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高齢期リハビリのココロエ38 結局元気になる高齢者

 高齢者のリハビリと聞いてどんなイメージをされますか?『機能訓練』『歩行練習』は必須ですよね。現在の介護保険分野でのリハビリでも結構な割合でそのようなメニューをされている方は多いです。一方で『生活リハビリ』という言葉がありますが、『生活の中で元気になっていきましょう』という概念もあります。「料理は頭のリハビリになるね」「買い物に行くことはいいリハビリだわ。」など、普段何気なく活動していることが心身を健康に幸福にするといったことがそれにあたります。
 さて私共の老健施設(介護保険下のリハビリ施設)でも普段の活動をリハビリとして取り入れています。その一環で『家事』や『仕事』を取り入れておりまして。もちろん、その活動を『したいかどうか』の希望は聞きますが、『この方できそうだな』『日課になりそうだな』『これをすると元気になりそうだな』といった方には、なにはともあれ、まずは活動についてもらいます。そんな導入時に利用者からイヤイヤの声を聴くことがあります。「なんでわたしが掃除をせなあかんの?」「洗い物なんて誰もしてないのに」です。「〇〇さん、これもねリハビリで、元気になる秘訣なんですよ。ボーっと何もしないでいるよりはちょっと仕事してる方がいいんですよ。」と説明すると渋々、作業をされます。そして作業終了後は「ありがとうございます!」とできたことに一緒に喜びます。利用者さんも気分は悪くはない様子です。
 認知症の方も含め、そんなことを毎日毎日行います。この毎日ということが大きなポイントです。すると次第に「洗い物、これだけでいいんか?」「ほかにしておくことないですか?」等、前向きな言葉やもっと行動を求めるお声を聴くことができます。「え?いいんですか、そしたらこっちの拭き掃除もお願いします。」といった感じで、どんどん活動量が上がることがあります。そうすると勝手にみなさん元気になっていきます。「少しでも役に立てるならやろうかな。」なんて声が聞かれたら大成功です。最初はイヤイヤでも『人の役に立てている』と感じると人間、『もっと』という気持ちが芽生えてきます。
 また、施設の場合では周囲が動いていて自分だけ動いていないと『申し訳ない』気になるようです。たとえば、周りが掃除を始めているのに自分だけテレビを見ている、すると『わたしも掃除するところないか?』となるわけです。施設は集団という大きな力があるんですね。ただし、注意があります。集団のプレッシャーが大きすぎてストレスになることだけは避けなければなりません。要介護の高齢者ゆえ、リスク管理も必要ですし個々でできることの限界があります。そのあたりの見極めをすることが作業療法士だったり、介護職であったりします。
 最初は『施設でなんでこんなことさせられるんだ?』からはじまりますが習慣になると行動しないと落ち着かなくなります。『活動習慣』は自動的に人を元気・幸福にする力があります。要介護の方もたくさんできることはあります。ぜひ。

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