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ビジネスを停滞させ破綻させるポジショントークの回避と突破

海外ビジネスを成功させるポイントの一つに、いかにポジショントークを打破して具体的なアクションに移せるかがあると思います。私が海外の現場で実感し、観察、行動したことを書きます。

ポジショントークとは、「自分の立場、立ち位置に由来して発言を行うことである。 転じて、自分の立場を利用して自分に有利な状況になるように行う発言のことも指すようになった」(Wikipediaより引用)。つまり相手の事情や状況を考慮せず、自分の都合の良い発言に終始する意味を指します。
例えば、製販会議で販売側と製造側が各々自己正当化(=ポジショントーク)を行い議論が平行線のまま先に進めないような状況はよくあると思います。私が強い危機感を感じるのは、当事者が単なるポジショントークをドヤ顔で展開し、誰も収拾せず本来議論されるべき内容がおざなりにされ、折角の議論の場が台無しになる状況です。このような状況が続くと、無力感が支配し始め最終的にはビジネスに多大な悪影響を及ぼすものと思っています。

今回は主に、ポジショントークが表出しやすいミーティングにフォーカスした話になりますが、そもそもミーティングで結果が出せないのは、「準備」「論点設定」「ファシリテーション」に何らか問題があったからです。しかし、今日のテーマのポジショントークの突破についてはテクニカルな話よりも、心構えや思いやりに関わる問題、課題だと感じています。

厄介なのは相手が悪気なくポジショントークを行い、上述のように他の参加者が軌道修正できない場合です。その場合その発言はほぼ100%、その場でいま議論すべきこと、結論を出すべきことに貢献していません。非常に発言量が多いですが、その殆どが単なる自己正当化・自己防衛のためです。

このポジショントークが発生する原因は、いろいろな切り口があり分析すると面白いのですが、ざっくり次の3点がポイントだと思っています。

①雇用制度
②教育環境
③マインドセット

①雇用制度
国によって制度とその度合いは異なりますが、明日クビになる可能性がある制度や契約下にある人は、ジョブ・セキュリティのために上位者また他者から仕事を奪われまいとする防衛本能が作用しポジショントークになりがちです。ポジション・トークの最たる例としては、ミーティングの場において、担当者の上位者も同席している場合はそれが顕著であり、担当者は他者を攻撃し、他人の粗を探す傾向があります。ここで担当者に不用意に反撃をすると、相手がヒートアップして、議論は望むべき方向に進まなくなります。一方で上位者が、担当者、参加者を積極的に褒めるような態度を示すと、警戒心・防衛本能といった議論の妨げとなる要素が消え、ポジティブな進行が期待できます。相手の雇用契約に踏み込むことは難しいですが、その相手の属する国や企業の制度を掴んでおくことは重要と思います。

②教育環境
これは相手の生まれた年代、例えばベビーブームか否か等にも依りますが、子どもの頃から激しい競争環境に置かれているか、も注目すべき点です。目立たないと欲しいものが手に入らない、というそもそもの生存本能に帰結する危機感というのは、人格形成にも大きく影響を与え、それがひいてはその人の言動によって表出します。人口が多く、激しい受験戦争などに晒されている国の方は、特に自己主張が強く、相手の感情には無頓着な傾向があるように実感しています。これらは日本人としてのアイデンティティを持つ私たちには理解しがたい深層心理なので絶対に答えが判明するものではないですが、一方で、彼らが我々と異なる環境下また文化圏で生きていることは事実であり、そこに対しては一定の理解とリスペクトを示してコミュニケーションを取ることで、不必要な議論やコンフリクトは避けられるものと信じています。

③マインドセット
これは上述の②にも関係しますが、結局はその相手が生きてきた環境や価値観、更にその人が持っている知識量に行き着いてしまうのですが、そのマインドセット形成に影響を与えた、または与えるであろう要因については推測できます。よくありがちなのが、尤もらしいことを言っているが内容が無い発言。その背景は、恐らく単純に話す・議論することが好きという点と、その議論の論点に対する知識・知恵が無い点、そして上述の競争心や本能的なものが作用している点が複合的に関係していると思います。広大な国土を持つ国や、多民族・多宗教国家の場合、その国自体が世界そのものの様相のため、他国に対する興味、知識、見聞の経験が少ない傾向の方がいます。それを馬鹿にするのではなく、単に経験値の違いと理解して、同じ目線で話すことを心がけ自分・自国本位のポジショントークを議論の中でうまく是正に誘導していくことが重要です。我々の想像を絶する厳しい戦いの中でサバイブしているのでしょうから、尊敬に値すると思っています。

しかし、悪意を持って、その議論を潰すべくポジショントークが展開される場合もありますので、その場合は「準備」「論点設定」「ファシリテーション」のテクニカルな部分でしっかり武装し、誠意と信念を持ってぶつかるべきです。

また注意しなければいけないのはメールです。他人がCCで含まれるメールで、相手を攻撃するような文面が含まれると、議論の本題から全く外れて、まるでヤマアラシのような刺々しい内容で且つ自己正当でぎっしり埋まったメールが返ってきて、関係性が悪化する上、相手はあなたと会うたびに「私は正しい」とポジショントークしかしなくなるでしょう。基本動作ですが、相手に悪意があったとしてもマンツーマンでのコミュニケーションが絶対です。

最後に大事なのは、自分自身です。きっと無意識的にポジショントークを行っていると思います。自らを客観視し、論点と具体的なアクションへ繋げることを意識し続ければ、相手の国籍や人種問わず、高い信頼感の下、望むべき成果が得られると信じています。ポジショントークは正直心地よいものではないので、参加者は心の底では誰かが議論を引っ張ってくるのを待っています。ポジショントークという言葉は和製英語なので、日本人は恐らく相手を慮らない発言に敏感なのだと思います。こうしたセンスはビジネスの現場で活かしていきたいですね。

追伸
ポジショントークが日常的に一番見られるのは金融取引に関わるネット情報です。少し上記と意味が異なりますが、金融におけるポジショントークとは「株式・為替・金利先物市場において、買い持ちや売り持ちのポジションを保有している著名な市場関係者が、自分のポジションに有利な方向に相場が動くように、市場心理を揺さぶる発言をマスメディア・媒体などを通して行うことを指す和製英語。有価証券の価格変動を目的として行われる「風説の流布」は虚偽の情報を流すことを指しているが、ポジショントークは「虚偽」ではなくあくまで「市場予測」であるため、これをもって風説の流布として摘発された事例はない。ただし明白に虚偽とは言えなくとも、合理的な根拠のない情報であれば罰せられるおそれがある。」(Wikipediaから引用)とあります。
これで再三ヤラれた人は多いのではないでしょうか? これと似たようなことが実ビジネスの現場でも起こるのですから、本当に恐ろしいです。やるかやられるかの世界の様相です。しっかり知識と信念を持ち、賢明に避けるべきであります。

いつも読んでいただいて大変ありがとうございます。