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宝物を探すようにいこう。感じよう。インスピレーションをもらおう。 | 未完成に生きたいぼくは芸大に通うことにした。 | ある芸大生の雑記録 | 210913 | #5

今年4月に新設された京都芸術大学芸術教養学科イラストレーションコースに入学してから5ヶ月。仕事を続けながらオンラインで学んでいます。8月から記録に残すことを始め、今日はその5回目です。さっそくはじめていきましょう!

■芸大生ライフ

先週から「イラストレーション演習III-1 | ビジュアルストーリーテリング」を受講しています。ストーリーをビジュアルだけで伝える手法を学ぶ科目です。講師は栗田唯先生。全6回のうち今週は第3回、第4回を学びました。


「何を伝えたいか。どう伝えたいか。この2つにこだわろう。」と栗田先生は繰り返し語りかけます。自分にも言い聞かせるように語りかける感じ。大切にしていることが伝わってきます。

「おもしろいデザインやシェイプ、レイアウトはすでにあちこちに転がってるよ。見つけにいこう。探しにいこう。描けなくてもいいよ。写すだけでもいいよ。宝物を探すようにいこう。感じよう。インスピレーションをもらおう。ボキャブラリーを増やしていこう。」

「レイアウトならレイアウト。カラーならカラー。ひとかたまりごとに学んでいくほうが、ボキャブラリーを増やせるよ。」と実践的なアドバイスも交えつつ、栗田先生の語りは今日も穏やかでした。今週も受講をつづけます。

■9月の特集「柳宗悦」

今月の特集は「柳宗悦」。「民藝」を代表するひとりです。日本民藝館や出雲民藝館、鳥取民藝美術館など各地の民芸館を訪れながらできたらよかったのですが、今月は難しいので、『柳宗悦コレクション』(全3巻)をテキストに学びを深めます。

今週は『コレクション』より「河井寛次郎の人と仕事」(1巻)、「「見ること」と「知ること」」(2巻)、「直観の自由」(2巻)を中心に紹介していきます。


河井寛次郎さんは島根県安来市生まれ。「何といふ今だ。今こそ永遠。」をはじめ強い言葉を遺した人でも知られ、その仕事は足立美術館(島根)や河井寛次郎記念館(京都)でみることができます。(調べたら、島根県立石見美術館で企画展が開催中です!)

彼について書かれた文章がいいんです。冒頭からすでにいいんですよ。

河井は焼物の名人である。だが更に尚「受取方」の名人である。人間に会う場合でも、映画を見る場合でも、品物を眺める場合でも、その価値の受取方が竝々ではない。他の人には無とも思えるものから、有を引出してくる。実際無であるとしても、有で受取る。否、受身で受取るのではなく、積極的に汲取って了う。(中略)河井あっての受取方である。
「河井寛次郎の人と仕事」『柳宗悦コレクション1 』、筑摩書房、2010年、265頁。

河井のことを「感激家」「悦びが外に溢れる質」と評し、自らもそれにジェネレートされるように、なめらかに筆を運びます。鹿児島を一緒に旅したこのエピソードからは、友情をこえた愛情すら感じました。

その晩河井は早速それ[「ちょか」]で名酒焼酎を楽んだ。そうしてまるで子供のように、それを枕元に置いて寝た。寝ても離れたくなかったのである。「ちょか」の持つ美しさはさること乍ら、その美しさをかくまでに見ぬいた河井の眼や心はさらに美しい。「ちょか」はその折、河井の作った「ちょか」となっていたのである。(中略)河井に会うと、そのとたんに名器に蘇ったのである。
「河井寛次郎の人と仕事」『柳宗悦コレクション1 』、筑摩書房、2010年、266頁。

「受取方」をさらに深めた文章を遺しています。「直観の自由」(2巻)「「見ること」と「知ること」」(2巻)です。

例えば次のように語ります。

ものの美しさを見るのは物差しなどで計ることではなく、物差しなしで計ることである。謂わば素手でよい。空手でよい。否空手でないと本当のものは握れぬ。ここが直観の不思議な働きである。
「直観の自由」『柳宗悦コレクション2 』、筑摩書房、2010年、347頁。

なるほどと思いつつ、「素手」や「空手」で握るとは具体的になにをどうしたらよいのか。ここをより具体的に解説してるのが次のくだりです。

私の贈り得る第一の忠告は、ものを見た時、先ず審いてはいけないということである。謂わば批判を最初遠慮することである。この習慣をつけることは何より必要だと思える。ものの初めから知の対象として扱ってはいけないという意味である。さもないと見る準備が出来ない。之を他の言葉で言い現すなら、先ず受け入れよということである。自分を主張せず、ものに自分の耳を傾けることである。受身の立場に立つということが肝腎である。
「「見ること」と「知ること」」『柳宗悦コレクション2 』、筑摩書房、2010年、287頁。

「自分を主張せず」、「受身の立場に立」ち「まず受け入れよ」。さもないと「見る準備が出来ない」。時代をこえたメッセージを宿した、まさに名文といえるでしょう。

■Art in Focus !

雑貨を集めるように、その週に心がぴくりと動いたものをコレクションしています。今回はこちら。

0911 | 8月に出会ったイヴ・クラインの本が届き、読む。ブルーに魅せられた彼の34年(1928-1962)の生涯がコンパクトにまとまっており、1冊目としておすすめします。

ここまで読んでもらいありがとうございました!今週のエンディング曲はこちら。それこそ素手で、空手で、まずは直観してみてください。耳を傾けてみてください。どうぞ!

9月20日(月)15時より、「島の文化会議」のMCを今回も担当させてもらいます!詳しくはこちら。


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