ポスト渋谷系にみる、音ゲー楽曲と邦楽シーンの影響関係 Part.1

2015年の春、「ポスト渋谷系にみる、音ゲー楽曲と邦楽シーンの影響関係」という連続したブログ記事を書きました。あれから4年が経ち、音楽シーンも変化し、Apple Musicの利用によって私はその頃の10倍くらいの音楽を聴くようになりました。当時の記事は文章もおぼつかない部分があったし、構成もちょっとぐちゃぐちゃしていたので、noteで改めてまとめ直そうと思います。

Apple Musicに登録している方は、ぜひこちらのプレイリストを参照してほしいと思います。(登録していない方も、パソコンのブラウザからであれば[プレビュー]から連続再生でダイジェスト試聴が可能です。)

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この文章を書くきっかけは渋谷系に関するいくつかのブログを読んだからである。もちろん、この記事はそれらの記事に対する批判ではないことは断っておこう。

【アニソン】アキバ系×渋谷系=名曲の宝庫! “アキシブ系”厳選オススメ楽曲6
http://ure.pia.co.jp/articles/-/33118

渋谷系と声優とレーベルの話http://aoicat.hatenablog.com/entry/2014/09/02/230029

私は邦楽史や渋谷系に通じているわけでもなく、アニソンをハードに聴きかじるオタでも、ボカロムーヴメントを追い続けるボカロファンでもない。浅く広く音楽を楽しんでいるリスナーである。長年興味関心を抱き、プレイを続けている音ゲーも、超一流とまではいかない。とはいえ、現代の音楽史みたいなものが語られるとき、あまりに「音ゲー楽曲」が過小評価されているのではないか、とモヤモヤしていた。

上記記事は渋谷系とアニソン・声優ソングを中心とした話ではあったが、今回は渋谷系が音ゲー楽曲という分野の中で独自に熟成しており、それがその外と相互に影響しているのではないか、という"過剰な評価”をしてみたくなったので、この文章を書いている。

文章の拙さは評論家でもライターでもないのでご愛嬌。邦楽と音ゲーの広くややこしい地図を少しでも見通しよくしていきたいと思います。そして、建設的なツッコミをどしどしお待ちしています。


>>>>ネオ渋谷系の話

ポスト渋谷系について言及するならば、見逃してはいけない「ネオ渋谷系」。ネオ渋谷系とは、渋谷系に影響を受けた2000年代前半のミュージシャンたちに適用されたカテゴライズ。

ネオ渋谷系の重要アーティストcapsule(中田ヤスタカ)の楽曲を聴けば分かるように、「ピコピコ」サウンドが目立つ「レトロ」+「フューチャー」感あるエレクトロポップ群が、ネオ渋谷系の一つの流れとして存在する。

おそらくピチカート・ファイヴ(小西康陽)のダンスポップの比重が大きくなって進化したということなのだろうけど、中田ヤスタカがcapsleを経てPerfumeをプロデュースしていくことを考えると、"元祖"渋谷系の観点からはたしかに言及しづらいベクトルなのかもしれない。

★ピチカート・ファイヴ「東京は夜の7時」

★capsule「ポータブル空港」


>>ウサギチャンレコーズという支流

ネオ渋谷系の支流を語るのに欠かしてはいけないひとつのレーベルが、もはや伝説の「ウサギチャン・レコーズ」。更新が停止して久しい公式サイトには「USAGI-CHANG RECORDSは高速打ち込みユニットSOCOPO等の活動をしてきたAKIRA SUZUKIが運営するエレクトロ・インディーポップレーベルです。」とある。

http://www.usagi-chang.com/

ウサギチャンレコーズはエイプリルズYMCKの初期リリース元となったほか、コンピレーションではPlus-Tech Squeeze BoxHazel Nuts Chocolateを紹介しており、一部のエレクトロポップファンには名が知れているのでは。と思っていたのだが、改めて見てみると活動歴があまりに短い気もする。単に僕の青春だった、というだけであろうか…(汗

個人的にはハードなノイズサウンドとウィスパーボイスを組み合わせたmacdonald duck eclairなども渋谷系極地として注視したい。

上記webサイトでもぜひ試聴していただきたい。

★エイプリルズ 「キ・ラ・メ・キ・ムーンダイバー」

ハニーボイスなどは渋谷系譲りだが、世界観は未来志向。「フューチャー」を歌う。

★YMCK 「Magical 8bit Tour」

8bitサウンドのポップスでは有名なYMCK。興味深いのは、近年この両者ともがmaimaiやグルーヴコースター等の比較的新しい音ゲーに楽曲を提供している点。もちろん、8bitサウンドがゲーム由来であることからゲームとの相性がいいことは自明だが…笑

★Plus-Tech Squeeze Box 「early RISER」

★Plus-Tech Squeeze Box 「Dough-Nuts Town's Map」

PSBはハヤシベトモノリを中心とした音楽ユニットであり、2ndアルバム「CARTOOM!」は9人のボーカルを迎え4500種以上のサンプリングで構築されている(インタビューによると歌詞もアメコミの切り貼り)という化け物のような内容で、私の永遠の名盤である。ハヤシベトモノリと中田ヤスタカはゲーム『ことばのパズル もじぴったん』にて公式Remixなども手がけており、ネオ渋谷系のシーンでは双璧のイメージも強かった。(なお、『もじぴったん』シリーズのBGM作曲はMONACA神前暁田中秀和が手がけており、ここで00年代のアニソン・萌えソン・電波ソング文脈と繋がっている)近年はCM音楽、アニメ劇中音楽、声優楽曲を手がけるなど、コンポーザーとして活躍している。

なお、ポップンミュージックには「BABY P」(ジャンル名:パニックポップ)を提供しており、筆者がPSBを知ったのはこれがきっかけであった。

※ハヤシベさんについて昨年書かれたブログ記事を見つけました。詳しくはこちら。
ハヤシベトモノリ(Plus Tech Squeeze Box )は天才!「渋谷系第3世代」唯一の天才!
http://maemuki.hatenablog.com/entry/2018/03/28/201919

こうして振り返ると、「渋谷系」の派生だから当然とはいえ、"未来都市トーキョー"をプッシュしまくる曲が多い。2000年代初頭の、浮かれ気分が渋谷系のアップデートを促したのだろうか。著・石岡良治氏の『視覚文化超講義』で触れられている「ノスタルジアの問題」にも関係しているのかもしれない。capsuleは「レトロメモリー」という三丁目の夕日的な曲を残しているし…。

そして渋谷系と音ゲーといえば、家庭用beatmaniaにおいて2001年、小西康陽は実際「beatmania THE SOUND OF TOKYO!」をプロデュースしている。こちらも伝説的ゲームなので、抑えておくべきだろう。

★小西康陽「ビートの達人」

ざっくりとネオ渋谷系という進化系についてツマんで紹介したが、次の記事では「pop’n musicに流れる渋谷系の血」「サウンドディレクターwac」などを紹介し、音ゲー楽曲のいち側面を振り返ってみたいと思う。

今回はここまで!

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