽加里さんにインタビュー。
社会に挑む陽加里さんの原動力、開発にかける想いを聞きました!


「伝わらない」実体験から生まれたアプリ「Focus on」

まずはFocus onの概要を聞かせてもらえますか?

Focus onは、発達障害のある方や「普通」を頑張っている方たちに向けて、日常を頑張り過ぎなくても過ごせるように周囲の信頼できる人にヘルプを出しやすくするセルフケアアプリです。

日記を書いて、疲れ度や感情の浮き沈みが可視化されるのですが、特徴的なのはそれが「共有できる」というところです。中高大生をメインに、家族や学校の先生と共有しながら、日常をよりスムーズに生きていくためのツールとして使っていただきたいと思い、開発しました。

使う当事者にとっては自分の状態が可視化されることで楽になり、先生が見ることでその子の状態を把握しやすくなるということですか?

アプリに入力した内容によって、疲れていることが理解できます。
私もよくあるのですが、しんどいことを自覚できても休むという行動に移せず、「休みたい」と言う気力もありません。それをアプリがサポートしてくれて、家族や先生が声かけをするきっかけになることを想定して作っています。

それは、陽加里さんの実体験に基づいて作ったのですか?

そうですね。「困っていることを伝えても伝わらない」という原体験からです。
小中学校時代、大人にヘルプを出してもなかなか受け取ってもらえず、中学生の頃は、母や担任の先生から支援をされる中で、私の思いをいつどうやって伝えたらいいのだろうと思っていました。

言葉がまとまらなくても、出来事の断片的な瞬間を伝えることで相手への理解が深まる世界観を作りたいんです。高校生でビジネスプランを立てたときからの目標です。その人自身の固有の感覚を言葉にして、それを知ってもらうことに価値があると思っています。

待っていても誰も助けてくれない。ならば自分が作る

高校生の時に、ビジネスグランプリで審査員特別賞を受賞していますよね。エントリーしようと思ったきっかけはなんですか?

幼いころは、誰かが何かをしてくれて、いつかこの状況が変わったらいいなと思って過ごしていました。でも、高校に上がったタイミングで、自分と同じ境遇の小学生に私の小学校時代の困りごとを話したら、その子が共感してくれた瞬間があったんです。

その時に「5年以上経っても私の状況と何も変わっていない。待っていても誰も助けてくれない。ならば自分にとって必要なものを作りたい」と考え始めました。昔の自分を助け、これからの自分も助けていくサービスを作りたいというのが、ビジネスプラングランプリで発表した動機です。

高校生ビジネスプラングランプリでのスピーチ(提供:日本政策金融公庫)

高校生の陽加里さんだから思えたことですね。

まさに高校生の尖り具合で作っていました。今なら同じアイデアが出てきたとしても、アプローチがもっと丸いと思います(笑)当時は小中学生の子にアプローチをしたかったので、ターゲットを子どもだけに絞っていましたね。

今はもう少し大人になった感じですか(笑)

そうですね。実社会で子どもに使ってもらうためには、先生のヒアリングも必要ですし、保護者にとって手が出しやすいサービスであるということも必要です。
現実的に状況を想定するスキルは、立案した高校生の時よりついてきているので、今はそこを整えている状況です。

でも、私は失敗しないと学ばないタイプなので、少し作ったらユーザーに使ってもらって反応を見ます。やりたいことと現実のギャップを知ることは大切だと思っています。現状での理想形を作って、社会からフィードバックをもらいます。例えば学校や保護者の方々にヒアリングし、実社会では実装が難しい場面では「ここは一旦我慢して、3年後くらいに取りに行きます」という交渉をしています。いつも社会との折り合いにドキドキです。

ライフイズテックのキャンプで求めたのは、人との出会い

ひかりさんは、高校生の時にライフイズテックのキャンプに参加してくれていたんですよね?きっかけは何だったんですか?

起業家の友達に「プログラマーと出会えない」と相談したことがあったんです。そしたらその友達が「プログラミング教室行って、前後左右の子たちを誘ってみなよ!」とアドバイスをくれました。
それでライフイズテックのキャンプに参加したんですが、実際はコロナ禍でオンラインキャンプだったので、前後左右がいなかったんですけど(笑)
でも、キャンプ中にメンターに自分が今やっていることを話したり、開発に取り組んでいたら最終日に表彰されて、全員の前で話す時間をもらいました。それが大きなきっかけで、私の話を聞いて「一緒にやりたい」と声をかけてきてくれた子がいたんです。今もその子と会社を運営しています。

キャンプでプログラミングをしてみたら「難しい」ということがわかりました。わからないという事実がわかった、というか。でも実際に作ったことで、プログラマーへ指示するときは相手の意向を想定して話せるようになりました。
私は代表かつ考案者なので、プログラマーとかデザイナーみたいな専門職になる必要はないのかなと思っています。一通りの知識を少しずつかじることが伝える際の土台になり、とてもよかったです。

「当時の私はどう嬉しいのか」を考えると、胸が熱くなる

お話していて、すごく力強さを感じるのですが、陽加里さんの原動力は何ですか?

社会に対して反抗的な小さい頃の自分がずっといて、常に原点に立ち返っています。発達障害という診断もついていなくて、自分が周りと違う特性や感覚を持っていることも分からなくて、「助けて」という言葉すら持っていない状態でした。
最終的にはその時の自分に対してアプローチしたいんです。
「このアプリがあるのとないのとでは何がどう変わるのだろう」「これがあったら当時の私はどう嬉しいのだろう」と考える時に、胸が熱くなる瞬間があります。諦めそうなことがあっても、もう少し時間をかけてみたら過去の自分はどうよくなるか考えて、またプラス3カ月くらい頑張れます。それをずっと繰り返して、最終的にやっていてよかったと思えるところまでたどり着きたいです。

10年後はどうなっていると思いますか?

アプリ自体をアップデートさせ続けて、使う人の輪を広げることに注力していると思います。おそらくアプリの機能は10年以内に理想形に近い形で完成しますが、それを使いこなせる人を育てていくにはもっと時間をかける必要があります。
私個人としては、自分自身を助け、よりよく生きていくことや、発達障害の研究分野にも興味があります。10年後もその先も、そういうことに携わって生きていると思います。

陽加里さん、ありがとうございました!


”普通”を頑張る人たちの日常を支えるアプリ「Focus on」ダウンロードはこちらから!
iOS:https://apps.apple.com/jp/app/id6458743165
Android:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.focus.on.dev&hl=ja-JP


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