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浪花節シェイクスピア「富美男と夕莉子」感想

自分たちの『ロミオ&ジュリエット』は
こういうスタイルだ!

という
貫く強さと思い切りの良さが
とても素敵だった。

こてっこて昭和の大阪スタイルのロミジュリ。

キャクターも表現方法も
イメージ通りの大阪といった感じで。
ユーモアたっぷり。

戸惑いながら大阪の人と仲良くなる感じ

最初は雑多な世界観にとても戸惑う。
芝居のノリの良さ、気風の良さが
まだ温まっていないこちらにとっては
少し後ずさりしそうになる

これって東京生まれの私が
関西出身の人に戸惑う感じととても似ている(笑)

でも見ていくうちに
押しの強さやテンポに
もう任せるよ、ついていくねっていう
不思議な感覚になっていく。

ホントね、現実世界で関西人とだんだん仲良くなっていくような感覚でw

おちゃらけた表現の裏に隠された
照れ?優しさ?も見つけられるようになり
かわいらしく思えてくる。

出せば出すほど奥行きが増すキャラクター

私が普段好んでみる芝居は
"見せる" "表現する"というようなものとは真逆で
俳優が技術を"使っている"と感じると
途端に冷めちゃったりするんだけど…

この芝居は表現する事すら性質、というか…
はっきりと表現し続けることで
奥にある表現しないものが浮かび上がってくる感じだった。

だから、明るく愉快なのに
何かひっかかるものがある。

特に主演の浜中文一さんが素敵で
出せば出すほど、奥行きが増すという
見たことのない現象が起きていた。
声の豊かさや、身のこなし、テンポ、
ユーモアのセンス、
もう見事すぎて口ぽかーん
ずっと勉強になります、って感じだった。

今の時代に、この作品から気づけること

ロミオとジュリエットってさ
もう私は何十回も見ていて、
ほとんどの人があらすじは知っているような作品よね。

今の感覚で見るとズレがあるというか
悲劇のラブストーリー、ロマンチック、
みたいな感覚はとっくの昔になくなって
『なんでそうした!?』
『なんだその考え方』
『今じゃありえないよね』
ってつっこめるほど
この話に対して冷静になってる。
時代も変わって考え方も生き方も
もう合わない。

その状況を捉えた上で
その違和感を指摘しつつ
別の見方を提示する、
そんなような作品だったと思う。

だから終わったあと、
この話の捉え方、
この話から学ぶ教訓のようなものが
これまでのロミジュリとは全く違った。


同じ作品でも人の捉え方って違うし
感じること考えることも違うのは当然。

私は、よく知られた話を何度も見る楽しさって
捉え方の多様性…時代によって変わる物、
変わらない物、
今の自分だから感じられること、
その演出家の、俳優ならではの価値観、
そういう部分にあると思う。

この作品は"自分たちはこう描きます"が強く、

好き嫌い、知ってる知らない、
前のめりか冷めた目で見てるかも関係なく
有無言わせずぐいぐい引っ張って
真っ直ぐ彼らの世界を投げまくってくる
気を抜くスキを与えない、

だからとても満足だった。


公演情報

浪花節シェイクスピア「富美男と夕莉子」
日程・会場
東京公演
2022年5月4日(水・祝)~17 日(火)
東京・紀伊國屋ホール

大阪公演
2022年5月29日(日)~30 日(月)
大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
原案
ウィリアム・シェイクスピア
脚本・演出
末満健一
出演
浜中文一、桜井日奈子、松島庄汰、近藤頌利、板倉チヒロ、幸田尚子、緒方晋、高木稟、明星真由美、オクイシュージ他

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