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身体はつながっている

 アナトミートレインやキネティックチェーン、joint by joint など身体の繋がりについての重要性を多くの人が理解していると思う。今回はその『身体のつながり』についてのお話しだ。今回参考にするのは”足の筋群のアクティベーションと股関節外転筋群の関わり”についての研究だ。これは股関節の筋力と片脚立ち時の足の機能の関係性について記載している。


#アクティベーションとは

 よく目にすることもあるかも知れないが、まずこれを理解しなければならない。アクティベーションとは、”なんらかの理由で使われなくなった筋肉をしっかり使えるようにするもの”だ。トレーナーには馴染み深いアクティベーションドリルとはつまり”筋肉を使えるようにする為にする軽い負荷でのトレーニング”と言うことになる。


#足と股関節は互いにどのような影響をもたらすのか

 研究では45名の女性を対象にステップダウン&リターンテスト(下図参照)を行い、筋電図などを用いて股関節外転筋群(要はお尻の筋肉)の筋力が強いグループと弱いグループに選別した。

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 すると、弱いグループの人たちには片脚立ちになった際にこのような特徴が現れた。

 ・身体の側方へのシフト増大(長腓骨筋が弱いとさらに顕著)

 ・足底の圧力中心も側方へシフト増大

 ・足部の内反モーメント増大(回外)

 ・長腓骨筋の活性


 上記の現象をまとめて説明するとこうなる。

股関節外転筋群の弱化により片脚立ちの際、姿勢が不安定になり身体が側方にシフトすると足部が内反する。すると内反を制御(減速)する為に長腓骨筋が活性される。

 と、まぁこの様な説明になる。要はケツがザコだと足がめっちゃグラつくのだ。


#機能のために重要なのは何故か

 では先の現象が身体機能にどう重要なのだろうか?

 アナトミートレインやキネティックチェーンなどでもはや常識となっているが、日常動作や運動において筋肉は単独で動くことはまず無い。ただ我々が受けた教育で私達は物事を孤立して考えがちだ。身体の一部が他に与える影響をもっと認識しなくてはいけない。

 多くの人達は股関節外転筋の重力に逆らってのリハビリやトレーニングを教えられた。例えばヒップアブダクションやクラムシェルが代表的な例だろう。

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 そしてそのリハビリを指導された患者はこう思うだろう。「先生、私は普段こんな動きはしないよ。」と。そう、この動作は果たして多くの患者にとって本当に適切な運動と言えるのか?単独で外転筋を使える事が正しい目標なのか?私達は物事を孤立して考えがちだ。もう一度深く考察した方がいい。


#見逃された2つの重要な構成要素

 この股関節外転筋群のリハビリにおいて見逃されている事は何か分かるだろうか?

 それは”荷重されていないこと” だ。股関節の外転なんて日常ではほとんど使わない。横向きではなく足を地面に着いた状態でいかに外転筋群にスイッチを入れ、足・膝・股関節をいかに統合するかが重要な事だ。

 そしてもう1つ。そのスイッチには”固有感覚受容器”(関節、筋、腱の動きの感覚)がキーとなる。例えば”筋紡錘”や”ゴルジ腱器官”は聞いた事があるだろうか。膝蓋腱反射(脚気)も固有感覚受容器の働きである。

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 この受容器が活動する共通の条件は何だろう?これは筋肉や腱が伸ばされて「これ以上伸びたらアカン!」と思って縮める反射である。と言う事は筋を活性化(収縮)させたければ伸ばさなければいけないのだ。

 あと、足底にはメカノレセプターと呼ばれる身体機能に重要な固有感覚受容器が存在する。主に位置覚など身体の姿勢に関するものは発達している。


 つまりこの研究では”荷重し足を接地した状態で筋肉を伸張する事が股関節外転筋群の活性化に最も有効だ”と言っている。


#方法は

 様々なエクササイズが思いつくが、例えば右股関節を活性化したいとしよう。左股関節を右側方にステップすると軸足の右股関節は相対的に内転される(ちょっとややこしいかも)。

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 また、チューブを使用する場合、立ったまま右脚を軸に左脚を外転すれば右股関節は活性される。

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 他にも上半身を側屈など様々ある。それぞれオリジナルに考えてクライアントに提案してあげるのもいいだろう。


#まとめ

 ・股関節は足に影響を与え、足は股関節に影響を与える

 ・股関節外転筋群は単独ではなく足が接地したより日常動作に近い動作でリハビリをした方が良い

 ・固有感覚受容器を活性化するリハビリを提案するのが良い

 何度も言うが私達は物事を孤立して考えがちだ。身体がつながっている事はあなたも間違いなく理解しているはずだ。臨床でクライアントの症状をもっと広く捉え、その人が必要とする治療を提供する。これを繰り返す事でもっと大きな捉え方ができる様になりより多くのクライアントの助けになるだろう。