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〜トルコ・シリア地震〜日本から海外に出来る防災教育とは?《前編》

いつもお読みいただきありがとうございます。KOKUAの横山です。

前回のnoteでもお伝えした通り、トルコ・シリア大地震では発災直後多くの方がパニックになり、その場に立ち尽くしたり、どうすればいいかわからず被害が拡大したという声も聞いています。

日本では当たり前の、「地震が起こったら、すぐに建物の外に避難する」ことや「公園や学校などの一次避難所に逃げる」という考えが浸透していない状況も・・・。

そこで今回は、防災教育のトップランナーでもある、一般社団法人BOSAI Edulab代表理事の上田(かみだ)さんをお招きして、今回の大地震から見た、防災教育の在り方や、日本が海外に向けてできる防災教育について前編/後編に分けて伺いました。

ぜひ最後までご覧ください!

▼前回のnoteはこちら

まずはじめに

現地から見えた、防災教育の浸透率の低さ

前回のおさらいですが、トルコは地震が多い国ではあるものの、実際の現場では、急に起こった異常事態に対応できず、救助が遅れたり、命を落とすケースもあったと伺いました。

▼現地で緊急支援を行なっている、NGOホープフルタッチ代表の高田さまより、伺った主な3つのケースはこちら。

地震発生から数時間、現地の方々はその場から動けなかった

現地の方々は、防災という概念や、普段から備えておくという概念がありません。なので地震が起こった際も、どこに行けばいいのかわからないし、広い場所に行くことや、建物に近づかないということも分からない状態だったそうです。

今回被害が大きくなってしまったのも、発災後そのまま建物に残ってしまったことで、倒壊する建物の下敷きになった方々も多いと聞いています。

NGOホープフルタッチ 高田さま

救援物資があるのに、配布場所にたどり着けない事態も

発災後、どこにどんな支援があるかという情報統制や、それらが一般の方々に届く形での情報提供がされていないようでした。

なので、せっかく救援物資として用意があったとしても、提供場所に辿りつけない。結局崩れそうな家から毛布や衣類をかき集めて、なんとか野宿で過ごしていたという方がほとんどです。

NGOホープフルタッチ 高田さま

十分な知識がないまま救助に出向き、命を落とした方も・・

物資もないし、誰か支援してくれる人たちも来ない。一般人のコミュニティで、倒壊した中から人を引きずり出すことに尽力した人たちもいたけれど、専門的に何か知っているわけではないので、救助のために瓦礫の中に入ったまま出られなくなってしまい、命を落としてしまった方もいました。

NGOホープフルタッチ 高田さま

トルコ人の生の声とは?

震源地にも近いイズミル出身の知人にヒアリングしたところ、定期的に防災訓練は実施されているとのこと。
しかし、日本ほど本格的なものではないようで、本人曰く適当にやっていた部分もあったとか・・。

以上が前提の情報として、ここからは、一般社団法人BOSAI Edulab代表理事の上田さんにご自身の経験を踏まえた、防災教育について必要なことを伺ってきました。

前編として今回は、”教育”に関するテーマを主にお届けします。

※以下、インタビュー形式でお届けします。


楽しく学べるシステムを現地へ

ーーートルコ・シリア地震について防災教育の観点から、現地に必要だと思われるのはどんな点でしょうか?

上田
防災教育としてすべき点は、発災後の行動指針を伝えることも勿論ですが、地域住民の個々人が、自分たちの災害リスクをまず知ってもらうことだと考えています。

  • 自分の住む家や職場、学校は耐震化がされているのか

  • 住んでいる地域の災害リスクは何があるか(ハザードマップで確認する)

など、基本的なことですが、事前に調べて知っておくことは、すごく重要なことだなと今回改めて痛感しました。

ちなみに、日本の学校は99パーセント耐震化が済んでいる一方、トルコは2020年のJICAの調査で「20%(900 校)が建替えの対象となり、75%(3,350 校)が耐震補強を必要」という興味深いデータも出ています。

防災教育ができることとして、それらの知識を楽しく学べるシステムを作り、対象者へ届けることが必要になってくるんじゃないかと感じています。

”コンテンツ”だけでは超えられない壁

ーーー実際にJICAの取り組みに参画し2019年までは、トルコのイスタンブールにも防災教育を届けていた上田さん。防災先進国である日本ができること、そして防災教育を浸透させるために必要なこととはなんでしょうか?

写真提供:静岡大学教育学部藤井基貴研究室

教材は現地に送ったけれど・・・

上田
研究室の取り組みでこれまでにトルコだけでなく、インドネシアやエクアドルなど、様々な国に防災教材を提供させていただき、日本の防災教育が広まりつつあります。しかし、コンテンツだけだとさらなる地域への広がりや長期的な活動にすることの難しさを感じています。

紙芝居などの防災教材は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックのなかでも海外に届けることが可能で、つながりをもち続けることができた一方で、それを読む人や伝えていく人材もセットで届けていかないと地元の人に広まっていかない。さらに範囲を広げて普及していく難しさを感じています。

必要なのは”現地”の教育パートナー

日本でも海外でも、防災教育は教材をお届けするだけだと一過性になってしまうので、「いいね!」と現地の人が受け入れてくれた時に、どうやって地元に落として、長期的に地元の学校で使われるようにするかを重要視しています。

そして、そのためには対象となる地域に詳しくて、地域の人と長期的に関われる現地の担い手が本当に必要だなと思っています。当団体が取り組んでいる「BOSAIユースアンバサダープログラム」もローカルに活動する若い人材の育成の一助になっていると思っています。

今後、日本から海外に発信していくためには、そういった人を巻き込んで人材育成できるような仕掛け作りをしていく必要がありますね。

ーーー上田さん、ありがとうございました!

日本と同じく地震大国のトルコ。
数多くある課題の中で、今回は”防災教育”に絞ってお届けしました。この記事をきっかけに、まずはお住まいの地域や自治体でできるアクションをしてもらえると嬉しいです!

後編はトルコの災害の歴史から見た”建築”や”耐震対策”というテーマでお届けします。

ぜひ次回もお楽しみに!

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