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じゃあ聞いてもいい?/青春物語43

その日、永尾さんは当直だった。
私は残業するまでもなかったが、噂が気になっていたので退社時間を過ぎてもパソコン入力していた。
やがて彼は給湯室に向かった。
その後ろ姿を目で追いながら私は立ち上がった。

コーヒーを注いでいた彼は私を見るなり「あっ」と言った。
「今日、当直なんだね」
「おう。桜田さんは残業?」
「うん。仕事溜まっちゃって」
「ご苦労さん。コーヒー飲む?」
彼は笑顔でカップを差し出した。

「うん。ありがとう」
「なんか桜田さんと話すの、久々だね」
「そうだね。永尾さん、最近冷たいもん」
「そんなことないよ。気のせいだよ」
「そうかな?じゃあ聞いてもいい?」
私の心臓がドキドキしているのがわかった。

「なに?」
「やっぱり、いいや」
「なんだよ?」
「ちょっと言いにくいんだけど。本当のこと言ってね」
「だからなんだよ?」
彼は視線を外さずにそう言った。

「田中さんと付き合ってるって本当?」
「えっ?」
永尾さんは驚いて目を見開いた。

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