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きっかけ

2023年8月の終わり

30歳から欠かさず行く人間ドック
わたしは決まって夏の時期と決めている

なぜならわたしの腕はとても採血に向かない腕で、これまで1度で採血に至った人は数える程度。冬場に比べて夏は血管が浮きやすく採血に向くということを教えていただいて以来、夏が私の健康診断シーズンになっていた。それでも5回トライされたときは涙が出たけど。

だから2023年も8月の始めに向かった。

程なくして届いた一通の封筒。
あれ?重い…いやな予感がする。

開封したらやっぱり!要精密検査の大きな文字と「乳腺外科への紹介状とCD-ROM」が目に入ってきた。ドキドキしながらもつい紹介状を開封しそうになる手を止めた。

大丈夫!根拠のない自信でそう言い聞かせたが、なんとなく怖くてそっと引き出しにしまった。
要精密検査…頭の片隅に置きながらも
大好きな夏を満喫していた。

わたしに精密検査を予約するきっかけをくれたのは好きな男性の存在だった。

彼はお仕事や趣味、お知り合いとの交流が多くてとても忙しい。私たちが会うのは決まって夜。その前の年の秋から3時間程度のデートを刻んでいた。

あらゆる面で経験値が高く、想像力や向上心に溢れスマート。醸し出す雰囲気や声、大きな背中に穏やかな笑顔。そして何より一緒に居る時に流れる時間がとても心地良くて好きだった。みんな彼のペースに飲まれてしまうけど、それでも彼ならまいっか!と思わせてしまうような不思議な魅力を持っていた。

どんな所でも人見知りなくどんどん乗り込んで行くことができる私は、男女問わずそれなりの数の人々と接してきたが、初めて出会ったタイプでもあり、初めて言葉を交わした時には既に惹かれていた。彼に出会う人はみんなそう感じるんじゃないかと今も思っているし、とにかくとても素敵な男性。

気が付くと最後に連絡を取り合ってから半年以上経っていた。持ち前の根拠ない自信で「ご縁が切れた訳ではない」と思ってはいたが、私から連絡することもなく季節をひとつ越えていた。きっと彼も夏を満喫していて忙しいんだろうと…。

8月の終わりに不意に彼から連絡があった。
とっても嬉しかった。「ほうらやっぱり!ご縁は切れてなかった」自信が確信に変わった瞬間♡

それから立て続けに何度か会うことが叶った。嬉しくてたまらない時間。毎回3時間があっという間で「1時間が200分ぐらいあればいいのに…」なーんてまるで遊び足りない子どもみたいな気持ちを残して毎回デートを終えていた。

彼は10月が誕生日だった。
何度目かのデート終わりに勇気を振り絞って誕生日をお祝いさせて欲しい事を伝えてみた。そんな申し出をするのは人生初。元々人付き合いが多くて人気者。10月のどこかで…と打診したら何とまだお誕生日当日が空いていた!なんて私はラッキーなんだろう!嬉しすぎた。そして彼はその場で私の名前を予定表に入れてくれた。

その瞬間「彼のお誕生日をわたしなりにちゃんとお祝い出来たら、絶対に精密検査の予約をするぞ」そんな小さな目標ができた。

▪お誕生日のプロデュース
▪精密検査の予約

2つのタスクが同時に動き出したことで、わたしの日常は潤い常にワクワクと想像が渦巻き、楽しさが倍増した。

あの時勇気を振り絞ったわたしお利口さん!と今でも自分を褒めてあげたい。

2023年の夏から秋はこうして駆け抜けていった。


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