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ボタン一つで自動運転で迎えに来てくれるTesla の Smart Summon 機能

Tesla を持つことの楽しみの一つが、頻繁に提供されるソフトウェア・アップデートです。つい先日のアップデートで追加されたのが、自動運転の未来を垣間見せてくれる Smart Summon という機能です。

以前から Summon という名前で、スマホから自動車を前後に動かす機能が提供されていました(駐車場で、隣の車との距離が近すぎてドアが開かない時などに便利な機能です)。今回のアップデートで、それが Smart Summon に進化し、「自分のところまで呼び出す」ことが出来るようになったのです。

使い方は簡単で、アプリの "Come to Me" というボタンを押すだけです(下の図の左の画面)。運転者なしの自動運転は、まだ公道では認められていないので、駐車場などの私有地でしか使えませんが、雨の日や荷物の多い日には、とても便利な機能です。

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色々な条件でテストした動画を、下に貼り付けておきます。

まずは、最もシンプルな、間に障害物がなく、ほぼ真っ直ぐに移動できるケースです。予想通り、問題なくこなします。

次は、駐車スペースに頭から駐車してあり、一度バックする必要があるケース。これも問題なくこなします。

3つ目は、少し難しくして、見えないところからスタートして、植え込みの外側を回らないと目的地にたどり着けないケース。最初に不要な切り返しを2回していますが、これは環境(植え込みの位置など)を把握するためにしているのではないかとエンジニア目線で解釈しています。

ちなみに、このテストで使った Model X は、2017年に購入した、Nvidia ベースの HW2 を搭載したモデルです(最新のモデルは、Tesla自身が開発した AI チップを搭載した HW3 を搭載しています)。

3年近く経つモデルにも関わらず、ソフトウェア・アップデートだけで、こんなに素晴らしい機能が追加されてしまうのが Tesla 車の素晴らしいところなのです

日本で住んでいる人にはまだ見えにくいと思いますが、米国の西海岸では、日本より一歩先に、自動車市場にとてつもなく大きな変化が起こりつつあるのです。

「EVシフト」と呼ばれる電気自動車の普及と、自動運転技術の発展が同時に進行しつつあり、そこで圧倒的な力を見せているのが Tesla なのです

Tesla の力を最も見せつけられるのは、サンフランシスコやシアトルなどの米国西海岸の高級住宅地です。Model 3 が出る前は、まだニッチな存在の自動車会社でしたが、Model 3 が発売されて以来、あっという間にシェアを伸ばして存在感を増し続けています。

下の写真は、少し前にシアトル近郊のゴルフ場の駐車場で撮影した写真です。左側に Tesla が五台連続して並んでいますが(少し先に、6台目があります)、こんな風景が日常茶飯事なのです

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とは言え、まだまだ高価なため(最も安い Model 3 でも $35,000)、こんな風景が見られるのは、会員制のゴルフ場や高級スポーツクラブ、および、高収入な人が多い Microsoft や Google のキャンパスだけなので誤解しないでください。

Tesla が他の自動車メーカーと違うのは、それがシリコンバレーの会社であり、CEO である Elon Musk を筆頭に、ソフトウェアの重要性を知り尽くしている人たちが経営している点にあります。

私は、たまたま自動車向けのソフトウェアを作る会社(Xevo Inc.)を経営していた経験があるので知っているのですが、Tesla 以外の自動車メーカーは、どこもソフトウェアは自分たちで作らず、仕様書だけ書いて、下請けや孫請けの会社に丸投げしています

それも縦割り組織で開発するため、「ダッシュボード(スピードなどが表示される部分)とカーナビは、ハードウェアもソフトウェアも別々のベンダーが開発している」など、ソフトウェア・エンジニアから見たら信じがたいような設計がごく普通にまかり通る世界です。

私はブログやメルマガを通じて、「Tesla は走るコンピュータだ」「Tesla 車は自動車業界の iPhone だ」「Tesla は、他の自動車メーカーの3年先を走っている」と訴えて来ましたが、それは誇張ではありません。企業の文化やビジョンに根本的な違いがあるため、普通の自動車会社が真似をしようとしても、企業文化的にも組織的に無理なのです。

私は、日本の自動車会社の技術者の「わが社には電気自動車を作る技術も、自動運転技術もある。Teslaのような自動車を作ろうと思えばいつでも作れる」という発言を聞いたことがあります。それを聞いた時に私の頭の中に浮かんだのは、iPhoneが出た時に「あんな携帯電話なら我が社でも簡単に作れる」と強がっていた日本の携帯電話メーカーの技術者の言葉です。ソフトウェアの重要性を理解していないから、「自分たちにも簡単に作れる」と誤解してしまうのです。

冒頭に書いたように、Tesla 車を持つ一番の楽しみは、月に一度ぐらいのペースで提供されるソフトウェア・アップデートです。Tesla 車には自動運転に必要なハードウェアは全て揃っていますが、ソフトウェアの開発がまだ追いついていないので、このソフトウェア・アップデートで少しづつ機能が提供されるのです。

これが、私が「Tesla は他の自動車メーカーの3年先を走っている」と言う理由です。2017年に発売された Model X が、他のメーカーが 2019年に発売したどんな自動車よりも優れた機能を持っているという状況に実際になってしまっているのです。

私自身もそうですが、Tesla 車を持つ人たちは、誰もが熱狂的なまでの Tesla ファンです。Steve Jobs がいた頃の Apple にとてもよく似ています

その結果、こんな風に、Tesla 車のオーナーが、自ら進んでブログやSNSで宣伝するし、友達には進めるので(私も知り合いにあまりにも幸せそうな Tesla オーナーがいるので購入を決めました)、テレビ広告など一切打つ必要がないのです。

日本のマスコミは、日本の携帯電話メーカーが作っていたガラケーを駆逐した Apple の iPhone のことを「黒船」と呼びましたが、Tesla はまさにそんな存在なのです。現在市場に売られている自動車全てがガラケーのような時代遅れな存在になる、そんな時代がまさに来ようとしているのです。

この記事は、メルマガ「週刊 Life is beautiful」向けに書いた複数の記事をベースに、note 向けに新たに書き起こした文章です。私のメルマガでは、こんな情報を毎週火曜日の朝に発行しています。



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エンジニア、起業家、サイエンス・ライター。自分が創業者として米国に作った会社を2回売却($56M, $320M)。 シアトル在住。メルマガ「週刊 Life is Beautiful」連載中。工学修士・MBA。
コメント (2)
まだ私有地でしか使えないとはいえ、Come to me ボタンひとつで来てくれるって、孫悟空の觔斗雲ですね。すごい。そのうち、浦島太郎の亀にもなれそう。指定した人を迎えに行って連れてきてくれる自動運転車。
既存の自動車メーカーがIT企業を買収している間にテスラはさらに先に進むわけですね。
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