見出し画像

試される家族の絆(司法書士目線)

近頃、司法書士として相続のご相談をお受けしていると、「相続放棄をしたい」とおっしゃる方が増えてきた様に思います。

亡くなった方(被相続人)が多くの借金などを残していた時に、そのマイナス財産を相続したくない、という理由で、相続放棄をするのが、その典型です。

家庭裁判所で適法に相続放棄の手続きをすれば、法律上、相続人ではなくなりますから、亡くなった方の財産は、プラスもマイナスも相続しないから、です。

ところが、最近の傾向は、故人の借金が理由ではなくて、疎遠になった家族や親族が亡くなった時、その相続人となった方が、関わる事を避けたくて、相続放棄をするケースが増えています。

少し具体的な例を挙げてみます。

親子ではあるけれど、様々な理由で疎遠になって、親が亡くなったことを近くの親族や行政機関から連絡を受けたりして初めて知った時。
「親のものを継ぐつもりがないから放棄したい」だとか。又は

兄が亡くなったので、よく調べてみると、兄には子供がいない。両親は既に亡くなっているから、弟である自分がたった一人の相続人になることが分かった。兄弟だけれど、交流もなく、兄の友人関係も全く分からない。「何もわからないものを相続するのは不安だから放棄したい」だとか。あるいは

亡くなった長男には子(孫)がいたが、長男が離婚し元妻が孫を引き取ったため、それ以降は孫との交流が途絶えた。孫が亡くなったと連絡を受けたが、孫は独身で子供がおらず、当時引き取った元妻も亡くなっていたから、祖父母である自分たちが、孫の相続人となった。「何もしてやれなかったのに相続する事にきが進まず、放棄したい」など。

亡くなった方の生前の生活状況がわからないと、どのような遺産があるのか、借金があるのか、などが分かりづらく、相続することを躊躇したり、相続することのメリット・デメリットを考えると、結果的に相続放棄を選択したりする方が増えているようです。

私たちを取り巻く社会環境は日々変化していますし、コロナ禍で更に会う機会も削がれ、家族・親族とは言っても、交流もなく、疎遠になっていくことは仕方がない場合もありますが・・・こんな仕事をしていると、相談者の方々の身の上話を聞きながら、切ない気持ちになる事がよくあります。

ふと自分自身のことを考えると、日常の色々に負けてここ数年、兄弟とも会えずにいます。コロナがおさまったら、実家の居間で、一杯やりながら、昔話がしたいな、と思う今日この頃です。

司法書士 M・H


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?