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Libya Updates #14 JULY 2020 Week 2


こんにちは🕊
今週もリビアをめぐる動きをまとめました。

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リビアのこれまで
40年以上続いたカダフィによる独裁体制が2011年に崩壊。新たな政府樹立を巡り、衝突が続いてきた。
現在は首都トリポリを拠点とし、国連の仲介で2016年に樹立した国民合意政府 (GNA)と、東部の都市トブルクを拠点とする政府 (HoR) が分裂している構図だ。
HoRが支持するハフタル将軍率いる勢力が2019年4月、トリポリへの侵攻を開始した。GNA側の民兵組織らが応戦し、武力衝突に発展。GNAにはトルコ、ハフタル勢力にはUAEやロシアなどがつき軍事支援などを行ってきた。
6月はじめにGNA勢力がトリポリを奪還し、ハフタル勢力は同地域より撤退。停戦へ向けた協議が進んでいる。

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1. 戦闘

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リビアのアル・ワティーヤ空軍基地では4日、戦闘機による爆撃が行われた。

同基地はハフタル勢力の戦略的拠点として機能しており、5月18日、トルコの支援でGNAが奪還している。ハフタル勢力は現時点では関与を認めていない。

国連主導のもと6月初旬、GNA政府とハフタル両勢力の軍事部門で停戦に向けた協議が開始している。


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トリポリ南部では7日、市民3名が地雷の爆発で負傷した。ハフタル勢力が仕掛けたものであったという。保健省が発表した。

ハフタル勢力は6月にトリポリから撤退する際、同地域に地雷を残していることが分かっている。

6日には地雷撤去を行っていたボランティア2名が爆発により死亡。国連リビア特別支援ミッション (UNSMIL) のステファニー・ウィリアムズ暫定特使は同日、声明で犠牲者を追悼した。


UNSMILは7日、ハフタル勢力の地雷で5月以降、138名が死傷したと公表。ウィリアムズ暫定特使によると、うち半数以上の81名が地雷撤去作業を行っていた人を含む市民だという。



トリポリ南部のタルフーナでは、集団墓地から次々と遺体が見つかっている。
GNA軍は7日、これまでに女性や子どもを含む208名の遺体が見つかっていると発表。その数はさらに増えるとの見込みを示している。同政府はハフタル勢力が殺害を行ったと見ている。
ICCや国際NGO、ヒューマン・ライツ・ウォッチもリビア当局やハフタル勢力などに対して捜査を続けることを求めている。

タルフーナはハフタル勢力が6月にトリポリより撤退するまで、GNAとハフタル両勢力の間の主戦場であった。

記事ではGNA勢力側も略奪や殺害を行っていることを指摘している。


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グテーレス国連事務総長は8日、安全保障理事会でリビアについて言及し、「リビアは外国の干渉を受ける新たな段階に突入した」と指摘。
軍事衝突が起きていることや、国際社会が国連による武器禁輸を破ってリビアに介入する動きを強めていることを警戒した。

国連主導で進められている軍事部門での停戦交渉については、2月に失敗した政治的プロセスを再開するため「今後も続けていく」と述べた。


2. 国際社会の動き

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トルコは支援するGNAのアル・ワティーヤ空軍基地が4日に攻撃を受け、Middle East Eyeの取材に対して「報復を行う」と非難した。
攻撃で同国の航空防衛システムが影響を受けたという。


トルコ軍はハフタル勢力が仕掛けたと見られる地雷撤去の支援も行っているとのこと。


また、トリポリ軍事学校の学生190名がトルコに渡り勉強を続けることが分かった。GNAと同校が4日発表した。

同校は1月にハフタル勢力の攻撃を受け、学生ら少なくとも30名が死亡、33名が負傷した。攻撃に使われた武器はUAEがハフタル勢力に提供したものであった。


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ロシアが300名の傭兵を新たにリビアへ送ったことが判明した。
うち8名は元IS戦闘員。傭兵はシリアのデルエルゾールから派遣されているといい、ハフタル勢力側について戦う。
シリアの関係者によると、傭兵には1,000〜1,500ドルが毎月支払われ、3ヶ月で契約更新を行う予定だという。

