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【北米エンタメニュースまとめ】女性主人公を少年漫画の技法で描くあかね噺、今夏の北米コミコンに日本人ゲスト相次ぎ登場、マイアニメリストによる「2023年に読むべき漫画リスト」

日々の北米エンタメ市場のニュースなどのまとめです。拾い切れていないものもあるのでぜひリクエストお待ちしております。感想も歓迎です。


YOASOBIの「アイドル」、米国データを除外したビルボードの世界ランキングで1位

日本の楽曲としての快挙。「【推しの子】」のOP曲であるYOASOBIの「アイドル」が米国のデータを除外したビルボードの世界ランキングで1位となりました。楽曲そのものの強さに加え、英語版を出したことなどが寄与したのではないでしょうか?


あかね噺 女性主人公を少年バトル漫画の技法で描く

週刊少年ジャンプで連載中の落語漫画「あかね噺」。自然に受け入れていますがこの漫画の主人公はジャンプではまだ珍しく女性です。主人公以外のライバルキャラや先輩にも女性が出てきます。落語界にはまだ女性が少ないという現実を反映しつつも、女性が生き生きと描かれています。しかしそこに使われているのは少年誌のバトル漫画の技法。未熟な主人公がライバルとの出会い、切磋琢磨、師匠の導きで成長し、その道での大成を目指すーーだからこそ連載が続いているのだと思います。こうした描き方は北米の漫画を読むフェミニストからも受け入れられているようです。


今夏の北米コミコン、日本人ゲスト相次ぎ登場

今夏の北米のコミコン開催を控え、相次ぎゲストやイベントが発表されています。新型コロナウイルスの感染を防ぐための渡航制限がなくなったことで今年はどのコミコンも日本からのゲスト招来を活発化させています。アニメスタジオやアニメ監督を読んだり、新作アニメの先行上映などに加え、日本ではなかなか表に出てこない漫画家の方々のトークイベントやサイン会も。

今年はすでにサンディエゴコミコンに「ヴィンランド・サガ」の幸村誠先生や、CXCフェスティバルへの「ボーイズ・ラン・ザ・ライオット」の学慶人先生の参加が決まっています。(CXCフェスティバルはコミコンでは珍しくオハイオ州での開催。会場が大学やライブラリーで訪れるのも楽しそうです)ボーイズ・ラン・ザ・ライオットはLGBTQ+の観点から英語圏では非常に注目を集めている作品で、CXCフェスティバルの開催趣旨とも合致しているなと思いました。

その中でもちょっと異色などがこちらのAnimeExpoのフジテレビの参戦です。テレビ局はアニメコンテンツをたくさん持っていますが、配信そのものは海外企業に任せているということもあってこれまで直接海外のコミコンに参加するというのはなかったと記憶しています。珍しい動きだなと思いました。

Anime Expoでは「日本の伝統的なビアガーデン」もあるそうです。


マイアニメリストによる「2023年に読むべき漫画リスト」

メディアドゥグループで英語で日本の漫画・アニメ情報を発信しているマイアニメリスト。そのマイアニメリストがマイアニメリストのメンバーや書店員の投票で少なくとも公式に海外で翻訳されて出版されているものを対象に、投票形式で選ばれたものです。「葬送のフリーレン」「アオのハコ」などがエントリー。ファンの方の推薦コメントもついているので読んでいて楽しいです。


YenPress、角川つばさ文庫の作品を翻訳出版へ

KADOKAWAグループで北米で漫画やラノベの翻訳事業を手掛けるYenPressが角川つばさ文庫の作品の翻訳出版を始めるというニュースです。いわゆる日本の書籍カテゴリーの中で小中学生向け作品ですが、YenPressnoもつ「JY」という若年層向けレーベルのひとつとして出すそうです。漫画・ラノベが日本文化として発信されていますが、ここにさらに輸出コンテンツが加わることになります。

翻訳者が不足しているのではない、適切な企業が不足しているのだ

定期的にインターネット上などで話題になる「翻訳者への報酬問題」。機械翻訳などの登場で競争が厳しくなる中で、企業側は「適切な翻訳者がいない」といいがちですが、この記事は翻訳者の立場から「むしろきちんとした水準の支払いをする企業が不足しているのだ」と指摘するものです。これはけして漫画の翻訳に限った話ではないと思いますが、こと漫画においては日本語→外国語になるとき、日本語が含む多重な意味が失われがちです。そこをなんとか失われないように翻訳者たちは頭をひねるわけですがどの労働に見合ったコストが支払われていないというもの。もともと漫画やアニメの翻訳はファンによる自発的な翻訳からスタートしており、適切な報酬の水準が設定されていなかったという背景もありそうです。業界を去る翻訳家もいるとのことで、IPを持つ日本の出版社も意識しておく必要がありそうです。


『まんが王国』運営の、ーグリーが北米向けコミック配信サービススタート

今週の新規参入組です。大手出版社が相次ぎ英語圏での翻訳作品の配信に参入する中、「まんが王国」を運営するビーグリーも北米向けコミック配信サービスを始めると発表しました。これは着実に北米圏の読者が広がっていることが背景にあるとみられます。ビーグリーはグループに出版社のぶんか社をかかえているため、こちらの作品の翻訳出版も期待できそうです。ただ北米市場は現地企業含めてすでに競争が厳しい状態。ここからどう顧客を獲得していくのか気になります。

追加
この企画を始めるきっかけになった菊池健さんのマンガ業界関連の日々のニュースをまとめるマガジンです。

気になるのは書店の未来ですかね。先日ある本を買いたくて日本橋の「誠品生活日本橋」に行きました。こちらは台湾の大型書店チェーン、誠品書店の日本の店舗。本の数やセレクションも見事だったのですが、台湾のチェーンということでガイドブックや歴史関連の書籍で台湾のものが本当にすごい数があって充実していました。台湾のことを調べたいとか、台湾に旅行にいくとなったら、きっと事前準備のためにこの書店に来ると思います。とこのように各書店は独自の色を出して「来てもらえる場所」になる必要があるのだなと思います。これまでは「雑誌」「新刊」が来店のきっかけになっていましたが、それらはもはやインターネットで手に入る時代。となると雑誌や新刊がなくても来てもらえる店づくりを目指すことになるし、菊池さんが記事で触れられている蔦屋書店はその方向のひとつなのだと思います。とはいえ、そうした努力は書店以外の業態はすでにやっているのだとは思いますが。個別の書店の努力には限界があると思うので、出版社や取次がうまくフォローしてほしい。

今週はここまで。引き続きよろしくお願いします。

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