人間にとっての最大の武器は脳である。
多くの人にとって物事を「考える」ことはめんどくさいことだ。自分の身近な問題について悩んだり考えたりしていれば、頭がいっぱいになってきて次第にイライラしてきたり、もういいやと投げ出してしまったりする人も多い。
人間は基本的に考えることが苦手な生き物であり、特に答えのない問題について考えることは時間の無駄だともいわれている。そのため、哲学的な問いや形而上学的な問題について考えていれば、周りからは「なんでそんなこと考えてるの?」「もっと楽しいこと考えばいいのに」といったことを言われることが多い。
しかし、答えのない問題について考えることは、考える力を高めるには効果的であり、考える力は答えのある問題を考えていても高めることはできないのだ。
考える力の低下
人間には元々創造的なことを考え、時には社会に大きな革命を起こすようなアイディアが生まれる瞬間というのがある。普段からなにかしらの生産活動をしている人であれば、ふとした瞬間に頭の中にアドレナリンがドバドバ放出され、気分が高揚するアイディアが思いつく瞬間を経験したことがあるだろう。
そうした瞬間は人間に唯一無二のものであり、そうした創造的な瞬間があるからこそ人類はここまで進化し、文明を発展させることができたのだ。しかし、現代人はそうした創造性が低下しているとよく言われており、それは自分の頭で考える力が低下していることを意味している。
現代は非常に豊かになっているが、その豊かさが現代人の「自分の頭で考える力」を弱めていき、人間としての唯一の武器である脳みそさえも弱体化させているのだ。最近はSNSで誰もが自分の意見を堂々と言えるようになっているが、そうした投稿を眺めただけでも現代人がいかに何も考えずに毎日消費行動だけに時間を費やしているのかがわかるだろう。
もちろん中には自分で何かを創造して生み出す生産的な活動をしている人もいるが、世の中の大部分の人たちは目先の快楽を重視し、とにかく娯楽に精に出すことに一生懸命になっているのが現状だ。
自分の頭で考えることをやめてしまうと、人間が持つ考える力は次第に低下していき、気づけば物事を深く考えることができなくなっていく。
常に疑問を持つ大切さ
自分の頭で物事を考えるときには、常に疑問を持つことが大切である。しかし、考える力は疑問を持つことだけがすべてではなく、人によって考える方法は無限に存在し、自分の頭で考える方法にしても無数の選択肢がある。
頭の中で考えるのが得意な人がいれば文字で考えるのが得意な人もいる。数字で考えるのが得意な人がいれば映像で考えるのが得意な人もいる。さらに、音楽を聞いて考える人もいれば人間観察で考える人もいて、風景で考える人もいれば行動で考える人もいる。
人は一人ひとり「考えるための手段」が異なっており、自分にとって得意な方法で考えることが、本当の意味での自分の頭で考えるということである。「考える」という言葉を聞くと、部屋に何時間もこもってウンウン頭をかきながら悩む姿が目に浮かんでくるが、実際には考える方法は人間が持つ知覚の数だけ存在し、その中で自分が強く持っている感性を使って、常に何かしらに疑問を持って考えることが大事なのである。
それはつまり、考える力だけでなく感受性を高めるという話でもある。感受性と考える力を合わせ、自分の周りの物事や出来事に対して疑問を持つこと。それこそ現代人に求められる能力なのではないだろうか。
人間の武器は脳みそ
さきほども述べたように、考える力を高めるためには普段から疑問を持つことが大事である。疑問を持つというのは、わからないことがあったときに「なぜ?」「どうして?」と考えるクセをつけるということだ。
実際、私たちは自分が思っているよりも世の中のことをわかってはいない。「汝自身を知れ」というデルフォイのアポロン神殿の入り口に刻まれた古代ギリシャの格言のとおり、私たちは世の中どころか自分のことさえロクに知りもせずに生きているのだ。
私たちが直面する問題の多くは、わからないことをわかっていると思い込むことによって引き起こされているものがほとんどである。そうした問題に対処するにはいったいどうすればいいのか?それは無論、考えることだ。常に物事に疑問を持ち、自分が納得するまで考え続けることがなによりも重要になる。
そしてはじめにも述べたように、考える力を高めるために、哲学や形而上学のような答えのない問題について考えることが効果的になるのだ。筋肉は使わなければどんどん弱っていくように、考える力も使わなければどんどん低下してしまう。ライオンは自分の武器である爪と牙を駆使して獲物を狩り、自分が食べるものを確保している。
人間にとっての爪と牙は、脳と考える力だ。物事を論理的に考える力を身につけ、普段から疑問を持ちながら生き、思考力と考える力を高めていくことで、人生や日常生活の中で直面する問題を解決することができるのである。
おしまい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?