ロシアはこれまでにも数千名規模の傭兵をハフタル勢力側に送っていることがわかっている。


同国とシリアからは今週、貨物飛行機がリビアへ到着したこともわかっている。航空機の移動を追う複数のウェブサイトの情報による。
飛行機の一部はハフタル勢力を支援するためUAEがリビアで運営するカデム基地へ向かい、その後、エジプトを経由してシリアへ戻ったという。モスクワからシリアとエジプトを経由した飛行機もあったとのこと。



他方、ロシアの外務省高官は6日、「リビアのあらゆる勢力と接触している」と言及。国連の役割を強めていくことが大事だとの見方を示した。

同国はハフタル勢力を支持する一方、国連の政治的プロセスの重要性も認める姿勢を見せてきた。

ラブロフ外務大臣は8日、即時停戦に向けGNAを支援するトルコと交渉を進めていると述べている。

ハフタル勢力側は停戦案に合意する準備ができており、トルコがGNA側を説得することを期待しているとも言及した。


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フランスのマクロン大統領は先週行われたメルケル首相との合同記者会見で、ハフタル勢力が軍事侵攻をおこなったことについて非難した。

リビアの現状について、フランスは「国連のもとでの対話でのみ解決される」との姿勢を維持。一方で、ハフタル勢力ともつながりを持っていると考えられている。ハフタル勢力が支配下に置く東部の石油資源のほか、リビア周辺地域の安全保障を懸念していると考えられていた。

とりわけトルコがGNA勢力を支援していることについて、名指しで批判を行ってきた。
今月1日にはリビア周辺の沿岸を監視するNATOの航海作戦をボイコットすることを発表。欧州諸国に対してトルコを非難するよう圧力をかける目的だった。

記事では方針転換の背景にはハフタル勢力を支援するロシアの傭兵が先週、リビアの油田に占領したことがあると指摘している。フランスの石油会社トタールが同じ場所に鉱区を持っており、多額の資金を投じてきたからだ。


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英国: 地方分権を支援へ
英国は7日、GNAとリビア国内の地方分権を促進することで合意した。

リビアでは2012年以降、東部を中心に連邦主義を訴える勢力が台頭。一部が武力で政府に圧力をかけるなどしてきた。


チュニジア: GNA支持を強調

チュニジアは8日、改めてGNA政府を支援する立場を強調している。
同国のアッライ外務大臣は、リビアで政治的な合意を実現するためあらゆる支援を行う意思を表明したという。


3. 石油

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リビア国営石油会社 (LNOC) は7月の石油の輸出量が大きく減少する見込みを発表した。6月の3分の1程度に落ち込むという。ハフタル勢力が石油の輸出を一部制限していることが原因。

同国石油の生産量は2020年に入ってから減少している状態にあった。複数の武装勢力が2013年以降、国内の油田を占領。2014年頃にはISによる攻撃も続いた。

影響は長期に渡ると見られている。
LNOCは7日、2020年のはじめに日量120万バレルあった生産量が、2年後には日量65万バレルになると警鐘を鳴らした。

同社は政府が適切な予算を配分できないことも問題だと指摘する。


4. 新型コロナ

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リビアでは9日(現地時間)時点で、累計1,268名の新型コロナ感染者が確認されいている。前の週から新たに394名の感染が確認された格好だ。
死者は36名で、1週間で11名の増加。



情勢不安の続いてきたリビアでは、パンデミック以前より医療保険制度自体が弱い状態が続いてきた。感染者に対応するための病床や医療器具なども不十分だ。
4月から5月にかけては医療施設への攻撃も多発した。

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Also read:

リビアの4月からの新型コロナの感染拡大状況を整理しました。
6月20日は世界難民の日でした。リビアの難民・移民について、一緒に考えてみませんか。





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